ドレス$595/KkCo コート$2,690/Proenza Schouler リング 各$110/SSENSE(Blobb×Marshall Columbia) サンダル$420/Reike Nen
音楽とともにまどろむひととき ゼブラ柄のジャカードコートはベージュとブルーのコンビネーションが新鮮。シアーなドレスに包まれて。新たな芽吹きを思わせる力強いグリーンがモダンな表情を添える。足もとの若草色のサンダルで可憐に。「緑が好きなの。柄との組み合わせが斬新!」。
“自分らしさ”をいつも探究し続けてきた 「子どもの頃から家にひとりでいるときに、グッチや、いろいろなスタイルのファッションで鏡の前に立ち、想像上の自分を演じたりしていた。『これは、TVに出るときに着る服』とかね(笑)。納得のいく着方を考えたり、身にまとっているものがなじむまでいくつも試したり。そうやってどうしたら自分らしく見えるのかをいつも探求していたと思う」
そう語ってくれたのは、モデルでありアーティストのココ・ゴードン・ムーア。撮影の翌日に、NYのダウンタウンで地元の学生がよく行くカフェを取材場所に指定し、ひとりでカジュアルに登場した。 「ファッションについては、特定のスタイルが好きというわけではないの。でも普段はローライズのブーツカットデニムとTシャツが多いかも。クラシックで普遍的なルックに惹かれるの」
この日の装いはジーンズにピタッとした白いインナー、そしてネルシャツを軽く羽織って。彼女なりの90年代のようなスタイルに感じた。 「こだわっているのは、自分らしく見えるかどうか。それと着ていて心地がいいかどうか。だから時々街で見かける人がすごく素敵な服を着ていても、あまり快適に思えていないのが伝わると、いいと思えない。スカートが短すぎたり、靴が履きやすそうではなかったり……」
ファッションへのこだわりは、これまで変化し続けてきたとも語る。 「でもファッションシーンに関わる仕事もしているから、スタイリストの友人からヒントを得たりもする。それをもとに自分らしく取り入れるのが好きなの」
モデルとしての仕事は、とりわけ継続してランウェイにも出演しているマリアム・ナッシアーザデーなどがお気に入り。 「チルでセクシーなバイブスが好きで、私自身のスタイルともリンクしていると感じる。実は今度友人の結婚式があるから、マリアムのところでドレスを買おうとしているの。まだ考え中なのだけど」
彼女の両親は、NYを代表するアートインディーズバンド、ソニック・ユースのキム・ゴードンとサーストン・ムーアだ。そんなアーティスティックな家に生まれた彼女は、どんな影響を受けたのだろうか。 「クロエ(・セヴィニー)がベビーシッターだったの。今も彼女とは友達で、よく遊びにいく」
今回の写真も90年代のクロエのオルタナ感あるファッション写真を彷彿とさせる。 「そう! 自分でもそういう雰囲気を目指していた。それに、私と彼女って顔の形が似ているから、普段から彼女の写真を見ては『ああ、なるほど、こういう髪型が似合うのか、私もやってみよう』と参考にしたりしているの」
母のキムは音楽だけでなく、今も一流のギャラリーでインスタレーションやペインティングなどを精力的に発表している。そんな母とは、マーク・ジェイコブスやコーチのキャンペーンにも登場している。 「私のファッションアイコンは、80年代の母と言えるかもしれない。その時代の母の写真をすごくよく見るし、彼女のスタイルはいつ見ても素敵。それから、〝両親の家そのもの〟みたいな格好をよくしていたの(笑)。家の中の美学のようなものを体現しようとしたというか。常にアートに囲まれていたし、本の表紙やレコードのジャケット、家の模様とか、そういうものからとても影響を受けた。自分で言うのも変だけど、私の両親は、すごくクールなスタイルの持ち主だから。それから東海岸で育ったこと、シカゴのアートスクールに通ったことや、みんな違う独自の格好をしている友人たちからもインスパイアされたと思う」
そんな背景を持つ彼女が、自身の表現のフィールドとしてあえて選んだのは、音楽ではなく、詩だった。実は、撮影日の夜にブルックリンのバーで開かれたポエトリー・リーディングを聴いた。モデルのような華やかな舞台とはまったく違うけど、小さいながらもリアルなコミュニティで、彼女と仲間の4人でイベントを行なっていた。 「すごく小さいけれどポエトリーのシーンやコミュニティが好きなの。その一部でいられることもすごくうれしい。ファッションもそうだけれど、私は普段自分をあまり出さない性格だから、詩を書くことやリーディングで内面を表現していると思う。そのほかのアートに比べて、詩での表現が自分に一番しっくりくるの。書くことで自分の人生で起きていることもプロセスできるから。もちろん、人に見せられないようなダメな詩もたくさん書くけれど(笑)、その中からすごくよいものが生まれてくると、ほとんどセラピーみたいに思える」
彼女はこれまでに2冊の詩集を出版している。興味深いのは、その利益をチャリティとして寄付していること。 「私がチャリティに寄付することで、これまであまり知られていなかった問題、女性の権利や人権、平等、保釈金の問題などに気づいてくれる人がいるかもしれないなって。援助を必要としている組織や団体の役に立ちたいと思っているから。自分のアートを政治的とは言わないけど、少なくとも自分が関心を持っているコミュニティと何かしら関わっていける要素のあることをやりたいと思っている」
今は、最新の詩集を出版社に送り、正式に出版してもらえるか回答を待っているところだ。 「うまくいくように祈ってるけど、難しかったら自分で出版社を作るつもり。自分や友達の作品を世に出していきたいから」
ファッションも表現活動も、〝自分らしさ〟をゆっくりと、しかし着実なペースで一歩一歩模索してきたココ。彼女の静かなる強さがむしろ今、新しく見えた。