新生【バリー】が着たい! 今欲しいアイテムを厳選

1851年に創業したバリーを新たにデザインするのは、グッチなどで経験を積んだシモーネ・ベロッティだ。モダンかつリアリティのあるアイテムの数々は、モードラバーの「欲しい!」を刺激する。独占インタビューとともに魅力に迫る。

アイコニックな "赤"をキーカラーに

バリー 赤のジャケット
コート¥614,900・トップス¥33,000・スカート¥110,000・キャップ¥42,900・ブーツ¥206,800/バリー・ジャパン カスタマーサービス(バリー)

「スイスとバリーを象徴する"赤"。今季の着想源となったユートピアコミュニティ、モンテ・ヴェリタで大切にされていた"太陽"の色でもあります。彼らは陽光が燦々と降り注ぐ中、日光浴やダンスを楽しんでいました。コレクションでは、黄色やパープルなど移り変わる光の色をアイテムに落とし込んでいます」(シモーネ・以下同)。視線を集めるフレッシュなミニ丈。ベースボールキャップとの合わせにもユースなムードが感じられる。

シモーネ・ベロッティにインタビュー

シモーネ・ベロッティ

❝ "スイスのブランド"という領域から新しいものを生み出したい ❞

バリーの新クリエイティブ・ディレクター、シモーネ・ベロッティによる2024年春夏デビューコレクション。第一印象は「バリーにスイスが戻ってきた!」。スイス発祥のブランドとしてのバリーを強く打ち出すコレクションだった。

〝新生バリー〟のショーの冒頭には、丈の長いボクシージャケットや、身幅と袖が太いシャツとレイヤーのタイトスカートなど、学生の制服や仕事着のスーツを彷彿とさせるルックが登場。一見、野暮ったさとの境界線ギリギリだが、それは計算されたバランスであり、実用的。じわじわと愛着が湧いてきそうだ。素朴な音色を奏でるカウベルのチャームつきバッグや靴、小花を挿せるネックレスやベルトなど、ディテールにもスイスらしいモチーフが見える。

バリーの製作風景
職人技が光る靴の製作風景

「まずスイスをさまざまな視点から捉えることから、製作をスタートしました」というシモーネ。「スイスといえば、精密な時計、銀行、時間に正確で几帳面な国民性などを思い浮かべますよね。ただほかにも大自然、革新的なアートなど、合理主義ではくくることのできない多くの魅力があります。バリーのデザインでは、ブランドの歴史やオリジンを尊重し、〝クラシコ〟を意識しながらも、一般的なこの国への認識とは異なる新たな面をコンテンポラリーな方法で表現していきたい」

バリーのミニ丈ボトムス
ブラックのジャケットから、花のようにドレープを寄せたミニ丈のボトムスをのぞかせて

今回、特にフィーチャーしたのは、「モンテ・ヴェリタ」。20世紀初頭に、スイス・アスコーナの地に生まれた、知識人やクリエーターが集うユートピアのようなコミュニティだ。都市の重圧を否定し、ヴィーガン、ヌーディズム、太陽セラピーなどの自然環境と全身で交わる自由主義的なアプローチを通じて、文学、ダンス、絵画、パフォーマンスなどの分野にムーブメントを引き起こした。

バリー イエローのカーフレザーのドレス
イエローのカーフレザーのドレス。「バックスタイルは背中が大胆に開いていて、フロントとの対比で二面性を表現。スイスにも、人にもレイヤーがあるから」

「実は以前から興味を抱いていたんです。5年ほど前、ローマの古書店で偶然写真を見つけ、太陽の下で生き生きとした表情を浮かべる女性たちの写真に魅せられて。同時に、現代にも通じる思想が存在していたことに驚きました。『モンテ・ヴェリタ』は、一般的な認知度は低いですが、作家のヘルマン・ヘッセや画家のパウル・クレーなども滞在していた、国際的なコミュニティです。今のポストに就任してすぐ『モンテ・ヴェリタ』をテーマに決めました」

バリー トートバッグ
「モンテ・ヴェリタ」モチーフのトートバッグ。カウベルを添えて

コレクションには現代的に改良を加えて復刻したアーカイブスピースも登場。

「ブランド発祥の地、スイス北部シェーネンヴェルトにあるアーカイブスには、バリーの靴以外にも2000年前のエジプトのサンダルなどを含む、靴の歴史が俯瞰できるコレクションも揃っています。そこでは背景にある文化をも感じ取ることができるんです。ブランド誕生から170年以上の歴史とクラフツマンシップを背景に仕事ができることは素晴らしい環境。スイスの手仕事は、ひと言で言うと〝完璧〟なんです。ステッチの正確さなどにスイスの職人気質が表れています」

バリー ネックレス
花を挿せる、メタルを編んだネックレスやベルトはキラーアイテム。「ショーを見た人からたくさん反響がありました(笑)」

数々のブランドでキャリアを積んできたシモーネだが、一体いつからファッションに興味を持つように?

