
今田美桜と
たどる、
記憶の旅
RETRACING MEMORIES WITH MIO IMADA
2025年、フェンディはブランド創設100周年を迎えた。創業家3代目のシルヴィア・フェンディが披露したウィメンズウェアは、長い歴史の中のいくつもの瞬間が交差するエモーショナルなピースが揃う。伝統を守り、未来へ推進するシルヴィア自身の声とともに、その熱を届けるSCROLL
Profile
Mio Imada
いまだ みお●1997年福岡県生まれ。近作にドラマ「トリリオンゲーム」「花咲舞が黙ってない」など。2025年前期のNHK連続テレビ小説「あんぱん」で主演を務める。12月には映画『ラストマン-First Love-』の公開が控えている。

1 1985年に撮影された、フェンディ家の五姉妹。それぞれ自分の名のついたバッグを膝に置いている
2 1967年の広告。右の少女がシルヴィア。この写真は100周年を記念した2025-’26年秋冬コレクションのショーの招待状でも使用された
3 世界の伝統工芸を讃える「ハンド・イン・ハンド」プロジェクトの一環で作られた「バゲット」。制作は栃木県・にしかた染織工房の西形彩
4 フェンディのアイコンバッグ「ピーカブー」もシルヴィアによって生み出された
5 2024年のフレグランスコレクション。中段左がシルヴィアをイメージした「ペルケ ノ」
6 2024年春夏 メンズコレクションのフィナーレで、自社工房の職人たちとともにランウェイに登場したシルヴィア(中央)
7 シルヴィア(左)と、その娘のデルフィナ・デレトレズ・フェンディ(右)
8 2025-’26年秋冬のショーの開幕を告げたのは、シルヴィアの孫の双子たち!
「ペルケ・ノ(なぜやらないの)?」 の精神で
シルヴィアはカールに請われてデザイン業務に携わるようになる。バッグなどのアクセサリー部門のデザイン責任者に就任するとたちまち才能を発揮する。1997年には、伝説的存在のバッグ「バゲット」(3)を、2008年には「ピーカブー」(4)を生み出した。実は、シルヴィアの母であるアンナも、かつてはレザーグッズを担当していた。シルヴィアの鋭いセンスには、母アンナから受け継いだ面もあったのかもしれない。
仕事に関してはとことんストイックなことで知られるシルヴィア。よく口にする言葉は「ペルケ・ノ(Perché no:なぜやらないの)?」。自社工房の職人に新しい提案をするときも、「ノーと言わず、まずはやってみましょう!」というのが常だ。この姿勢は、ハウスの創業者アデーレの姿をどこか彷彿させる。仕事に対するシルヴィアの厳しい姿勢は、とにかくパワフルで働き者だったことからリスにたとえられた、伝説の祖母譲りなのかもしれない。ちなみにこの口ぐせは、2024年に発売されたフレグランスコレクションでも、シルヴィアをイメージした香りの名前として採用されている(5)。
「フェンディ・ウーマンを定義するのは簡単ではありません。それは(フェンディの発祥の地である)ローマという都市のように、神聖と世俗、秩序と混沌といった対照的な要素を持ち、また私たちの二つのFのロゴモチーフのように、互いを補完し合う二面性を持っています」
ブランドの提示する女性像について、そう語るシルヴィア。この二面性は、伝統と革新を大切にする彼女自身の姿勢にも表れている。
「フェンディの職人技は世代を超えて受け継がれ、私の祖母、母、そしておばたちによって常に追究されてきました(6)。過去から現在への連続性というこの考えに、私は安らぎを覚えます。私たちがどこから来たのかを理解し、どこへ向かおうとしているのかを知ることはとても重要です。それによって私たちの未来が決まるのですから」
今年2月に行われた2025-’26 年秋冬コレクションのランウェイショーでは、オープニングに男の子の双子が現れ、二人が大きな扉を開けることでショーが開幕。この二人は、シルヴィアの娘でありブランドのジュエリー部門アーティスティック ディレクターであるデルフィナ・フェンディ(7)の子どもたち(8)。シルヴィアにとっては孫に当たる、フェンディ家の若き5代目だ。彼らが着たのは、かつて7歳のシルヴィアが広告写真の中で着た服をオマージュしたファージャケット。
「このコレクションは私にとって非常に重要な意味を持っています。それは過去を振り返り、そして未来へと駆け抜けていくものです。私の祖父母が営んでいた歴史ある店舗とアトリエから、未来への展望として孫たちがショーの扉を開くまでの、フェンディの5世代にわたる物語なのです」
レガシーを大切にする一方で、シルヴィアは変化することの重要性を強調する。
「私たちはフェンディとは何かを知っています。私たちのヘリテージは強く、明確なものです。しかし、私たちは絶えず進化し、変化に対してオープンであり続けています。フェンディのモットーは『何も不可能なことはない(Nothing is impossible)』。このスピリットで私たちがどこまで行けるか、それを見てみましょう!」