白いシャツ ― 大好きな人が着ていた服 ―

 予備校時代の話。初めての授業の日、朝日が差し込む広い教室で、私は白いシャツを着た彼の歩く姿に釘付けになった。まとっている空気が他の人とは違って見えて、初めて服が美しいって感じた。とってもシンプルなのに、生地感、アームホールの幅、そんな絶妙なディテールが1枚に凝縮されていて、ただの服じゃないなって。それに合わせた真っ黒で少しワイドなスラックス。それもまたよかった。柔らかで歩く度に表情が出る。とにかくかっこよかった。

 そんな服を着た彼は、すっかり私の気になる人になって、目で追い続けてたら、いつしかお昼を二人で食べる仲になり……。音楽はジザメリをよく聴くらしく、そして予想通り服好きだった。彼があの日着ていた服は、ヨウジヤマモトだと知った。

 その頃の恋は実らなかったけれど、男の服の魅力を教えてくれた彼と服だった。 

(sumire9 26歳 兵庫県)

※この企画は毎週日曜日20時に公開していきます。次回は8月7日(日)20時公開予定です。

日本発のモード誌『SPUR』は参加型の新企画「SPUR ナショナル・ファッションストーリー・プロジェクト」を2016年4月より始動しました。このプロジェクトは、皆様のファッションにまつわるエピソードを、SPURが物語としてまとめていくものです。お寄せいただいたエピソードのうち、こちらのコーナーでご紹介させていただいた方には、同時に掲載する描き下ろしイラストをポストカードにしたものと、iTunesギフト1,500円分を差し上げます。性別や年齢は問いません。‪あなたのファッションとのエピソードを応募してみませんか?  詳しくは特設ページにて。


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