初めてのハイヒール ― 褒められた服 ―

 身長172cmの私は、小さな頃から背が高かった。昔は今のように背の高い女の子が少なかったから、余計に目立った。特に中学〜高校あたりの多感な時期は、街ですれ違った見ず知らずのおじさんに「でかっ」と言われては落ち込み、学校で自分より背の低い男の子から「でかい」と言われては凹み、父親が知り合いと「こんなに背が高くなっちゃって、お嫁に行けないですよ」と話しているのを聞いては泣きたくなった。気が強かったから、だいたいは突っかかって言い返していたけれど、それで小さくなれるわけでもなく、とにかく目立たないように猫背になって過ごした。こんなに暮らしづらい世の中はごめんだ、大人になったら絶対に海外(平均身長の高いオランダあたり)で暮らすんだ、と思っていた。

 母がヒールの高いサンダルを買ってくれたのは、高校生になってからだった。私服OKの高校だったから服がとにかく必要で、当時出来たてホヤホヤだったZARAへ買い物に行った。その時だったと思う。「こんなのいいんじゃない」と母に勧められたサンダルがずいぶんヒールの高いウェッジソールで、思わず「この人は本気で言ってるのかな」と二度見した。ただでさえ背が高いのに、これ以上高くなるなんて絶対に嫌だと思って首を振ったけれど、「いいから履いてみなよ」と押し付けられてしぶしぶ履いた、初めてのハイヒール。鏡の前に立つと、背筋が伸びるような感覚と、「いいオンナ」になれたような感覚で、自分が生まれ変わったような、見違えるような気がした。「似合うよ」と褒めてくれた母に、「これ買って」とねだった。家に帰って父に見せたら嫌そうな顔をしたけれど、母が「すごくよく似合ったから」と、言いくるめてくれた。

 次の日から、学校にも塾にもしょっちゅう履いて行った。そのサンダルを履いていると姿勢も良くなったし、「でかい」と言われても「でかくて何が悪いの、かっこいいの間違いでしょ」と思える自信が湧いてきた。そのサンダルは3年で履きつぶしてしまったけれど、それ以降は9cmだろうが11cmだろうが、気に入ったデザインのヒールを積極的に買うようになった。自信を持って履いたら、誰も何も言わなくなって、しだいに褒められることが増えた。「かっこいい」「背が高くてうらやましい」は、今の私にとっては最高の褒め言葉だ。

(reeeeem 27歳 福岡県)

※この企画は毎週日曜日20時に公開していきます。次回は10月2日(日)20時公開予定です。

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