A はい! 特に、こういうテンションのあるビビッドな色で全身を包むワントーンコーディネートは、ハイブランドならでは。普段着るには難しいスタイリングも、心から楽しめます。ヴァレンティノは色が美しく、カラー同士の合わせも素晴らしい印象があって、目を楽しませてくれるブランドです。もともと、ピンクはお気に入りの色の一つ。母も好きだったので、幼少期からよく着ていました。一緒にショッピングに行くと、明るい色を差し色に使うといいよと言われて、ピンクのバッグを買ってもらって。今はペールトーンよりも、フューシャ系に惹かれますね。やっぱり明るい色を身につけると元気が出ます。
Q 忙しい日々を送る長澤さん。今はどんなリズムを大事にしていますか?
A 4年半ぶりの主演連続ドラマ「エルピス」は脚本が素晴らしく、どう形にしていくかを全員で試行錯誤しながら撮影を丁寧に進めています。大根仁監督の現場は映画『モテキ』以来。あの作品は俳優として自信を持たせてくれた仕事で、人生においてもとても大きなターニングポイントでした。だから、気づかないうちに監督を深く信頼するようになり、普段は撮影に入ると緊張したり不安になったりして睡眠の質が悪くなるのですが、今回は現場で集中力が上がって、夜はぐっすり眠れる。これはきっと監督のおかげで生まれているよいリズムだと感じています。
Q 普段、どんなシーンでドレスアップを楽しみますか?
A コロナ禍以前に、オフィシャルなパーティやホテルのレストランでの食事など、フォーマルな場所に出かけるときは、シックなワンピースを選んだり、サンダルは避けてパンプスを履いたりしてドレスアップをしていました。また友人とのガールズナイトでは、遊び心を発揮してノースリーブやキャミソールワンピースでカジュアルに。場所に合わせておめかしをするのは楽しい時間。自己満足かもしれないけれど、気持ちを上げてくれます。そういうとき、おしゃれは本当に気分を高めるし、モチベーションを左右するもの。いろいろなスタイルを楽しんだほうがいいと改めて感じます。
Q 長澤さんが自分らしいと感じるのはどんなスタイルですか?
A パンツルックです。昔からスラックスが大好きで、子どもの頃は細身のフォルムを選んでいましたが、今は太めが好み。一番ぐっとくるのはシルエットのきれいな黒いスラックスです。素材感をじっと観察してしまうクセがあって、表面のなめらかさが伝わってくるような上質な素材で仕立てられた、大人っぽくてカッコいい一本に、理由もなく惹き寄せられます。以前現場でスタイリストさんやヘアメイクさんのパンツスタイルを、素敵だなと眺めていた記憶があって、その影響かも。俳優の仕事をしていて多様な世代の方と出会い過ごすなかで、そういう人たちからいつもときめきをもらっていたように思いますね。
Q 主演ドラマ「エルピス」のテーマ、"自分の価値"について長澤さんはどう考えますか?
A 以前、クリエイティブディレクターの箭内道彦さん作の「207万人の天才。」というコピーを見て、自分なりに比喩的に解釈したことがあるんです。一般的に天才は珍しい存在とされますが、本当はそう呼ばれる人も生まれつきではなく、どこかで努力をし、手に入れたものがあるのではないでしょうか。ということは、天才になる努力を続けていけば、誰だって"自分の価値"を身につけていけるのではないかと思うんです。そういう意味で、私も自分の価値を模索して天才を目指したいですね。
Q 今新たに取り入れたい、気になるアイテムはありますか?
A デニムです! 先日デニムジャケットを買いました。それにデニムパンツを合わせてセットアップで着たいですね。KIJIMA TAKAYUKIのハットも手に入れたので、プラスしてちょっとナードな雰囲気に仕上げる予定です。デニムは好きなアイテム。今日の撮影にもリーバイスのヴィンテージデニムに白Tシャツというシンプルなスタイルで来ました。太いベルトをしているのは、このパンツを買ったショップスタッフの方のアドバイスから。おしゃれな人の提案や第三者の意見を参考にいろいろ試してみて、一番自分らしくて褒められる服を選べばいい、というのが私の考えなんです。
Q ドレスアップにまつわるエピソードがあれば教えてください。
A 印象深い思い出といえば、今年司会を務めさせていただいた日本アカデミー賞でのヴァレンティノのドレスです。ベージュのシフォンに赤いフラワーモチーフが配されていて、ウエストの赤い花がアクセントになったデザイン。シフォンだから肌が透けるのですが、そのあんばいがとても上品。抜け感はあるのに透けすぎない美しく幻想的なドレスで、ディテールの細やかさに感動しました。また、別の機会で着た白シャツのロングドレスも、シャツなのにドレスという意外性があって印象に残っています。カンヌ国際映画祭などのイベントを経て学んだのは、ドレスを着るときは、姿勢よく堂々と着るのが一番カッコよく見えるということですね。
Q 自分に似合う色やデザインを知るコツ、ルールはありますか?
A 自分に合う服を着ることはおしゃれを楽しむ大前提の一つ。私の場合は、肌の色がきれいに見える色を選んでいます。不思議なことに、第三者から似合っているといわれる色もあるんです。ワードローブの中でそんなにお気に入りではないのに、着ているとなぜか必ず褒められる服があって。面白いですよね。意外なときに似合う色やデザインに気づくので、友人やおしゃれな人の意見は、一つのバロメーターとして耳を傾けています。