花柄のシャツ ― 大好きな人が着ていた服 ―

 母の日。十代後半の私が母に贈ったのは花柄のシャツ。

 仕事をしている母に、仕事でも普段でも着られるような花柄のシャツを毎年一枚ずつ送るのが、いつしか定番のプレゼントになっていた。初夏の草花、野に咲く雑草、野ばら、紫陽花……。花柄好きな私は毎年、「いつか着られなくなったら私にちょうだいね」と言いながら、でもきっと似合うのは母だろうと思ってプレゼントしていた。

 今年の母の日。たくさんの花柄のシャツがタンスにあって、その中の赤い小花柄のシャツを私が着た。母が逝って8年目の母の日。気がつけば私も母になっていた。プレゼントを贈る相手はいなくなった。小花柄のシャツも、まだしっくりこない。

 8歳になる次女が母の日のプレゼントで、私の似顔絵を描いてくれた。花柄のシャツを着て笑っている私の絵。私は母になっている。いつか、母の遺してくれたたくさんの花束が似合うような母親になりたいと、我が子の絵の中で笑う自分を見た。大好きなお母さん、ありがとう。

(山形県 39歳 清志)

※この企画は毎週日曜日20時に公開していきます。次回は6月25日(日)20時公開予定です

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