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サラ・バートンの静かなる挑戦

ジバンシィ、新章が始まる

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サラ・バートンの静かなる挑戦

ジバンシィ、新章が始まる

2024年9月より、アーティスティック・ディレクターに就任したサラ・バートン。デビューコレクションでは、メゾンの創設者、ユベール・ド・ジバンシィの哲学に回帰しつつ、アーカイブスを現代的に再構築した。気品と自信に満ちた新生ジバンシィが、いま静かに始動する

ジャケット¥1,210,000(参考価格)・スカート¥272,800(参考価格)・ピアス¥125,400/ジバンシィ ジャパン(ジバンシィ by サラ・バートン)

「後ろからどう見えるかが、前からどう見えるかと同じくらい重要なのです」。そう語るサラ・バートン。前後を逆にデザインした、絞ったウエストラインが印象的なジャケットは、創業当時のアーカイブスに残る"アワーグラス(砂時計)"のフォルムを構築的に表現した。

ジャケット¥1,210,000(参考価格)・スカート¥272,800(参考価格)・ピアス¥125,400/ジバンシィ ジャパン(ジバンシィ by サラ・バートン)

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ドレス¥660,000/ジバンシィ ジャパン(ジバンシィ by サラ・バートン)

モードを変革した
セパレーツの再解釈

1952年、ムッシュが発表した"セパレーツ"スタイルは、ドレスやセットアップが主体であった当時のオートクチュール界に新風を巻き起こした。アーカイブスに残る白いコットンピケのブラウスを、サラは、透け感のあるオーガンジーシャツドレスとしてエアリーに再解釈。首もとのノットから流れるドレープが印象的だ。

ドレス¥660,000/ジバンシィ ジャパン(ジバンシィ by サラ・バートン)

オールインワン¥924,000・ローファー¥168,300・バングル各¥143,000/ジバンシィ ジャパン(ジバンシィ by サラ・バートン)

バレットブラと
ビスチェの進化形

クチュールメゾンとしてコルセットの精緻な仕立てに定評のあるジバンシィ。構築的な"ビスチェ"は、メゾンを象徴するアイテムの一つだ。50年代に流行した円錐型のバレットブラのフォルムを生かしたビスチェを、光沢と張りのあるシャークスキン素材を用い、オールインワンでメンズライクに仕立てた。

オールインワン¥924,000・ローファー¥168,300・バングル各¥143,000/ジバンシィ ジャパン(ジバンシィ by サラ・バートン)

ジャケット¥847,000・パンツ¥357,500・靴¥160,600・リング¥66,000/ジバンシィ ジャパン(ジバンシィ by サラ・バートン)

テーラリングで描く
彫刻のようなフォルム

ウィメンズのアトリエで仕上げられた、メンズテーラリング構造のジャケットとパンツ。コクーンスリーブ、強調されたショルダー、細く絞ったウエストが、オブジェのようなシルエットとプロポーションを際立たせる。シームを裏表に見せる技法をちりばめるなど、服が仕立てられるプロセスそのものをデザインとして表現している。

ジャケット¥847,000・パンツ¥357,500・靴¥160,600・リング¥66,000/ジバンシィ ジャパン(ジバンシィ by サラ・バートン)

サラ・バートンの静かなる挑戦 ジバンシィ、新章が始まるの画像8

4 化粧コンパクトやパフをいくつも重ねるようにあしらった遊び心あふれるコルセットドレス。ショーでもアイコニックな存在に
5 メゾンを象徴するビスチェドレスを、軽やかなチュールとボリューミーなシルエットで表現。"JOY"を意味するイエローを上品に際立たせて
6 トルソー上で、直接布を操りながらシルエットを構築する立体裁断。体を尊重する、サラのものづくりが垣間見える

 

彼女の卓越したテーラリング技術を核に、“制作過程”そのものをデザインへと昇華させた今季のコレクション。縫い目やほつれを生かしたディテール、シームを外に出したジャケットやパンツが、メゾンのサヴォアフェール(職人技)への敬意を物語る。随所にちりばめられた創業者へのオマージュも、サラらしく現代的に再解釈されている。アワーグラス(砂時計)シルエットのジャケットは、50年代のフェミニンさを力強く再構築し、メゾンのミューズであるオードリー・ヘップバーンゆかりの“ビスチェ”ドレスは、マニッシュなオールインワンへと姿を変え、軽やかなエネルギーをまとった。

「ジバンシィはシルエット」。彼女の定義通り、360度どこから見ても完璧な迷いのない布地が、新生ジバンシィの礎となっている。「現代の女性のすべてを表現したい。強さ、繊細さ、感情的知性、パワフルであること、そしてセクシーであること──そのすべてを」。そんなサラの思いは、服の中に多面的な女性像を映し出す。

伝統的なサヴィル・ロウの技術と反逆の美学を併せ持ったアレキサンダー・マックイーンのもとで腕を磨き、のちに13年間ブランドを牽引したサラ。新たな門出となるデビューコレクションの会場には、原点回帰を象徴する“茶封筒”を模したシートが並んだ。その場所は、マックイーンがジバンシィで指揮を執っていた90年代後半、サラ自身もともに働いたメゾンの本拠地であり、彼女の原点のひとつとも言える。サラはここで、自身の代名詞でもある“テーラリング”と、創業者が提唱した“日常に息づくクチュール”の精神を大胆に融合させながら、新生ジバンシィの輪郭を静かに描き始めている。