ゴールデンウィークは都心から足を延ばして、遠方の美術館へ旅してみませんか? まだ見たことのない展示作品や雄大な自然、美しい建築物を堪能できる、国内の美術館を厳選してお届け。いっそモードに装って、自分もアートの一部になろう
ホキ美術館は、2010年に日本初の写実絵画専門美術館として千葉市緑区に開館。千葉市最大の公園といわれている昭和の森に隣接している。地上1階、地下2階の3層になった回廊型のギャラリーでは、前館長を務めた故・保木将夫が収集した写実絵画作品約500点を中心に、企画展なども行なっている。
●千葉県千葉市緑区あすみが丘東3の15 043-205-1500https://www.hoki-museum.jp/
ジャケット¥784,300・パンツ¥653,400・靴¥315,700/ルイ・ヴィトン クライアントサービス(ルイ・ヴィトン)
メゾンのDNAであるジップやバックルを拡大し、精緻に描いたセットアップをまとって。写実主義の作家たちに焦点をあてたホキ美術館のコンセプトに合わせ、細部まで忠実に表現するリアリズムで呼応した。一見ハードな印象のモチーフに、あえてしなやかな素材を用いる裏切りも鮮やかだ。
ジャケット(ベルトつき)¥522,500・シャツ(タイつき)¥132,000・スカート¥324,500・ブーツ¥385,000・帽子¥61,600・イヤリング(片耳)¥77,000/グッチ ジャパン(グッチ)
ナットをポップアート調に解釈。ラップジャケット&スカートのどことなくオリエンタルなムードに端正なシャツを差し込み、モダンに仕立てた。ホキ美術館の空中にせり出した約30メートルの長い回廊をランウェイのように闊歩するなら、こんないでたちで。
1995年に開館した観光・文化施設「市原市水と彫刻の丘」を、市原市の市制施行50周年を記念してリニューアル。2013年に誕生した。現代アートを中心とした企画展を開催するほか、地域に開かれたコミュニティの場としても機能している。千葉県一の貯水面積といわれている高滝湖を望む、開放的なロケーションも美しい。
●千葉県市原市不入75の1 0436-98-1525https://lsm-ichihara.jp/
ドレス¥462,000・ブーツ¥453,200/バレンシアガ クライアントサービス(バレンシアガ)
現実世界に生きる切実さを表現した今シーズンのバレンシアガ。重厚なコレクションの中で際立ったのは、ひときわ明るく、希望を感じさせたイエローのニットドレス。プラットフォーム型のパンタレギンスを履いて、彫刻のようなプロポーションに変身。肺の組織を模したKOSUGE1-16の彫刻作品《Heigh-Ho》にやさしく包まれ、佇みたい。
トップス¥2,343,000(参考価格)・スカート¥297,000/ロエベ ジャパン クライアントサービス(ロエベ)
造花のように精緻に表現されたアンスリウムの花。花弁の部分はメタル素材で、スカートはコットンで再現したルックをまとって。多くの屋外作品が展示される市原湖畔美術館のルーフトップには、約700本のチューブで作られたAcc onci Studioの作品《MUSEUM-STAIRS / ROOF OF NEEDLES & PINS》が。作品の中に身を置いて、一見しただけではわからない静謐な美の奥行きに触れたい。
ファッション・アートプロのイチ押し"デスティネーション美術館"
アートスポットに足を運ぶなら、ドレスコードもモードであるべし! 襟を正して訪れたい、全国各地のミュージアムをプロが厳選
編集K/SPUR編集部エディター フランス芸術文化勲章を受章するなど国際的な評価も高い写真家、故・植田正治。山陰の地形をアートに見立てた作品の数々は彼の没後もこの写真美術館で見ることができる。鳥取出身の編集Kはここのファンのひとり。「鳥取砂丘をテーマにしたシリーズが好きです。空間構成が素晴らしいのですが、どこか昭和モダンなムードも、今見ると新鮮に捉えられます。この美術館は、田園地帯に突然現れる現代風建築であるところが素敵。裏手には建物のスリット状の空間から大山が望めるスポットも。ハットが宙を舞う作品と呼応するように、黒の制服的なワンピースを着て私も景色の一部になりたい」
photo:Haruki Kodama
倉田佳子さん/アーティストコーディネーター、ファッションライター Instagram: @yoshiko_kurata
長野県小海町松原湖高原に建つ、安藤忠雄設計の美術館。円弧を描くコンクリート調の建築が、雄大な自然と調和している。「2022年6月 に、磯谷博史による個展『動詞を見つける Find Your Verb』で訪れました。屋外に出ると原っぱがあり、美術館の屋上もとても気持ちがいいんです。向かい側にある展望台からは、八ヶ岳の景色を一望することができます。車を走らせればおいしいレストランもあるので、東京からの小旅行にも。クリーンなジルサンダーの服で訪れたいです」
photo:Haruki Kodama