「子どもの頃から身につけるものの好き嫌いがはっきりしていました。クレーターがくっきり見える月がプリントされたTシャツがお気に入りで、脱ぎたくなかったのを覚えています(笑)。初めて本当のファッションに触れたのは、思春期。エレクトロニックやシカゴハウスに夢中で、イタリア中のクラブに通いつめていたのですが、そこはヴィヴィアン・ウエストウッドやジャンポール・ゴルチエを着た人々であふれていて、感動しました」。今回のショー音楽は、その頃イビサ島などで活躍していたDJのレオ・マスに依頼し「本人に会ったときには感激した!」と語る。カルチャーへの造詣も深いシモーネの次の発表も待ち望まれる。

シモーネ・ベロッティプロフィール画像
シモーネ・ベロッティ

バリーのクリエイティブ・ディレクター。2023年9月、ミラノでデビューコレクションを発表。A.F. ヴァンデヴォルストを皮切りにジャンフランコ・フェレ、ボッテガ・ヴェネタ、ドルチェ&ガッバーナなどを経てグッチ。16年もの長きにわたりデザイナーを務め、メンズウェア、スペシャルプロジェクトなどのデザインを手がけた。好きなものはHiFiオーディオと古着。日本好きで、30回以上訪れている。

私たちの"買わねバリー"

早くもウィッシュリスト入りな名品を厳選! シモーネの言葉とともに紹介する。

ボクシージャケット

ボクシージャケット
ジャケット¥299,200・シャツ¥82,500・スカート¥102,300/バリー・ジャパン カスタマーサービス(バリー)

「テーラリングの技術を駆使した、ソフトなジャケット。硬くない構造なので、フォーマルなシーンだけではなく、リラックスして着られるんです」。ファーストルックとして登場した、80年代調のボクシーなシングルジャケット。シャツを重ねて少し野暮ったいくらいのバランスが今の気分。日常的に纏いたい。

「バリーリーナ」シューズ

「バリーリーナ」シューズ
靴〈ヒール0.5㎝〉¥167,200/バリー・ジャパン カスタマーサービス(バリー)

バレエシューズを再解釈したモデル「Ballyrina」。「戦争の影が忍び寄り、ダンスシューズの輸入が難しくなった時期に、自社で製造を始めたのがオリジン。当時の箱に描かれたバレリーナの絵を、ソールなどに配しています」。縁取るようにスタッズをあしらい、サイドにはピンとカウベルのチャームを。歩くたびにやわらかな音色が鳴る。

「オーラム」バッグ

「オーラム」バッグ
バッグ〈H18×W27×D8〉¥316,800/バリー・ジャパン カスタマーサービス(バリー)

スコットランド・ゲール語で"教授"を意味する名を冠する「ollam」バッグ。その名の通り知的で端正なムードに惹かれる。「特徴は留め金。バリーのオリジンであるリボンをメタルでプレシャスに表現しました。ほかにもブリーフケースなどの仕事用の真面目なバッグを、リサイズしたり野いちご柄にしたものもあるんです」。

「プルーム」シューズ

  「プルーム」シューズ
靴〈ヒール1㎝〉¥149,600・デニム¥77,000/バリー・ジャパン カスタマーサービス(バリー)

シモーネ自身も日頃から愛用する「Plume」。「デッキシューズとローファーを融合させたようなモデル。バッファローレザーをリバースド・グッドイヤー製法で、軽く柔らかく仕上げています」。アッパーのステッチワークは美しく、ソールは歩きやすさも抜群。ウィメンズ・メンズともに展開されるエターナルな一足だ。

カウベルチャーム

カウベルチャーム
チャーム(参考色)¥39,600・ドレス¥486,200/バリー・ジャパン カスタマーサービス(バリー)

ランウェイで目を引いたのはチャームの数々。中でも"幸運のモチーフ"として知られるカウベルは印象的だ。「スイスの山を思わせるカウベルは、音も魅力ですよね。ショーでも素朴な音色を奏でていました」。中のベルにはブランド名や鹿の絵の刻印が。ほかにも、バッグやネックレスなどさまざまに形を変えて反復された。

クラシカルなイメージを軽やかに裏切る

新生【バリー】が着たい! 今欲しいアイテの画像_13
シャツ¥82,500・スカート¥158,400・靴¥215,600/バリー・ジャパン カスタマーサービス(バリー)

❝ 職人の仕事は、とても人間らしいと思います ❞ ――Simone Bellotti

シャツは身幅が広くスリーブもやや長めの設計。対してタイトなスカートは生地を何層か重ね、優美なドレープを形成する。メンズライクなムードを宿したスタイルは、新生バリーに惹かれる理由のひとつ。さらに特筆すべきは「スクリーブ」シューズ。「1951年に誕生し、100周年に復刻した象徴的なモデル。名称はバリー家が定宿としていたホテルの名前が由来。製造には230もの工程があり、爪先のつや出しなど、伝統的な職人の手仕事が不可欠です」。

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