ひと目見た瞬間、袖を通した瞬間にぐっと高揚感を与えてくれるコートが確かにある。そんな"一生をともにしたくなる"珠玉のアイテムを、目の肥えたファッションのプロたちが全力でリコメンド。世に無数にある中から選び抜かれた、8つのカテゴリーの大賞は果たしてどんな一着なのか……? 2019年のコートの祭典が、ここに開幕!
ダブルフェイス大賞

THE ROWのミディアムシルエットコート
ウエスト部分にダーツを施し、より体にフィットするラインを実現。ヴァージンウールとカシミヤの上質な混合素材は、驚くほど柔らかな肌ざわり。襟元にボリュームのあるインナーを差し込めば、無駄な装飾を極限まで取り払ったノーカラーコートの美しさが最大限に発揮される。取りはずしできる共布のベルトでウエストの調節も可能。
"最高の日常着"を提案してくれるTHE ROWの服は、普段から愛用しています。とりわけこのコートは、一見なんてことないようにも見える、ミニマルを極めたデザインがすごい! ほどよいボリューム感も絶妙です。写真のような透け感のある素材と合わせて、包まれるように羽織りたいですね。
(佐藤里沙さん/スタイリスト)
シルエットが抜群にきれいで、思わず視線を奪われます。そぎ落とされたデザインながら、展示会でもひときわ目立っていました。たとえ中に着るのがジャンプスーツやサロペットなどのカジュアルなウェアでも、これを合わせた途端マチュアにまとまる、まさに大人のためのアイテムです!
(鈴木美智恵さん/スタイリスト)
ウィンターチェック大賞

NINA RICCIのショートコート
メンズブランド「ボッター」を手がけるデザイナーデュオが率いる新生ニナ リッチ。グラデーションのチェックで仕立てられたショートコートからは男性的なムードすら漂う。一方、ショルダーにあしらわれたボディを覆う共布のスカーフがエレガントさをプラス。絶妙なバランスでモダンな一着へと昇華した。
今シーズンから新しいクリエイティブディレクターが就任し、もともとあったフェミニンな雰囲気は残しつつも、モダンに再構築されたところに惹かれます。このコートもベーシックなチェック柄を少し現代的に表現。スタイリングの主役になる、ボリュームのあるシルエットもすごく好みです。
(金子夏子さん/スタイリスト)
モードとストリートが融合している空気感が魅力的で、今の私の気分に合っています。このコートだけでも絵になるため、余計なことはせず、ブラックデニムにスニーカーで、シンプルにコートを引き立たせたいです。とにかくこれからのニナ リッチが、気になって仕方がありません!
(丸山佑香さん/スタイリスト)
小顔に見える大賞

LOEWEのダブルブレストコート
シルバーのボタンにはキラキラと輝くストーンをあしらって。バックスタイルはダーツによって、ウエストからヘムラインへと美しいフレアを描く。シックな中に、ひねりのある技をちりばめた。
ランダムな金銀のボタンや誇張されたショールカラーにジョナサン・アンダーソンらしい遊び心が。ただのクラシックなコートで終わらずツイストがきいています。大きな襟は顔を小さく腕を細く、深く開いたVネックはデコルテをきれいに見せてくれる効果がありますよ。
(編集N)
スマートムートン大賞

CELINEのシャーリングコート
70年代後半のブルジョア・パリジェンヌをキーワードとして掲げる今季。シャーリングの多用とスリーブの二重構造で、ラグジュアリーなオーバーサイズを完成させた。たとえTシャツ一枚でも十分なほど、暖かさも格別。
コートを選ぶ上では、素材はもちろんのことシルエットも重要だと思っています。その点こちらは、ムートンにつきものの、まるで太っているようなシルエットにはならず、むしろスマートに見えるところが見事! 難しいものが多いこのタイプのコートの中で、さらっと着られる珍しい一着です。
(飯島朋子さん/スタイリスト)
全人類に似合う大賞

