2024年2月24日(現地時間)、ミラノでボッテガ・ヴェネタの2024-25年秋冬コレクションが発表された。
クリエイティブ・ディレクターのマチュー・ブレイジーにとって、5シーズン目となる今季。前シーズンに続き、時間や旅に着想を得たクリエーションの出発点は、夜の帳が下りる荒れ地ということで、ショー会場には、“焼きつくされた”不毛な風景が広がっていた。
ボッテガ・ヴェネタ 2024-25年秋冬コレクション ショー会場の様子
ゲスト用の椅子として使われた「LC14 カバノン スツール」スペシャルエディション
ムラーノガラス製のサボテンのオブジェ
ボッテガ・ヴェネタ 2024-25年秋冬コレクション ショー会場の様子
ゲスト用の椅子として使われた「LC14 カバノン スツール」スペシャルエディション
ムラーノガラス製のサボテンのオブジェ
不毛とは言っても、その舞台は丹精込めて作られた実にスペシャルな空間。日本の伝統的な技法にインスパイアされた焼き目が特徴のスツールは、カッシーナの「LC14 カバノン スツール」(ル・コルビュジエ作)のスペシャルエディションで、フロアパネルにも同じ加工が施されていた。また、会場に点々と設置された大型の花付きサボテンのオブジェは、ムラーノ島にてハンドメイドで制作されたガラス製。サボテンは、マチューが本コレクションのアイデアを練るために訪れたイタリア南部・カラブリア州でよく見られる植物だ。なおこの地方には、かつてマチューがSPURのインタビュー でも語っていた人魚にまつわる伝承も残っており、彼をインスパイアする土地なのかもしれない。 焼き板とガラス製サボテンの共通点、それは共に火の力によって個性、そして耐久性を獲得していること。再生の旅はここから始まる。
この時代のエレガンスを考えるにあたり重要なキーワードとなったのは、過酷な環境でも花をつけるサボテンが象徴する「希望」と「レジリエンス(再生)」、そして「シンプリシティ」、「誠実さ」。 マチューは「現実的かつ実用的で、目的をもったものが持つ魅力と自信」に着目し、イントレチャートがアイコンとなる以前のボッテガ・ヴェネタのルーツを探求した結果、手触りや感覚といった贅沢さはそのままに、意図的なシンプルさへと辿り着いた。その一例となるのが、ファーストルックで発表されたピーコート。
アウトラインに丸みをもたせたシルエットは、私たちのよく知るピーコートとは似ているようでどこか違っている。夜の世界から新たな場所へと行き着くために、単純化されたシルエットは形やカットを変容させる必要がある、との考えによるものらしい。 コレクション全体のカラーパレットにもストーリーが。夜を思わせるダークカラーから始まり、光をイメージさせるライトなカラーを時折差し込みつつ、未来に向かうにつれ色が増えていく流れになっている。
今回のコレクションをミラノで現地取材したエディターが、特に気になったルックを発表!
LOOK 8
生地を寄せてストーンのパーツで留めた技ありドレスは、カラーの切り替えも含め、アーティスティックな印象。他にもいくつか発表されたトゥの尖った靴は、未来を切り拓くイメージだそう。
LOOK 19
細いレザーを編み込み、ブランドアイコンであるイントレチャートを応用したコートはまるでアートピースのよう。
LOOK 35
日付のスタンプ柄が全面にあしらわれたシャツ&スカートのルック。「過去の旅がその人を作る」というコンセプトを体現している。
LOOK 39
時折挟まれるイエローは、光が差し込むイメージとのことで、新たな旅の始まりを感じさせる。変形プリーツは、動いた時の表情も面白い。
LOOK 40
旅のイメージにぴったりなトレンチコート。中に仕込んだ赤いシャツ、オレンジのイントレチャートグローブなど、粋なスタイリング。メモ帳の罫線のようなチェック柄も可愛い。
LOOK 48
手の込んだニットドレス自体も素敵ながら、合わせているカラフルなバッグにも注目。イントレチャートをあえてフリンジ状にしているデザインがとても可愛かった。
LOOK 56
オーバーサイズニット×スエードスカートの、リアルに真似したいスタイリング。モスグリーンは今季のミラノで登場率が高かったカラー。
LOOK 61
一見、抽象的な柄に見えるものの、実は大きな花のプリント! 花は炎、蛇と並んで今シーズン多用されている、復活と再生を象徴するモチーフ。
LOOK 63
ドラマティックなシルエットがインパクト満点のルック。ケープは上品な淑女の旅スタイルをイメージしているのかも?
