Y’s-ismを再び - アトリエ インタビュー

Interview with RISA MATSUSHIMA

RISMAT by Y’s

 

ロマンティシズムに女性ならではの
リアルな感覚をプラスする

 1980年代「黒の衝撃」として世界を揺るがした山本耀司が立ち上げたブランド、ワイズ。設立後40年以上の時を経て、2012年からはチームでものづくりに取り組んでいる。さらにブランドから6つのラインが派生。今年4月には表参道ヒルズにそれらすべてが揃う旗艦店もオープンした。表参道店に現れた箱のようなグラフィックワークは、山本が生み出したワイズの遺伝子の綿々とした連なりのようでもあるが、一つひとつ異なり、抜けていたりパターンがほどけていたりする。それは山本がつくるクリエイションの在り方、その上に成るワイズを表しているという。ワイズのチーフクリエイターを務め、ニットやカットソーを中心としたライン、リスマット バイ ワイズも手がける松嶌里沙(まつしまりさ)に、いま、そしてこれからのワイズについて話を聞いた。

 

――改めてワイズとはどのようなブランドなのでしょうか。
 ブランドの女性像は設立当初からずっと変わりません。独立した女性のための日常着。デザインチームのメインとなっているのは皆、山本耀司と一緒に仕事をしたメンバーです。その経験を基に、ワイズらしいか、そうではないかをいつも考えています。毎シーズン、いままでのものづくりがあって、その上でどのように新しくつくっていくか、ということを考えています。

――松嶌さんが山本さんと一緒に仕事をされて学んだことは何でしょうか。
 具体的なことだと、素材と服の関係性や全体で見たときの重心の位置、パターンの在り方などがあります。たとえば、同じ赤でもどちらがヨウジヤマモトやワイズの赤なのか、といったことや、袖のつき方や襟の形などのパターンに関わることも同様に、です。

――山本さんの感覚や価値観を身にしみ込ませたのですね。違和感を覚えることなどはなかったのでしょうか。
 学生の頃からヨウジヤマモトに憧れていました。ほかにはない静けさと暗さのようなものを感じて惹かれたんです。雑誌のファッションストーリーを見たり、インタビュー記事などもいろいろ読んだりしていましたね。私の感覚はそれでつくられたので。

――現在のワイズには、どのような松嶌さんらしさやデザインチームらしさが加わっているのでしょうか。
 私たちは山本と世代も性別も違います。チームもほぼ女性で構成されているのですが、ロマンティシズムを守りつつ、もう少しリアルな面を広げている、という感じでしょうか。私には結構あまのじゃくなところがあるので、世間で受け入れられているものや、その逆のものでも、それに疑問を持って、ワイズならどう着るか、と試みることもあります。リスマット バイ ワイズのほうはワイズよりももっとリアルに考えています。たとえば、あまり自分らしくないようなテーマやコンセプトを持ってきてつくることもあるのですが、それを、自分が着ることができるくらいシンプルに落とし込んでいくなど、リアルに寄せた服づくりです。

――ワイズの今後についてはどのようにお考えですか。
 毎シーズン、初めてのことへの挑戦の繰り返しです。それはこれからもずっとそうで、何かに気づいたり、疑問に思ったりする姿勢はつねに心がけていきたいです。

――リスマット バイ ワイズのほうはいかがでしょうか。これから商品のラインナップを広げていかれるのでしょうか。
 いまは広げることよりも、いろいろ試みながら、スタイルを確立するのが先かな、と思っています。ラインナップという部分ではあくまでワイズがありますし、その上で、実際に手を動かしながら、リスマット バイ ワイズ自体をしっかりつくっていきたいです。

 

profile
松嶌里沙(まつしまりさ)
Y’sチーフクリエイター。ロンドン芸術大学セントマーチンズ卒業後、2007年ヨウジヤマモトに入社。’09年よりY’sの企画を担当。’12年現職に。2014年春夏よりRISMAT by Y’sを手がけている。

 

ワイズプレスルーム
http://www.yohjiyamamoto.co.jp/ys/
03-5463-1540

SOURCE:SPUR 2018年7月号「Y’s -ismを再び 私はどこにも属さない」
text:Itoi Kuriyama