HERMÈS
1984年、ロンドンとパリを結ぶ機内でエルメス社5代目のジャン=ルイ・デュマは俳優のジェーン・バーキンと偶然の出会いを果たす。母になったばかりの彼女のためにバッグを作りたいと後日提案したのが名品「バーキン」の誕生秘話だ。2021年、新たなモデルはトートバッグにポーチを備え、より機能的にシフト。これまで、リペアに関してはブティックで受けていたが、より専門的な修理に対応するため、今年6月に大阪のヒルトンプラザイースト館2階に、日本初となる「エルメス アフターセールスカウンター」がオープン。自社製品のリペアやケアサービスに特化した職人が常駐し、ケア方法などを相談できる。
CHANEL
ガブリエル シャネルは「流行は色あせても、スタイルは色あせない」と言った。アイコニックなキルティングバッグはまさにそのフィロソフィーを体現する存在。この秋冬は1970年代から続くパリジャンシックなエッセンスを取り入れた。キルティング、レザーを編み込んだチェーンなど長く愛用できる、エターナルなディテールを詰め込んだデザイン。革選びやなめしの技術などの工程も厳格に管理し、品質を保っている。
GUCCI
1991年に誕生したバンブーハンドルのトートバッグに新顔が登場。今季ローンチした「グッチ ダイアナ」は原点のクラシックさはそのままに、ネオンカラーのレザーベルトを加えることで現代的な表情にアップデートしている。グレインレザーを選べば、自然な艶が長続きし、傷も目立ちにくい。カーブしたバンブーハンドルは使うごとに手になじみ、経年変化を楽しむことができるのも特徴だ。
LOUIS VUITTON
1858年にルイ・ヴィトンから発表されたトリアノン・キャンバス素材。その名称が由来となっている「トリアノンPM」はアーカイブスのトランクから着想を得たスクエアタイプのバッグ。モノグラム・キャンバス素材にカーフレザーとウッドのトリムが施され、ミュージアムピースのような佇まいに。国内にある専門のアフターケアサービスではパリのアトリエと同じ技術を持つ職人が純正の素材を使ってリペアにあたる。全国のルイ・ヴィトンストアにてアフターケアを相談できる。
SAINT LAURENT
エンべロープ型の黒のスクエアバッグは60年代のサンローランを思わせるタイムレスな印象。上品なゴールドのカサンドラロゴが輝くフラップを開くと、スリムなポケットとジップポケットがひとつ。飽きのこないミニマムな作りも長く使えるポイントに。レザーグッズは正規販売店で購入した場合、専門の修理サービスを受けることができる。
BOTTEGA VENETA
ビッグチェーンがアクセサリーのような輝きを放つ「マウント」。しなやかなカーフスキンのマグネットフラップクロージャーを開くと2つのコンパートメントに分かれたデザイン。チェーン、ショルダーやハンドルと自由自在に持つことができ、カラーバリエーションも豊富。確かなクラフツマンシップに裏打ちされたモダンな逸品だからこそ、ベストパートナーになる。
BALENCIAGA
2021年夏にデビューした「ツール 2.0」バッグはフラップを折り畳んだり、開けたまま使えたりとライフスタイルに寄り添う機能性を装備。小ぶりなXSサイズならシルバーをレコメンド。使いはじめはフレッシュな輝きがあり、時が経つとこなれた風合いへ。ゆっくりと育てていく楽しみがある名品だ。取りはずし可能なポーチやストラップもついている。
LOEWE
1975年にローンチされた「アマソナ」。1970年代、女性たちが自らの平等な権利を訴えた時代背景とともに生まれた。知的なムードを感じるスクエアシェイプの名作が、現代のスタンダードとして蘇る。吸いつくように上質なナパカーフスキン製で、フレッシュなカラーパレットに刷新した。持つ人を後押しするバッグを長く携え、ともに成長していける未来を思い描いて。
PRADA
ハンドバッグを持ち、佇む姿はいつまでも凛としていたい。90年代のプラダのアイコニックなデザインからインスパイアされた「クレオ」バッグはモダンな素材使いが目を引く。艶やかなブラッシュドレザーで優雅な曲線を描いたバッグは、建築的な美しさをたたえている。時とともに、自分の体にフィットしてくるフォルムだ。リペアは店舗に相談できるほか、1年の修理保証がついてくる。
DOLCE&GABBANA
ひとつ持っておくと重宝するタイムレスなレオパード柄。ポニースキンで仕立てられたハンドバッグは、シチリア島の女性たちや島の美しさがイメージソースとなったアイコンバッグ「シシリー」の進化形。イタリアンエレガンスを象徴するラグジュアリーなルックスだ。隠しスナップボタンで開閉もスマートに行える。重厚感のある金具とハンドルのディテールは歳を重ねていく中で、上品さを添えてくれる。