LOOK 71
生地から糸をほどいてフリンジ状の装飾に落とし込んだ、技巧が光るドレス。職人技が詰め込まれていながら、軽やかな素材感と淡いカラーリングで心地よさそうに見えるのもポイント。
LOOK 8
生地を寄せてストーンのパーツで留めた技ありドレスは、カラーの切り替えも含め、アーティスティックな印象。他にもいくつか発表されたトゥの尖った靴は、未来を切り拓くイメージだそう。
LOOK 19
細いレザーを編み込み、ブランドアイコンであるイントレチャートを応用したコートはまるでアートピースのよう。
LOOK 35
日付のスタンプ柄が全面にあしらわれたシャツ&スカートのルック。「過去の旅がその人を作る」というコンセプトを体現している。
LOOK 39
時折挟まれるイエローは、光が差し込むイメージとのことで、新たな旅の始まりを感じさせる。変形プリーツは、動いた時の表情も面白い。
LOOK 40
旅のイメージにぴったりなトレンチコート。中に仕込んだ赤いシャツ、オレンジのイントレチャートグローブなど、粋なスタイリング。メモ帳の罫線のようなチェック柄も可愛い。
LOOK 48
手の込んだニットドレス自体も素敵ながら、合わせているカラフルなバッグにも注目。イントレチャートをあえてフリンジ状にしているデザインがとても可愛かった。
LOOK 56
オーバーサイズニット×スエードスカートの、リアルに真似したいスタイリング。モスグリーンは今季のミラノで登場率が高かったカラー。
LOOK 61
一見、抽象的な柄に見えるものの、実は大きな花のプリント! 花は炎、蛇と並んで今シーズン多用されている、復活と再生を象徴するモチーフ。
LOOK 63
ドラマティックなシルエットがインパクト満点のルック。ケープは上品な淑女の旅スタイルをイメージしているのかも?
LOOK 71
生地から糸をほどいてフリンジ状の装飾に落とし込んだ、技巧が光るドレス。職人技が詰め込まれていながら、軽やかな素材感と淡いカラーリングで心地よさそうに見えるのもポイント。
ミラノ・ファッションウィークのハイライトのひとつであるだけに、ボッテガ・ヴェネタのショーには世界中から豪華なセレブリティが来場。日本からは、俳優の蒼井優さんも駆けつけた。
ショーをじっくり堪能しつつ、サボテンのオブジェを「可愛い!」と気に入り、一緒に記念撮影するチャーミングな姿も。
この日、蒼井さんが着用したのは、ウールツイルのハイネックトップス&プリーツパンツ。マチューによるボッテガ・ヴェネタの象徴ともいえる「カリメロ」シリーズの新作バッグ「チッタ」は、リズミカルなイントレチャートが美しい。オールブラックのスタイルに、エンボスで施されたストライプ柄が特徴の「ストーム パンプス」のビビッドなオレンジがアクセントになっている。
蒼井さんが気になったルックは?
LOOK 1
まず「リアルに欲しい!」とコメントしていたのが、この日の蒼井さんの装いともリンクするような、ブラックを基調としたファーストルック。
オールブラックでシックでありつつ、丸みを帯びたシルエットやフレアパンツの裾の動きで魅せ、デイリーウェアとしてまとめるバランスが見事。
LOOK 17
蒼井さんがショーを見ている最中からチェックしていたルック。ニットからのぞくファーの襟とカフにもすぐに気づき、スタッフに「ふわふわのファーなんだよ? 気づいた!?」と教えてくれた。 目の詰まったニット×プリーツパンツというベーシックなスタイリングながら、パワーショルダーシルエット、襟とカフのディテール、パンツにタックインするスタイリングが秀逸。
LOOK 7
アウターが気になると話していた蒼井さんは、ライトブルーの立体感のある素材のコートも気に入っていた様子。
今シーズン発表されたコート類はどれも丸みを帯びたシルエットで、「包み込む」、「守る」といったデイリーウェアの機能が表現されている。
演出や音楽も含め、最新コレクションのムードをいち早く感じられるランウェイショーに対し、Re-Seeは発表されたばかりのコレクションピースを実際に手に取ってじっくりと見られる場。ドラマティックなルックや美しいシルエットのアイテムを形にするために欠かせない職人技、ショーで肉眼では確認しにくいアクセサリーのディテールなどをつぶさに観察しながらメモを取る。
ショー翌日、同会場で開催されたボッテガ・ヴェネタのRe-Seeを訪れたSPURエディターの取材メモを特別に公開!
ボックススツールを積み重ねて什器として活用
会場の一角。グリーンの花器とプロテアは、サボテンのオブジェを彷彿とさせる
ボッテガ・ヴェネタ、カッシーナ、ル・コルビュジエのトリプル刻印が施されている
ボックススツールを積み重ねて什器として活用
会場の一角。グリーンの花器とプロテアは、サボテンのオブジェを彷彿とさせる
ボッテガ・ヴェネタ、カッシーナ、ル・コルビュジエのトリプル刻印が施されている
「LC14 カバノン スツール」とは、ウィスキーのケースを生まれ変わらせた、ル・コルビュジエの手による名作スツール。ボッテガ・ヴェネタがショーでカッシーナのチェアを採用するのは3度目となるが、このスツール自体、実用的な道具がタイムレスな名品となったひとつの例とも言える。 ショーのために製作されたスペシャルエディションに施された焼き目は、木目を際立たせることでそれぞれのスツールを唯一無二のものにすると同時に、木材を保護する効果も。 2024年4月に開催されるミラノデザインウィークにて、このスツールを展示する特別なインスタレーションも予定されている。
クラフツマンシップやユニークなアイデアを間近で堪能
惜しくもベストルックからは漏れたものの、ブランドが得意とするレザーワークを駆使したスカートルック。トップスをニットにすることでデイリーウェアの枠に収めるバランス感も見事
レザースカートのディテール。曲線にカットしたレザーは、まるでフェザーのように軽やか!
