彼女たちにボーダーはない。「スーパーカブ」と冒険する

2021年4月から放映され話題を呼んだアニメ「スーパーカブ」は孤独な少女小熊がバイクを通じて自由を得る物語。両親も友達も趣味もない。そんな主人公が中古のスーパーカブと出合い、少しずつ人生を切り開く。女優の仁村紗和が演じる大人になった小熊とともに、旅へと繰り出したい

ドレスを着て、スーパーカブと一緒に故郷へ

彼女たちにボーダーはない。「スーパーカブの画像_1
ブルゾン¥445,500・ドレス¥605,000・マフラー¥60,500・ブーツ¥247,500(すべて予定価格)/ミュウミュウ クライアントサービス(ミュウミュウ) ヘルメット¥38,500/アライヘルメット スーパーカブ50(50cc)¥236,500/Honda お客様相談センター

作中、小柄な主人公・小熊でも乗りこなすことができたスーパーカブは、誰にでも開かれたバイクの名品。世界中で愛される理由は、乗り心地のよさにある。マクラメ編みのトップとシルク生地を組み合わせたドレスにオーバーサイズのブルゾンをミックス。包まれるような心地よさはカブにも通じる。足もとに風よけが備わり、ドレスでも颯爽と走ることができる!

待ち合わせ場所は「スーパーおの」

彼女たちにボーダーはない。「スーパーカブの画像_2

小熊と礼子はモードなユニフォームに身を包み再会を果たす。

(右)深い緑のキュロットにラインをきかせたブルゾンを合わせて、パブリックスクールの制服を彷彿するスタイリングに。
ブルゾン¥218,900・ニット¥187,000・キュロット¥117,700・ストール¥50,600・ソックス¥16,500・スニーカー¥78,100/マルジェラ ジャパン クライアントサービス(メゾン マルジェラ) ヘルメット¥24,200/アクティブ(BELL HELMETS/Asians Form)

(左)少し長めのMA-1ブルゾンを粋に着こなす礼子。鮮やかなブルーのジョッパーズパンツもバイクにぴったり。
ブルゾン¥214,500・中に着たチェックドレス¥198,000・パンツ¥116,600・ブーツ¥90,200/ステラ マッカートニー カスタマーサービス(ステラ マッカートニー) ヘルメット¥66,000/SHOEI 中に着たタートルニット/スタイリスト私物

山と川を眺めながらひとやすみ

彼女たちにボーダーはない。「スーパーカブの画像_3

小熊と礼子のランチは相棒と一緒に。故郷の美しさを堪能できる釜無川橋ポケットパークが再会の舞台。富士山や南アルプスなどの山々に囲まれ、豊かな川が流れる心地よいスポット。

(右)目に鮮やかなブルーのボンバージャケットはバイクの風をものともしないタフさを兼ね備える。ボトムはトラッドなショートパンツで上品にまとめたい。
ジャケット¥520,300・ニット¥97,900・パンツ¥119,900・ローファー¥108,900/トッズ・ジャパン(トッズ) レギンス¥17,050/フィルグ ショールーム(シモーネ ワイルド) ソックス¥990/タビオ(靴下屋) ヘルメット¥37,400・ゴーグル¥6,930/SHOEI グローブ¥20,900/ティースクエア プレスルーム(テラ) スーパーカブ50(50cc)¥236,500/Honda お客様相談センター

(左)ボンディングのトップスをウエストでマークし、スリット入りのスカートでスーパーカブを乗りこなす。礼子はいつだって冒険心いっぱいのスタイルを貫いて。
トップス¥181,500・中に着たニット¥64,900・スカート¥140,800・タイツ¥27,500・ブーツ¥151,800/イザ(ニナ リッチ) スーパーカブ110(110cc)¥280,500/Honda お客様相談センター

あふれる自然を鮮やかなカラーで駆け抜ける

彼女たちにボーダーはない。「スーパーカブの画像_4

1 まっすぐな農道をゆっくりと走るスーパーカブ。グラフィカルな花のプリントが緑との対比で美しく映える。
ドレス¥92,400(参考価格)/アオイ(MSGM) ブラトップ¥36,300/アレキサンダーワン レギンス¥53,900/Diptrics(アトリエ ソヴェン) スカーフ¥5,500/ジャンティーク ネックレス¥372,900/トムウッド プロジェクト(トム ウッド) ブローチ¥26,400/フィルグ ショールーム(パール オクトパシー) ブーツ¥99,880/WESCO JAPAN ヘルメット¥29,700/アライヘルメット グローブ¥20,900/ティースクエア プレスルーム(テラ) ゴーグル/スタイリスト私物 スーパーカブ50(50cc)¥236,500/Honda お客様相談センター
2・3 アニメ「スーパーカブ」は山梨県北杜市を舞台に丹念に描かれたアートワークも見どころのひとつ。主人公が走り抜ける牧原交差点付近や新緑を抜けていく国道などが、ポエティックに描き起こされている