BALENCIAGAのインコグニートコート
パリジャンの匿名性(=インコグニート)を象徴化した、顔を隠せる高い襟がアイコニック。体を覆うコクーンフォルムや、ボリュームのあるスリーブ、膝下丈のレングスなど緻密な計算によって生み出されたシルエットは、不思議と年齢や体形を問わず万人をモードな佇まいへと導く。
素材はオーソドックスですが、極端に大きな襟やボリュームのあるシルエットがほかとはひと味違う! デニムやオープントゥのサンダル、サングラスを合わせるのも肩の力が抜けていて好きです。クラシックばやりですが、直球ではなく、少しはずしたところを攻めたい今の気分にしっくりきます。
(栗山愛以さん /ライター)
展示会で編集部全員がこのコートを試着。身長は150㎝から170㎝まで、体形もバラバラ。それなのに、誰が着てもシルエットが美しく、"似合う~!"という歓声がそこかしこに。こんなにも人を選ばずみんなが着こなせるコートに出合ったのは初めて。あまりの素晴らしさに興奮が冷めません。
(編集K)
クラシカルケープ大賞

MARC JACOBSのウールコート
美しいAラインを描くクラシックなケープコート。シルエットにボリュームを持たせツイストを加えた。ファブリック工場のアーカイブを研究した上で採用した上質なウール生地からはクチュールのメンタリティがにじむ。
今季はエフォートレスなオーバーサイズに惹かれ、このコートをチョイスしました。由緒正しいトラッドなアイテムでありながら、サイズ感で王道をはずしてくるところがさすが! そのひと筋縄でいかないところにグッときました。ワイドパンツと合わせて、マニッシュに着たいです。
(小倉倫乃さん /エディター)
コレクションで見た際、パターンがとてもきれいで感動しました! そのままでも存在感のあるケープコートに、Pコートのディテールでオーセンティックなムードを足しているのも絶妙。普遍的な美しさとマーク ジェイコブスらしいビッグシルエットの遊び心を同時に味わえるのがうれしいですね。
(編集I)
テクノロジーテーラリング大賞

BOTTEGA VENETAのレザーコート
しなやかなラムレザーをレーザーカットし熱圧着することで、キルティングの表情を再現。
チェーンとトライアングルによるクロージャーはシルバーとゴールドのコンビネーションで、全体にコンテンポラリーな印象を加える。中にはダウンのように羽毛が入っており、防寒面も優れているのがうれしい。
ストイックになりすぎるレザーコートは、今まで敬遠していました。でもこちらは、シャープさはありながらもハードに傾かないシルエットが素敵。ランウェイルックのように、コンバットブーツやスニーカーなどを合わせ、抜け感のあるスタイリングを楽しみたいです。
(影山蓉子さん/スタイリスト)
自信をくれる大賞

SAINT LAURENTのヘリンボーンコート
フィッティングに100時間を費やし、コレクションでファーストルックを飾ったキーアイテム。イメージは、ムッシュのミューズ、ベティ・カトルーだ。力強さを象徴するパワーショルダーと流れるようなシルエットに、男性性と女性性が共存する。
ムッシュの創ったサンローランというブランドの世界観を壊すことなく、現代のサンローランの気高さ、気品、そして今を強く生きる女性像が表現されていると感じました。ジェンダーレスとあえて声高に叫ばなくとも、女性に堂々と胸を張って歩く力を与えてくれるような一着だと思います。
(飯田珠緒さん/スタイリスト)
SOURCE:SPUR 2019年10月号「ザ・ベスト・コート・アワード」
photography: Keita Goto 〈W〉 styling: Mayu Yauchi hair: HORI 〈bNm〉 make-up: NOBUKO MAEKAWA 〈Perle〉artwork: Shutaro Yaguchi model: Anna T text: Mai Ueno logo design: Yusuke Kaneko 〈DAMKY signs〉