ベストルックで紹介したLOOK 19のコートのディテール。これぞ職人技!
同じく、ベストルックで紹介したLOOK 71のドレスの装飾部分
LOOK 35でも取り入れられていた、幾重にも重なる日付スタンプ柄。旅や積み重なる時間をイメージさせる
蒼井さんも目を奪われた、LOOK 17で登場したファーつきのパワーショルダーニット。デイリーウェアとは切り離せないレイヤリングもテーマのひとつ
惜しくもベストルックからは漏れたものの、ブランドが得意とするレザーワークを駆使したスカートルック。トップスをニットにすることでデイリーウェアの枠に収めるバランス感も見事
レザースカートのディテール。曲線にカットしたレザーは、まるでフェザーのように軽やか!
ベストルックで紹介したLOOK 19のコートのディテール。これぞ職人技!
同じく、ベストルックで紹介したLOOK 71のドレスの装飾部分
LOOK 35でも取り入れられていた、幾重にも重なる日付スタンプ柄。旅や積み重なる時間をイメージさせる
蒼井さんも目を奪われた、LOOK 17で登場したファーつきのパワーショルダーニット。デイリーウェアとは切り離せないレイヤリングもテーマのひとつ
Re-Seeはショーでの興奮が醒めやらぬタイミングで、発表されたばかりの新作を実際に手に取り、袖を通すこともできる貴重な機会。コレクションのコンセプトが個々のアイテムにどのように落とし込まれているかを取材したり、使われた素材や技法について詳しく知ったりすることもできる。ここでの再会により、時にはコレクションやアイテムへのイメージがガラリと変わることも。
ショルダーストラップが長めのデザインなので、写真のように結び目を作っても可愛い
上品なライトグレーは、デイリーウェアにもよく馴染みそう
ショルダーストラップが長めのデザインなので、写真のように結び目を作っても可愛い
上品なライトグレーは、デイリーウェアにもよく馴染みそう
ボッテガ・ヴェネタにとって、バッグはブランドのDNAとも言えるアイテムであり続けてきた。今シーズンの新作として誕生した「リベルタ」は、その名の通り「自由」を表すバッグ。レザーコード×メタルパーツのクロージャーがアクセントになった軽やかなショルダーバッグで、ランウェイではモデルたちがクラッチのように携えていた。
燃え盛る炎のような配色をイントレチャートで表現!
鎧をまとったかのようにパワフルな進化を遂げた「サーディン」
こちらはマルチカラードットのストーンでカラフルにおめかし
燃え盛る炎のような配色をイントレチャートで表現!
鎧をまとったかのようにパワフルな進化を遂げた「サーディン」
こちらはマルチカラードットのストーンでカラフルにおめかし
LOOK 63 でモデルが携えているのは、魚の形をしたクラッチバッグ! 他にも、彫刻のような流線型のメタルハンドルがユニークなショルダーバッグ「サーディン」にも、“新種”が仲間入りしている。なお、サーディンのハンドルはひとつひとつがハンドメイドなのだとか。
蛇をモチーフにしたエナメルアクセサリー
LOOK 63でドレスに合わせて提案されていた、ムラーノガラスとシルバーを組み合わせたネックレス
ダルメシアンジャスパーやセラミックを用いたブローチ。リングやピアスもラインナップ
蛇をモチーフにしたエナメルアクセサリー
LOOK 63でドレスに合わせて提案されていた、ムラーノガラスとシルバーを組み合わせたネックレス
ダルメシアンジャスパーやセラミックを用いたブローチ。リングやピアスもラインナップ
ウェアがシンプルさを追求している分、合わせるアクセサリーがスタイリングのムードを決めるのも今季の醍醐味のひとつ。ボッテガ・ヴェネタのアクセサリーは毎シーズン、さまざまな素材やフォルムで展開しているが、古来から装飾品の素材として用いられてきたセラミックやガラス、レザー、ウッド、ラピスラズリ、ダルメシアンジャスパーなどを、自由な感性で組み合わせている。
今回のコレクションノートを、マチューはこう締めくくっている。 「私たちはみな同じニュースを見ています。今というこの時代に祝福ムードになるのは難しいでしょう。しかし、再生というアイデアはとても素晴らしいものです。これらは地球が燃え尽きた後に咲く花で、私たちに希望をもたらしてくれるのです。そして花は、これまで以上に強くなって戻ってきます。ここにエレガンスとレジリエンスがあるのです」 コンセプチュアルなテーマを、上質な素材と高度なクラフツマンシップで日常へと落とし込んだマチュー・ブレイジー。きっとボッテガ・ヴェネタのデイリーウェアやアクセサリーは、希望を胸に行くべき場所、なすべきことを持つ人々のためのもの、ということに違いない。