彼女たちにボーダーはない。「スーパーカブの画像_5

4 小熊が初めて手に入れたバイク用グローブのグリップスワニー。
グローブ¥3,850/GRIP SWANY ニット/スタイリスト私物 スーパーカブ/1と同じ
5 手もとがミトン型になったダウン入りのグローブストールは肌寒い季節のベストパートナー。遠い春に想いを馳せるようにロマンティックなブラウスとピンクのベストに重ねて。
ベスト¥69,300(参考価格)/Diptrics(マリアーノ) ブラウス¥31,900/スティーブン アラン トーキョー(デザイナーズリミックス) 中に着たハイネックトップス¥47,300/トリー バーチ ジャパン(トリー バーチ) パンツ¥53,900/ブランドニュース(ルール ロジェット) グローブストール¥85,800/CLIFF co.ltd.(FUMIKA_UCHIDA) ヘルメット¥29,700/アライヘルメット ゴーグル/スタイリスト私物 スーパーカブ/1と同じ

パワフルな装いで、ファンタスティックな世界へ

彼女たちにボーダーはない。「スーパーカブの画像_6
トップス¥97,900・中に着たブラウス¥97,900・パンツ¥430,100・スカーフ¥59,400/イザベル マラン ヘルメット¥45,100/アライヘルメット グローブ¥14,080/WESCO JAPAN スーパーカブ50(50cc)¥236,500/Honda お客様相談センター

アニメの最終話は春を先取りし、桜を求めて南下するストーリー。大人になった小熊が目指すのはコスモスとサルビアが咲き乱れるガーデンだ。オプティミスティックな80年代のムードを感じさせるボリュームニットとルビー色のレザーパンツが、スーパーカブとの旅を彩る。

彼女たちにボーダーはない。「スーパーカブの画像_7
(C)Tone Koken, hiro/ベアモータース

「スーパーカブ」 Blu-ray BOX

主人公は身寄りのない高校生・小熊。淡々とした高校生活を送るなか、中古のスーパーカブを手に入れたことで、人生の転機が訪れる。行動範囲が広がり、大切な友人との交流を経て、自由を手に入れていく物語。角川スニーカー文庫にて刊行中のライトノベル『スーパーカブ』のTVアニメがBlu-ray BOXに。全12話本編と書き下ろし小説やイラストなども収録される。

Blu-ray(BD2枚+DVD1枚 3枚組)¥27,500 https://supercub-anime.com/

ファッション界きってのライダーが、スーパーカブの魅力に迫る

彼女たちにボーダーはない。「スーパーカブの画像_8

本特集のスタイリストで、ライダーであるコギソマナさん。今なお、愛され続けるスーパーカブを深く知るため、Honda広報担当の髙山美樹さんを直撃。機能性とファッション性双方に優れるデザインの秘密を解き明かす

 

おしゃれマニアを惹きつける優れたデザイン性

コギソ(以下K) 最新モードともスタイリッシュに決まる、スーパーカブのデザイン性の高さに驚きました。
髙山(以下T) ありがとうございます。〝ホンダと言えばカブ〟。ブランドを代表する存在です。
 私は大型バイクに乗ることが多いのですが、今回スーパーカブに試乗したところ、すごく乗りやすくてビックリしたんです。バイクにありがちな〝威圧感〟がないんですよね。
 バイクは重いというイメージがありますが、カブシリーズは比較的軽いのも、女性に支持されている点だと思います。すんなり乗れて、足つきもいい。そして、クラッチ操作は必要ないところが魅力です。
 それはハードルが下がりますね! このデザインは昔から変わらないんですよね?
 スーパーカブは1958年に誕生し、3年前に60周年を迎えたところ。創業者の本田宗一郎が先頭に立って開発した一台なのです。当時から世界に目を向けていて、どうすればお客さまの役に立つ乗り物になるのかということを徹底的に考えて作られました。突き詰めたからこそ、60年たっても普遍的なデザインとして残っているんです。
 変える必要がなかったんですね。
 そうですね。機能のパッケージングが秀逸だったからだと思うのです。乗り降りしやすいステップスルーのS字ライン、風や泥はねを軽減するためのレッグシールド。ここは足もとの風を防ぐだけでなく、エンジンのゴツゴツ感をカバーしている。ガソリンタンクも座面の下に配置されているんです。これは、本田宗一郎ともうひとりの創業者である藤澤武夫にまつわるエピソードが関わっています。〝女性はエンジンが見えていると敬遠してしまう〟という妻の意見を聞き、デザイン上の参考としたのです。誰にでもとっつきやすいのは、配置の工夫があってこそ。こういったディテールをトータルで兼ね備えたパッケージは、当時から完成度が高かったと言われていますね。
 なるほど。ひと目見て、可愛い!ってなりますもんね。そして、どんなファッションとも相性がいい。
 必須な機能が反映された外観なんです。シンプルで、無駄のないデザインになっていると思います。