DATA 郷土芸術、現代美術、建築、デザインまで、地域活性化を目指しさまざまな企画展を行う美術館。近隣の宿泊施設やセミナーハウスと連携し、アーティスト・イン・レジデンスも実施している。
●長野県南佐久郡小海町豊里5918の2 0267-93-2133https://www.koumi-museum.com/
おひるねハウス/南川祐輝
白坂由里さん/アートライター
「島全体が美術館といえる佐久島。さまざまな地域の芸術祭に足を運びますが、ここでは半日から1日でのんびりとアート巡りをすることができます。数ある作品の中でも特におすすめなのは、建築家の南川祐輝さんが設計した《おひるねハウス》。作品の中から穏やかな海を眺めることができます」。着用したいのは、アートとファッションの領域で活動するspoken words projectの服。「2022年には参加者の服をリメイクするワークショップを行なっており、私もまとって出かけたいです」
DETA 愛知県西尾市の一色港から船に乗り、約20分で到着。ノスタルジックな家屋が立ち並ぶ町には、古民家を丸ごと作品化した平田五郎の《大葉邸》や、森の中に溶け込む青木野枝の鉄の彫刻《空の水—山》などが点在する。
●愛知県西尾市一色町佐久島 0563-72-9607https://sakushima.com/
小倉倫乃さん/エディター Instagram: @michino_saito_ogura 「開館してすぐに訪れたのですが、敷地の中に白く巨大でミニマルな美術館が現れるんです。その瞬間だけでも忘れ難い記憶。それぞれの展示室の広さも印象的で、特にマルク・シャガールによるバレエ『アレコ』の舞台背景画を展示するアレコホールは、縦・横21m、高さ19mの大空間。背景画をバックに演劇やダンスプログラムが開催されることも。奈良美智氏の立体作品《あおもり犬》ものびのびと展示されていて、眺めているだけで大らかな気持ちに。ヘド・メイナーのビッグシルエットジャケットなど、ボリュームのある装いで訪れたら、心も体も包み込んでくれそうです」
マルク・シャガール バレエ『アレコ』のための背景画(右)第1幕《月光のアレコとゼンフィラ》、(左)第2幕《カーニヴァル》、1942年 ©️ ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2023, Chagall(R) E5100
DATA 日本最大級の縄文遺跡「三内丸山遺跡」と隣接する地に、2006年に開館。建築家の青木淳が、遺跡から着想を得てデザインした。発掘現場の"壕"をイメージした凹凸を施し、青森県産の土も多く使用。菊地敦己デザインのロゴにも注目して。
●青森県青森市安田字近野185 017-783-3000https://www.aomori-museum.jp/
クロード・モネ室 写真:畠山直哉
飯島朋子さん/スタイリスト Instagram: @iijiytomokoiijima
パリのオルセー美術館で、クロード・モネの作品を見た体験が深く思い出に残っていると話す飯島さん。日本で体験するならと、地中美術館をリコメンド。「仕事柄、海外から来るアーティストやモデルとコミュニケーションする機会があるのですが、必ず地中美術館とモネの庭に行ってみたいと話すんです。それぐらい世界からも注目を集めている場所。美術館に併設する『地中の庭』は、モネが造園したジヴェルニーの庭にある豊かな植物を、ここ日本で楽しむことができます。訪れるなら、自然と同化するようなアースカラー、グリーンをまといたい。今年なら、プラダのチェックのコートがぴったりかな」
クロード・モネ「睡蓮の池」c. 1915-26 写真:森川 昇
DATA 直島の南側に佇む。大半が地下に埋設された建物は、建築家の安藤忠雄による設計。クロード・モネの《睡蓮》をはじめ、ジェームズ・タレルやウォルター・デ・マリアの作品が恒久設置されている。完全予約制。
●香川県香川郡直島町3449の1https://benesse-artsite.jp/ (予約のお問い合わせはホームページから)
写真:鈴木研一
石田 潤さん/編集者 Instagram: @junishida29 国内外の重要なアートスポットを熟知する石田潤さん。彼女がおすすめするのは、瀬戸内海に位置する豊島美術館だ。美しい棚田を抜けた小高い丘に、丸い建物が現れる。「西沢立衛さんの建築と内藤礼さんのアートが一体化した美術館です。季節やその日の天候、時間帯によって異なる体験を得ることができます」。展示されているのは、内藤礼が制作した《母型(ぼけい)》という繊細な作品のみ。「島の中にある美術館なので、アクティブかつ乳白色の空間に溶け込むような装いで訪れたいですね」
内藤 礼「母型」2010年 写真:森川 昇
DATA 周囲の風、音、光を内部に直接取り込む空間。内部では1日を通して「泉」が誕生する。内藤礼の作品を、時間の移り変わりと共に体感することができる。完全予約制。
●香川県小豆郡土庄町豊島唐櫃607https://benesse-artsite.jp/ (予約のお問い合わせはホームページから)