遊牧民の多い地域では、民族と言語と文化が混ざり合ってきたため、現代の国々に当てはめ、どの民族が身につけていたアクセサリーかをはっきりさせることはなかなか難しい。いったいどんな月日を経て、いまこの場所にたどり着いたのだろう。
さまざまな地を旅するアクセサリー
ブレスレット・リング・クロス・ペンダントヘッド/インド・マリ・ニジェール・西サハラ・アフガニスタン・モーリタニア
1 ブレスレット(民族不明)/インド
デリーの骨董店で見つけたブレスレットは、インド最大の州であるラジャスターンのもの。装着の際は、左側中央部分が軸となり、右側がパカッと開く。「ハンドメイドで丁寧な作り。ひと目見ていいなと思いました」
2 フラニのリング/マリ
モスクをかたどった立体的なデザイン。芝田さんの指のサイズからすると相当大きいが、「珍しいデザインでとても気に入っているので、サイズを調整して自分用に」。モロッコの骨董店で購入したため、はるばるサハラ砂漠を渡ってきたことになる
3・4 トゥアレグのクロス/ニジェール
一般的にトゥアレグは、ゴールドを邪悪なものとみなし、シルバーのみを身につける。現在は定住する人も出てきたが、遊牧民である彼らはサハラ砂漠での照りつける太陽と砂埃から身を守るため、ターバンと着丈の長い衣装で全身を覆い、その衣装の色からブルーマンと呼ばれる。一見リングかと思いきやクロス。4は、21に分けられるというサブグループのなかでも、大きなグループである「アガデス」のもので「アガデスクロス」と呼ばれ、トゥアレグクロスの代名詞的存在。3・4とももとは男子が15歳で成人する際に父親から息子へと受け継ぐものだったが、近頃は女性が着用することも多くなった
5 リング(民族不明)/インド
こちらもラジャスターン州のリング。親指を除く4本指にはめるウェディングリング
6 サハラウィーのペンダントヘッド/西サハラ
ボクダッドと呼ばれる魔除けのペンダントヘッドベルベルのフリンジバッグと同じ店で購入
7 リング(民族不明)/インド
1と同様に小さな突起が集まったようなデザインは、ラジャスターンのアクセサリーの特徴。「店のスタッフから『小指と小指につけるマリッジリングなんだよ』と言われたものの、別の人に言わせると『そんなわけないじゃん』と。そういった思わず口をついて出たようなガセネタはたくさんあります(笑)」
8 トゥアレグのリング/ニジェール
ティセックと呼ばれる指輪で、赤い石はメノウ。 かつては好意の印として男女間で交換されていた。紐を通してペンダントにしたり、髪に編み込んだりすることも。日常で身につけるには大きく鋭利なデザインのため指にはめるのは結婚式や祭りなど、特別なときに限られる
9 ブレスレット(民族不明)/インド
デリーで開かれていた巨大な家具のマーケットの一角にあった布やシルバーを売っているゾーンで購入。写真ではわかりにくいが150グラムほどの重さがある。その後、有名ジュエリーショップのアンティークジュエリーコーナーで見かけた似たデザインのブレスレットには10倍以上の値段がついていたとか
10 リング(民族不明)/アフガニスタン
中央の石はカーネリアン
11 ムーアのリング/モーリタニア
粒のようなビーズがはんだづけされたデザイン。これらのアクセサリーのなかで最も古いと思われる