RALPH LAUREN
アメリカンヘリテージを体現するラルフ ローレンの「リッキー」バッグが、よりソフトな素材で軽やかにリモデル。19世紀後半に馬の鞍につけて荷物を運ぶために作られたサドルバッグが着想源。50枚におよぶレザーピースを手仕事で縫製し、仕上がりには12時間もかかるという。職人が手がけた端正なバッグはタフさも併せ持つ。日々の生活に寄り添う使い勝手のよいデザインも長く愛せるポイントだ。
DIOR
クリスチャン・ディオールの妹の愛称「カロ」を冠したバッグはシックなスティルブルー色が目を引く逸品。上質なカーフレザーからなる細かいパーツには18700針ものステッチを施し、カナージュの模様を表現する。メンテナンスの際はカスタマーセンターを通じて、アトリエの専門スタッフが対応。バッグに合わせた方法を提案し、ケアの際の注意点などの説明があるのも安心。
手入れすれば、どんどん育つ! プロに聞く、レザーバッグのメンテナンス
ステイホーム期間中、ワードローブを整理する際に、バッグのトラブルに気がついた人も多いはず。「バッグは人間の肌と同じく、手をかければ美しさを保てる」と語るリペア専門店「美靴工房」の保科美幸さんにケア方法を聞いた
1 日々のお手入れでできることは?
帰宅後、コップ1杯の水に食器用洗剤を1滴垂らした液を作り、コットンに浸し固く絞る(1)。ハンドルやボディなど手に触れる部分の汚れや油分を落とす(2)。これだけでも十分だが、3カ月に1回ぐらいは市販のハンドクリームを塗るのもおすすめ。肌の上で白く残らないタイプがよい(3)。ピンポン玉程度の量を取って手のひらにのばし、革に塗り込んでいく(4)。最後はいらなくなったストッキングでクリームの余分な油を取り去る(5)。さらに艶を出したい場合は市販の靴クリーム「コロニル」を使用(6)。
2 手持ちのバッグにカビが生えたら?
(1)と同じ液を使用。素材によっては色落ちの可能性などがあるので、最初はバッグの入れ口の裏側などで試す(7)。コットンで拭き取るだけで、表面の汚れが取れていく(8)。(9)の写真に向かって右半分は拭き取り前、左半分は拭き取り後。それでも取れないカビ跡はリペア専門店に相談したい。
3 レザーバッグの四隅のこすれが気になる!
レザーバッグの傷みが出やすいのは四隅から。特にデザインが凝ったものは白くなってくることが(10)。四隅の入り込んだ部分をならして(11)、(3)のハンドクリームをピンポン玉ぐらいとり、手でのばしながら塗り込む(12)。クリームを塗った部分はこすれ跡が目立たなくなる。
4 長持ちする収納方法を教えて!
日本の天候はここ数年で大きく変化し、気がつかないうちに湿度の高い収納環境となっていることも多い。付属の布バッグに入れて収納する人が多いが、通気性のよい不織布に包んで保管するのがおすすめ(13)。ハンドルを外に出し、ボディを風呂敷のように包むと、お互いの摩擦で傷ができるのを防ぐことができる。さらにハンドル部分はストッキングを巻くと傷防止に(14)。
5 プロに頼むとどこまで直る?
日頃のケアでバッグは長持ちするものの、日々使うなかで、傷がつくことも避けられない(15)。美靴工房では、クリーニング作業ののち、目立つ傷を補修。色を作り、はけを用いて傷んでいる箇所に色補修を施す(16)。再現度の高さに驚き!
Profile
保科美幸さん
革製品リペア職人。「美靴工房」テクニカルディレクター。リペア専門工房に勤めた後、ハイブランドのプロダクトを修繕するスキルを高めるために渡欧。工房は女性の職人が多く、丁寧な仕事が評判だ。
Shop
二子玉川 美靴工房
東京都世田谷区玉川3の21の8 1F
03-5491-4103
営業時間: 11時〜18時
定休日: 日曜・祝日
料金はオーダーに応じて決定
※紹介したリペア方法は素材により扱いが異なることがあります。購入元と相談した上で行なってください。
SOURCE:SPUR 2021年10月号「名品は時を経ることでより美しくなる。育てるようにバッグを持つ」
photography: Sodai Yokoyama,Yuka Uesawa (プロに聞く、レザーバッグのメンテナンス) styling: Tomoko Iijima hair: Koichi Nishimura 〈VOW-VOW〉 make-up: Asami Taguchi 〈Home Agency〉 model: Inge edit: Michino Ogura
※記載されたクレジット以外はすべてスタイリスト私物