「HAFA」芝田悠未子のバイイングアイテム【インド・ウズベキスタン・モロッコ編】

運命の出会いを果たしたアイテムにはその土地や民族ならではの歴史が宿っている。今はもう失われてしまった技術が光るジャケットや、骨董店の店主も驚くほど貴重なシューズなど芝田さんが集めたアイテムの一部を紹介

復元不可能な刺しゅう技術。途絶えてしまった伝統を着る
ラバリの男性用ジャケット/インド

インド西部の遊牧民ラバリの男性が身につけるジャケット「ケディヤ」。色とりどりの糸で上半分にびっしりと刺しゅうが施されている。写真の1枚はラバリのグループのなかでも最も刺しゅうが細かいといわれるデバリアラバリグループのもので、背面にも同様に刺しゅうが施されている。「現地を歩いていたら刺しゅうの入っていない真っ白なジャケットを着ている男性を見かけて、その姿が素敵だったので、自分用にとディーラーに探してもらったのが このケディヤでした。現地で見たのはすべて真っ白なものだったので、このときに刺しゅう入りのものがあることを知りました」(芝田さん、以下同)
実は25年ほど前に刺しゅう禁止令が出たことで、現在は刺しゅう入りは着用できず、刺しゅう技術も失われてしまった。そのため刺しゅうの入ったものは稀少で、運よく古いものが見つかってもチャイのシミがついていたりと、ここまでコンディションのいいものにはなかなか出会えない。禁止令が出された理由は諸説あるが、あまりに細かな作業に時間を要し、担当する女性が婚期を逃すためという話も

ガラクタの中、目に飛び込んできた一足
男性用シューズ/ウズベキスタン

首都タシケントで開かれる週末のガラクタ市「ヤンギアバットバザール」で見つけたレザーシューズ。猛烈な暑さの中、大きな荷物を抱え2〜3時間歩いたものの、運命的な出会いは訪れず……。「意地でも何かを見つけてやる!」と粘りに粘った末、病院で使われていたであろう試験管、ネジ、タイヤなどとても売り物とは思えない多種多様なアイテムが並ぶ中、「これだけパッと目に飛び込んできた」
その後訪れた骨董店で読んだ本によると19世紀、「ヒヴァ・ハン国」時代の靴であることが判明。「骨董店の店主は『これは博物館クラスだよ』と驚いていました」

ラグ¥300,000/オン ザ ショア

街を歩けば、視線を集める首飾り
ベルベルの女性用ネックレス/モロッコ

天然の素材は高価なため、代わりに樹脂を使ってアクセサリーを作ることも珍しくない中、贅沢に琥珀と珊瑚を使ったネックレス。「田舎町の骨董店に3日間通ってじわじわと値切り手に入れました。これをつけてマラケシュを歩いていると、骨董商に『いいね』とよく声をかけられましたし、帰国後もこの道の方に見せるとかなり価値のあるものだと絶賛されました」
ちなみに「ベルベル(Berber)」という呼び方はヨーロッパ人が名付けたもので、彼らは自分たちのことを「高貴」「自由」などの意味をもつ、「イマジゲン」(Imazighen。単数形はアマジーグAmazigh)と呼ぶ

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SPUR NATIONAL FASHION STORY PROJECT

「あなたとファッションにまつわる物語を教えてください」。この問いかけに寄せられた皆さんの思い出をもとに特別なコンテンツとしてまとめました。記憶の中のどの服にもストーリーがあり、その物語の主人公はあなたです。

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