受験期まっただ中、高校3年生の秋。彼氏と図書館で勉強するときは、よくハートのボタンのブラウスを着ていました。ある夜、息抜きに河川敷を歩いてたらすっごく寒くて薄着すぎって笑われて。コンビニのおでんを一緒に食べて。結局、私は第1志望の大学に受かり彼は落ちました。電話越しに号泣した数日後、仲直りした日も着ていたのはこのブラウス。大学に入学したら遠距離恋愛になり、新しい服も増えブラウスは簞笥の隅へ。彼とは大学2年生のときにお別れ。それからさらに時がたち、部屋を整理していたら久しぶりにこのブラウスが。川沿いの風が薄い布を通って腕を吹き抜ける寒さ。図書館の暖房で手のひらが火照って眠くなる感覚。記憶が蘇りました。でももう二度と着られない。そう思いハートのボタンだけをぱちぱちと切り取って、ガラス瓶にしまいました
中村理奈さん(東京都/学生)