グッチのホースビット ローファー ― 家族が着ていた服 ―

 母親が、幼稚園のお迎えに動きやすくて便利、と買ったグッチのホースビット ローファー。いつの間にか忘れ去られて靴箱の奥へ追いやられていたものを、私が大学生になった時に発見。「あげるわ」と言われて、憧れのグッチのシューズをゲット。母親の足のサイズは私より1cm大きいけれど、中敷を入れれば問題なく、合わせやすくて歩きやすいのでヘビロテしていた。私が5年くらい履いたところで、かなりの年月が経ったこともあり、ソールはすり減り、ヒールもボロボロに。古いモデルだけれど、修理してもらえるのかしら、とグッチ 銀座へ足を運んだ。

 いつも素敵なショーウィンドーを眺めるだけだったけれど、意を決して初めて入店。ダンディなドアマンが優雅に扉を開いてくれた。ラグジュアリーなムードにどぎまぎしながら、シューズの修理に来たことを伝え、フロアを教えていただきエレベーターへ。シューズを、「母の代から使っていて、ボロボロで恥ずかしいのですが……」と差し出すと、「親子二代で愛用してくださってありがとうございます!」と嬉しそうに言ってくださって、こちらも嬉しくなった。ソールとヒールの交換を頼み、後日引き取りへ。

 そこにはソールとヒールが真新しくなっただけでなく、レザー部分もピカピカに磨き上げられたローファーがあった。まるで生まれ変わったかのようで、さすが偉大なメゾン!と感動。しかも母親の代から使っているレザーの足へのなじみはそのまま。履いてきた年月が生きている、唯一無二のシューズだと感じた。これからも大切に履いていこう。もし私に子どもが生まれたら、このシューズを履いてもらおう、と未来への期待をも膨らませた。

 M.S. 24歳 千葉県)

※この企画は毎週日曜日20時に公開していきます。次回は9月4日(日)20時公開予定です。

日本発のモード誌『SPUR』は参加型の新企画「SPUR ナショナル・ファッションストーリー・プロジェクト」を2016年4月より始動しました。このプロジェクトは、皆様のファッションにまつわるエピソードを、SPURが物語としてまとめていくものです。お寄せいただいたエピソードのうち、こちらのコーナーでご紹介させていただいた方には、同時に掲載する描き下ろしイラストをポストカードにしたものと、iTunesギフト1,500円分を差し上げます。性別や年齢は問いません。‪あなたのファッションとのエピソードを応募してみませんか?  詳しくは特設ページにて。


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