2018.12.08

世界初の特写&独占インタビュー、ラルフ・ローレンが週末を過ごす家で語ったこと

ブランド創設50周年。その卓越した審美眼で生み出されたファッションで、ラルフ・ローレンはヨーロッパ中心のファッションの流れに一石を投じ、ニューヨークをファッション都市として導いてきた


 ラルフ・ローレンのベッドフォードの家でのインタビューという話を聞いて、正直、心が躍った。著名人のインタビューで自宅を訪ねられることはめったにない機会だからだ。自宅といっても、彼にはマンハッタン、ジャマイカ、コロラド州、モントークにそれぞれ住まいがある。週のほとんどをマンハッタンでの仕事に追われる彼にとって、ここベッドフォードの家は毎週末を過ごすウィークエンド・ハウスと言ったほうがいい。マンハッタンから車で北東に約1時間のベッドフォードは、コネチカット州に近いニューヨーク州内有数の高級住宅地を擁するウエストチェスター郡の小さな町だが、投資家のショージ・ソロス、俳優のリチャード・ギアやマイケル・ダグラス、マーサ・スチュワートなど多くの著名人が広大な敷地に屋敷を構えることで知られている。セレブリティが集まることで有名なニューヨークの夏の避暑地、海辺のハンプトンズと違って、ベッドフォードは深い森の中にあり、彼らを追いかけ回すパパラッチがやってくることのないひっそりとした田舎町。だからこそ、いっときでも世間の注目から逃れて静かに過ごしたいと思う著名人たちがこぞって家を持つともいわれている。

画像: 凜とした美しさが漂うローレン邸。 著名な造園家ロバート・ラドロー・ファウラーが1919年に建造した邸宅を80年代末に購入後、5年がかりで修復改装 ほかの写真をみる

凜とした美しさが漂うローレン邸。著名な造園家ロバート・ラドロー・ファウラーが1919年に建造した邸宅を80年代末に購入後、5年がかりで修復改装

 ローレン邸は住所をもらっても探すのに苦労するほど、周囲の樹木に隠されたところにある。背の高い生け垣に埋もれるように設えられたヨーロッパ調の重厚なアイアンゲート。それが開かれると、私たち取材陣を乗せた車は母屋に続く細長いドライブウェイをひたすら走る。東京ドームが21個ほど入る250エーカー(約100万㎡)のこの敷地の中は見事に手入れが行き届いている。ドライブウェイはなだらかに起伏のついた芝生や屋敷林を縫うようにつながり、林の間からは水鳥が遊ぶ池も見える。入り口のアイアンゲートから数分のドライブで、車はローレン氏の住まいの母屋に着いた。家はノルマンディ・スタイルの石造りで白い玉砂利の円形の車寄せを抱えるように控えめに佇み、壁を覆う青々としたアイビーが印象的だ。

画像: ヴィンテージのサイドテーブルに油絵が飾られたシンプルなエントランスホール ほかの写真をみる

ヴィンテージのサイドテーブルに油絵が飾られたシンプルなエントランスホール

 私たちは玄関から明るいホールウェイを通ってマホガニーのパネルに絵や写真が飾られたフォーマル・ダイニングルームでしばし待機したのち、インタビューが行われるリビングルームに案内された。天井には19世紀の英国製のシャンデリア、床には使い込んだペルシャ絨毯、壁にはヴィンテージのタペストリーや巨大な肖像画が飾られ、部屋の両側には暖炉がある。生成りのカウチやシマウマの革を使った椅子にはタータンチェックやエスニック柄のクッションがアクセントに置かれていて、フォーマルな中に気取らないカジュアルな雰囲気が漂う落ち着いた部屋だ。ローレン氏はネイビーのセーターに着古した感のある白のポロシャツとジーンズを合わせたカジュアルなスタイルで私たちを待っていた。私はちょうど10年前に日本の雑誌の取材で彼にインタビューしたことがある。そのときのローレン氏はとても静かな人という印象だった。今回も静かな物腰の長老然とした雰囲気は変わらないが、10年間に積み重ねられたであろう自信と柔和さ、包み込まれるような温かさを感じた。(ラルフ・ローレンの幼少期の写真をもっと見る)

SOURCE:「My Eyes Are WindowsBy T JAPAN New York Times Style Magazine BY TERUYO MORI, PHOTOGRAPHS BY WESTON WELLS SEPTEMBER 21, 2018

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