山本寛斎の思いを未来に繋ぐ、“世界遺産ランウェイ in 富士山”

世界的なファッションデザイナーであったのみならず、カリスマ的な求心力で国際交流イベントをプロデュースしてきた山本寛斎が手掛ける『日本元気プロジェクト』が、今年もオンライン配信にて開催される。



生前、ファッションを“人の心の奥底にある祭り心に火を付けるもの”と表現し、「世界の人々が夢を持ち、その実現に向かって挑戦することで元氣になってほしい!」との山本寛斎の思いを具現化した本プロジェクトの2021年の舞台となったのは、霊峰・富士山の麓にある山梨県富士吉田市。江戸時代から高品質の織物の名産地としても知られてきた富士吉田市の各所で収録したランウェイショーの映像を“世界遺産ランウェイ in 富士山”として発表する。


今回のプロジェクトでは、山本寛斎の熱い思いに共鳴した日本の5組のファッションデザイナー、ディレクターによるスペシャルな作品が登場。SPUR.JPでは、参加ブランド「HEMU」のデザイナー・瀬戸川裕太にショーの様子をインタビューした。


—HEMUとはどのようなブランドですか?

HEMUは2021年に結成されたデザインチーム及びファッションブランドで、コンセプトは“HE SHE ME YOU = HEMU”です。若手デザイナーによる新たな表現のプラットフォームになれればと思い発足しました。お客様やデザイナーなど全てはヘム(裾)で繋がり広がっていきたいとの願いを込めていて、現在は私含め、それぞれがパーソナルブランドを持っている4人のデザイナーがメインで運営していますが、各自の個性や美学が、フラットに”ものづくり”という共通領域でセッションすることに意義を見出しており、楽しく活動しています。

—『日本元気プロジェクト』参加の経緯を教えてください。

私は学生として2019年に東京とロンドンの大英博物館で開催された『日本元気プロジェクト2019』に参加し、寛斎さんから厳しくも愛あるご指導をいただきました。その後2020年を経て今回で3度目の参加になりますが、今回は学生としてではなかったので良い感じのプレッシャーを感じながら、デザインに取り組みました。

—今回発表したルックに込めた思いとは?

今回制作したウィメンズ、メンズ1体ずつの2ルックは全て、裏地の産地でもある富士吉田市から出た産業廃棄物やB反をアップサイクルしています。本来、裏側に使われる裏地、工場から廃棄物として出るゴミを前面に出すデザインを、富士山が形成されたプロセスを参考に衣服として構築しました。とはいえ、まずはファッションとして素敵かどうかを大切にしました。「サステイナブル」というワードだけが先行して、本質的な意味のファッションを置き去りにしてしまいたくはありませんから。


—撮影を終えた率直な感想は?

終わった安堵と、始まる期待が入り混じっている感じです。撮影当日は雨予報で天候も良くなかったのですが、最後には段々と晴れていき最後は富士山が見えるほどで、あの瞬間は言葉にできない感覚に浸りました。また、私たちの作品の撮影現場は織物工場の光織物さま内で撮影させていただきましたが、夜遅くまでご対応いただき、山本寛斎事務所の方々はもちろん、全ての関係者の方々への感謝の気持ちでいっぱいです。

—プロジェクトへの参加は、ブランドやご自身のクリエイションに影響を与えましたか?

プロジェクトを通してHEMUの方向性がより明瞭に見えるきっかけになりました。個人のクリエイションに関しても、YUTASETOGAWA(瀬戸川個人のブランド)はよりプライベートで自由な表現でいいんだ、と再認識もできました。学生時代、寛斎さんとご一緒していなければ今の自分はないだろうと思うほど影響を受けましたが、あの時の体験や経験を伝承することは大切ですし、私たちも積極的に取り組んでいこうと思っております。


瀬戸川が語るように、本プロジェクトは若手デザイナーだけでなく、デザイナーやクリエイターを目指す学生たちにも発表の場を提供してきた。北口本宮冨士浅間神社で特別収録されたランウェイシーンには、厳選された学生たちの6作品が登場。ファッション界の未来を担う才能を持った若者にとっては、夢への第一歩だと言える。


学生参加作品

821日(土)にはファッションムービー、828日(土)にはファッションムービー制作の舞台裏に密着したドキュメントムービーがともにYouTubeで配信される。ファッションに夢を抱く人、装うことのパワーを信じる人はぜひ未来へとつなぐエネルギーに触れてほしい。

日本元気プロジェクト2021 世界遺産ランウェイ in 富士山 

配信日時:ファッションムービー  2021年8月21日(土)20時/ドキュメントムービー  2021年8月28日(土)20時
動画配信プラットフォーム:日本元気プロジェクト2021公式サイト/YouTube ※視聴無料 
主催:日本元気プロジェクト2021実行委員会
後援:山梨県/富士吉田市
助成:文化庁/独立行政法人日本芸術文化振興会
企画制作:山本寛斎事務所
公式サイト:http://www.kansai-inc.co.jp/ngp2021/