 

すべての人に開かれた〝いかつくない〟バイク

 アニメの舞台となった山梨県北杜市でこの撮影をしている最中におばあさんがカブに乗って買い物をしているところに遭遇しました。まさに、生活の一部なのだと実感しましたね。
 今でこそインクルーシブという概念が聞かれるようになりましたが、スーパーカブは開発当初から「誰もが使えて役に立つ」という思想で、簡便で扱いやすいというコンセプトを掲げました。昔のカブって今よりも少しほっそりとしたイメージでしたね。本田宗一郎はよく〝手の内に入るものを作れ〟と言っていたようです。親しみやすくてコンパクト、それでいて力強い。そこは今でも軸となっています。
 私は若いときから周りにバイクに乗っている友人が多かったのですが、スーパーカブのようないいデザインのバイクに乗っている友人たちは、ちょっぴり得意気でしたよ。単なる移動手段というよりも、「私の相棒」という感じ。愛がありますよね。アニメ「スーパーカブ」でも小熊や礼子は大切に乗っていましたね。
 そうですね。スーパーカブに出合って学校生活を送るだけではなく、いろいろな場所へ冒険しに行けるんだ、というメッセージが伝わってきます。このアニメを通じて、カブに興味をもって乗ってくれる方がますます増えるとうれしいですね。
 アニメを見ていて、私にもああいうときがあったなと懐かしくなりました。ガソリンが切れて困ったり、雨が降ってきて怖かったり……。
 誰でも経験するシーンですよね。そういう体験を経て、楽しく乗れるようになっていきます。礼子のように詳しい人が近くにいると、さらにのめりこんでいく世界かもしれません。カブはユーザー間のつながりも強く、定期的にファン同士が全国から集まってさまざまなミーティングを開いているようです。お互いの愛車を披露し合ったり、情報交換をしたりと、今ではひとつの文化になっているんだと感じますね。

 

「スーパーカブ」が研ぎ澄ます感覚

 髙山さんがアニメをご覧になって、印象的だったエピソードはありましたか?
 小熊や礼子など、女の子たちも魅力的なのですが、スーパーカブや風景などが写真のようにきれいに描かれているのが印象的でした。特に、最終話で桜を見るために遠方に出向くエピソードは風景が美しくて引き込まれましたね。
 私は、冒頭で中古のスーパーカブを買ったシーンです。エンジンをかけた瞬間に、小熊の顔にふわっと風が吹いてきたんです。あの風が吹かなかったら、彼女は買わなかったと思うんですよね。さりげないシーンですが、バイクに乗ったときの気持ちよさが伝わる描写だなと思いました。バイクに乗っていると、天候の変化に気がつきやすくて、世界が近いと感じることがあります。私は車にも乗りますが、車だとそうは感じない。バイクだと海が近づいてくると潮のにおいが迫ってくるとか、高速道路から見る富士山はいつもより大きく見える! と感じ方も違うんです。バイクに乗るって、たったひとりの私だけの贅沢な時間なんですよね。
 私もバイクに乗るので共感します。このアニメはバイクが主人公というよりは、誰かが何かをするための手段としてバイクがある、という視点で描かれているところが素晴らしい。
 コロナ禍で移動手段を獲得すべく、都心の友人たちがバイクを買い戻すなんて話をチラホラ聞きます。今、カブはなかなか手に入らないそうですね?
 そうなんです。世界的に二輪の需要が高まっているのか、お手もとに届けるまで少しお時間をいただいてます。乗り心地を試したかったら、「HondaGO BIKE RENTAL」というサービスがおすすめです。車種によって必要な免許の種類が異なりますが、ウェブサイト(https://hondago-bikerental.jp)で予約をすれば、お近くの販売店で相談や試乗もできますよ!

彼女たちにボーダーはない。「スーパーカブの画像_9
photography: Sho Ueda

コギソさんのライダースタイルを拝見! プラダのユーティリティベストを軸に、差し色のイエローをきかせて。ロマンティックなブラウスとのミックススタイルに仕上げた。パンツのフェザー使いがプレイフル!

Profile
こぎそ まな●スタイリスト。岐阜県出身。学生時代より服への愛が深く、雑誌編集部のアシスタントからスタイリストへ転身。ハイモードとリアルブランドを横断して構築する、自由なスタイリングを得意とする。

SOURCE:SPUR 2021年10月号「『スーパーカブ』と冒険する」
model: Sawa Nimura (Koguma), IO (Reiko) photography: Osamu Yokonami styling: Mana Kogiso 〈io〉 hair & make-up: Yuko Aika 〈W〉 edit: Michino Ogura cooperation: Hokuto City