スタイルがある人の定番は? デザイナーたちの“マイ・スタンダード”の作り方

素敵な服をデザインする人のスタイルにはどんなスタンダードが隠されているのか? 長年積み重ねてきた私服の“定番”を大公開。

CASE:01
Keiko Seya/瀬谷慶子さん

アクセサリーや靴に遊びを加えるパリ・ベーシック

パリを拠点にするブランドseya.のクリエイティブ・ディレクター、瀬谷慶子さん。自身のブランドを体現するような、パリらしい上品なベーシックスタイルに、エスニックな要素をミックスするのがマイ・スタンダードだという。

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1 飾らない色気を感じさせる瀬谷さん

「旅行するのが趣味で、旅先でついついエスニックなハンドメイドジュエリーやスカーフ(6)を買ってしまうんです。手持ちの服はシンプルな無地が多いので、旅先で買ったアクセサリーをアクセントにしたり、どこかしらにフェミニンな要素をプラスするのが定番ですね。アクセサリーは直感で、洋服は熟考して買うことが多いです」。瀬谷さんの言うフェミニンなスタイルとは、たとえば上質なカシミヤのタンクトップ(5)や、柔らかい素材のアイテムを選んでさりげない色気をプラスすること。アクセサリーもその重要なひとつで、タイの友人が作ったというハンドメイドジュエリーと、フィレンツェやコペンハーゲンで購入したというアンティークアクセサリー(7)が素敵にミックスされているのが瀬谷さんらしく印象的だ。「トレンドを意識しすぎるのは自分らしくない、だけどスタンダードすぎるとつまらない。だから、全身のバランスを考えるときは、靴が重要になってきます。シーズンごと、またその日の気分によって赤、シルバーなど靴を派手な色みにするんです。試行錯誤の結果、最近は、ベージュや白など薄い色みのもの(2)に落ち着きました」

洋服自体は、20年くらい前から、流行に左右されずに使える普遍的なものを選ぶことが多くなったという。「そういう服は捨てずにとっておくし、しばらく着ていなかったけど、一周回ってまたヘビーローテーションすることもあります。最近は、ヴィンテージやメンズライクなアイテム(3・8)がレギュラー復帰の予感。ツィードやカシミヤ、上質な素材で仕立てのいいメンズジャケットなどを、女性らしい色気のあるアイテムとミックスしたいと思っています」

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2 ジルサンダーのブーツ。「靴は白など薄い色みのものが好き。最近買ったものですが、長く愛せるスタンダードになりそう」3 5年ほど前に購入したルメールのメンズウールシャツ。「メンズでも素材や落ち感を吟味すれば着やすいです」

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4 毎シーズン、素材やカラー違いでリリースしているseya.のコート。ヤクウール100%、ダブルフェイス仕様の贅沢な一着5 「肌に直接触れるインナーは、カシミヤ素材を選ぶようにしています」。右はルイ・ヴィトン、左はseya.のもの6 2年ほど前にタイで購入したジム・トンプソンのスカーフ。「地味な色みの服が多いのでアクセントに重宝しています」

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7 バンコクのハンドメイドジュエリー。「ずっとつけていられるシンプルなものと、ちょっと変わった素材やデザインのものをミックスするのが自分の中のルールです」

8 マルジェラ時代のエルメスのウールパンツ。「素材のよさと落ち感に惹かれました。3シーズン使えて何にでもコーディネートしやすく気に入っています」

Profile

Keiko Seya/瀬谷慶子2016年、パリを拠点にスタートしたブランドseya.のクリエイティブ・ディレクター。毎シーズン、旅によって得たインスピレーションをコレクションで表現。洗練された上質なアイテムの数々が、高感度な大人の女性たちに支持されている。

CASE: 02
Nicola Glass/ニコラ・グラスさん

アティテュードある宝物を時を経ても愛用し続ける


「私にとってのスタンダードは、デザイン性に優れていながらも心地よく、着たときに自信を与えてくれる服。そしてシンプルかつエッジがきいていてどんなスタイルにも合わせやすいアクセサリー。どれも共通点はタイムレス&シーズンレスなこと。ややメタルの要素を含んでいるアイテムも多いわ」と、長年愛用しているアイテムから最近仲間入りしたニューカマーまで紹介してくれたニコラ。自分らしさが出せるので5年間キープしているという内側を刈り上げたショートヘアに、唯一のメイクアップという強めに引いたアイライナーが印象的。
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 ニコラのキャリアは、ジュエリーデザインからスタートしただけあって、ワードローブにアクセサリーは欠かせないそう。「ジュエリー(1012)はヴィンテージや知り合いのデザイナーのものを中心に集めています。服をアクセサライズするのも好きなのでベルト(16)は欠かせません。ドレスやジャケットの上にベルトをして、フェミニンとマスキュリンのバランスを楽しんでいます」

ケイト・スペードでデザインをするようになってから、今まであまり着ることのなかった色柄ものもスタンダードに加わったという。「遊び心のあるフラワーやアニマルプリントのドレス(9)が今の気分。一方で、10年以上愛用しているのは飽きの来ないソリッドカラーのもの。クロエのドレス(14)はデザイン、フレアの動き、ボタンのディテール、すべてが美しい至福の一着。グッチのパンツ(15)はしばらく着用しない期間があっても、必ず復活します」

いろんなものをたくさんというより、毎シーズン本当に好きなものを数点だけ買うほうがサステイナブルだと語るニコラ。年を重ねるごとに自分のワードローブをよく理解していくので、旬のトレンドアイテムも自然と上手にミックスできるようになるそう。「女優のヘレン・ミレンのように、年齢にこだわらずにアティテュードを持ってオシャレを楽しんでいる女性が素敵だと感じますね」

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9 パフスリーブドレスはケイト・スペードニューヨークの2019年秋冬から10 (右手)ケイト・スペード ニューヨークのリングとハチのモチーフリング(左手)夫からサプライズでプレゼントされたエンゲージメントリングは、英国人デザイナーMAEVONAによるもの。アンティークダイヤモンドがプリンセスカットされた唯一無二の美しいデザイン11 ショートカットに映えるイヤリングはNYのヴィンテージショップで購入12 ジュエリーデザイナー、ドロシー・ホッグはエディンバラ芸術大学時代の講師。「このリングはどんなスタイルにもマッチするお気に入り」13 10年以上メイクアップの定番は黒のアイライナー。愛用はシャネルのスティロ ユー ウォータープルーフ

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14 1970年代のカール・ラガーフェルドが手がけたクロエのドレスは一生物15 16年以上前に購入したトム・フォード時代のグッチのベルベットパンツは今でもスタメン

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16 (上)アライア、(下)ニコラがデザインしたマイケル・コースのベルト17 シーンを選ばないケイト・スペード ニューヨークのロミーサッチェルバッグ

Profile

Nicola Glass/ニコラ・グラスイギリス・北アイルランド出身。グッチ、マイケル・コースのアクセサリーデザイナーを経て、2019年春夏からケイト・スペード ニューヨークのクリエイティブ・ディレクターに。プレイフルなウェアやバッグを発表。

SOURCE:SPUR 2019年12月号「デザイナーたちの“マイ・スタンダード”の作り方」
photography:Mari Shimmura(Keiko Seya) Emmy Park(Nicola Glass) interview & text:Mami Okamoto(Keiko Seya), Miko Uno(Nicola Glass)