SPUR7月号の「2017-’18 F/Wコレクションリポート 清く強く、「グッドガール」新時代が始まる」特集はご覧いただけましたでしょうか?トレンドの傾向と合わせて、知りたくなるのが、服作りの裏側。SPURは、ANTEPRIMA(アンテプリマ)クリエイティブ・ディレクターの荻野いづみにコレクション直後のミラノでインタビュー。今年2月にミラノで発表された2017~18年秋冬の新作について語ってくれた。人生とファッションの大先輩である彼女から、パワフルなメッセージも!
荻野いづみ/ANTEPRIMAクリエイティブ・ディレクター東京生まれ。1980年代、香港でイタリアンブランドのアジア展開を手掛ける。1993年、ミラノで自身のブランドANTEPRIMAをスタート。1998年、日本人女性デザイナーとしてミラノコレクションに初参加。
バウハウスからのインスピレーションが、ランウェイに
ANTEPRIMAの2017~‘18年秋冬コレクションの招待状は真っ黒なノート。1ページ目には、ほのかに光沢のある黒い文字で“Standard but far from standard″(スタンダートからは遠いスタンダード)というフレーズが浮かび上がる。「一見普通だけれども、書くことができないノート。しかし何かを内包している。そんなイメージを伝えたかった。」と荻野さん。バウハウスのグラフィックから着想したモチーフだという、ノートに添えられたモノクロのポストカードもミステリアスで、好奇心が湧きおこる。
ミラノ市中心部のセルベッローニ宮が会場となったショーは、1980年代を彷彿させるグラフィック柄のオーバーサイズのセーターとパンツのセットアップや、バウハウスからインスピレーションを得たストライプ柄のビッグシルエットのニットなど、インパクトあるアイテムでスタートした。
女性へのメッセージを、シルエットに込めて
肩を強調したシルエットは、一見、シーズンのトレンドのひとつでもある1980年代のパワーショルダーの再現に見える。しかし肩パッドで不自然に肩を強調した80年代当時とは違って、熟考されたパターンや、ブランドが得意とするニットなどのしなやかな素材で、女性のボディに自然になじむビッグショルダーをつくりだしている。
「私は″ネオ・80′s″と名付けています。80年代は女性が人生を謳歌し始めた時代です。その後「かわいい」をもてはやす時代が訪れ、長く続きました。しかし今、女性が大統領候補になるなど、また女性が活躍する時代が訪れたと感じます。そんなメッセージを込めて、新しい肩のシルエットを提案しました。80年代と異なるのは、張り合うのは〝男性″ではなくて、“自分自身″であることです」。あの肩のデザインひとつにそんなに深いメッセージが込められていたとは、改めて驚きだ。「ファッションとは時代を捉え、一歩先に行くべきだと思います。女性たちの新たなムードを感じて表現することがファッションの使命だと思っています。」
黒いシルクビロードの長袖ロングドレスは上質なカシミアの繊細な触感を感じられるシンプルなシルエット。一見清楚に見えるが、背中が開いたセクシーなデザインにはっとさせられる。「ドレスはバックスタイルにセクシーさを加えて意外性を持たせました。でも″行き過ぎず、ほどよくセクシー″。そのバランスが大切です。元々、服だけが目立って着る人の個性を殺してしまうのは好きではないのですが、主張しないとショーの意味が無いんですよね(笑)。100のリボンを付けて目立つのは簡単です。でも敢えて1つのリボンで主張できるようなものにチャレンジしたい。多面性を持った成熟した素敵な女性が、服を着ることでその内面も引き出すことができるような。そんな服を作り続けていきたいです。」
モスグリーンの地にオフホワイトのポピーの花柄のワンピースも登場した。プリーツが入った軽やかなデザインだが、“カワイイ″花柄とは一線を画す印象だ。「ちょっとスイート。でもワイルドで″怖い″エレメントもあるんです。怖いのよー。(笑)優しく見えるけれど、優しくない。これは『もっとタフであれ!』という、自分に喝を入れる意味もあるんです。」
ファッションは、毎日をしなやかに楽しむためのエール
ショーのスタイリングにもインパクトがあった。シックなトーンの服に合わせたのは、オレンジ、グリーン、ブルー、ホワイトなどのロンググローブ。敢えて左右を色違いにした面白いコーディネートだ。「例えば、いつもの服に、きれいなブルーの手袋をしただけでも気分が上がるものです。ファッションを通じて、一日一日をパワフルに生きるためのお手伝いをしたいと思っています。普通の一日が、ファッションの力でまた違った一日になると信じています。」
デビュー以来、「しなやかだけれども強い」というフィロソフィーを踏襲してきたANTEPRIMA。「嫌なところを隠したり、息をつめて着たりしなくていい服づくりを続けてきました。」という荻野さんのデザインする服は、自分自身を持ち、自然体でしなやかに生きることを応援してくれる服。
最後にシュプールの読者へのメッセージを。「毎日の変化を楽しみ、自分を好きになって力強く生きて!」と喝を入れていただきました。
SPUR7月号 2017-’18 F/Wコレクションリポート
清く強く、「グッドガール」新時代が始まる
SPUR7月号では、次なる秋冬トレンドから、SPURらしい「グッドガール」トレンドをピックアップ。かわいいだけではなく、強さも秘めた女性のためのスタイルとは!?を世界4都市コレクションから分析します。アンテプリマの最新ルックもチェックしつつお愉しみください。最新号の試し読みはこちら。
着たい服はどこにある?
トレンドも買い物のチャンネルも無限にある今。ファッション好きの「着たい服はどこにある?」という疑問に、SPURが全力で答えます。うっとりする可愛さと力強さをあわせ持つスタイル「POWER ROMANCE」。大人の女性にこそ必要な「包容力のある服」。ファッションプロの口コミにより、知られざるヴィンテージ店やオンラインショップを網羅した「欲しい服は、ここにある」。大ボリュームでお届けする「“まんぷく”春靴ジャーナル」。さらにファッショナブルにお届けするのが「中島健人は甘くない」。一方、甘い誘惑を仕掛けるなら「口説けるチョコレート」は必読。はじまりから終わりまで、華やぐ気持ちで満たされるSPUR3月号です!