自分らしいと思える ファッションを探して
——今回の特集は、佐藤栞里さんがかねてより椎名直子さんのつくるスタイルが好きだった、という話から実現しました。
佐藤栞里(以下S) 女性像を想像してカメラの前に立つモデルとしてだけでなく、〝佐藤栞里〟としてメディアに出ていく機会が増えて。そのときに椎名さんが手がけたスタイルを参考にさせてもらっていました。個性を活かしながらも品があって、憧れです。
椎名直子(以下N) 究極は、いつも着る人が心地よくいられるかどうかが大事だと思っているんです。今回は、モデルとしてさまざまな服を着こなしてきた栞里さんに提案できるものはなんだろうと。お会いしたときに、身長や手足の長さなど、持ち前のスタイルのよさがとても印象的でした。バランスや素肌を活かした“解放感”を思い描きました。
S 椎名さんが私のために考えてくださるだけでも幸せなのに、今回は事前の打ち合わせで、年齢を重ねて変わる服との向き合い方や、私の好きなものを話す機会があって。旅先でいつもより細いストラップのキャミソールを着たらとても解放的な気持ちになった、というお話からタンクトップの装いをつくられたと知り、うれしかったです。
N 会話からたくさんヒントをもらいました。実は栞里さんが普段からはき慣れている「デニム」も、軸となる裏テーマなんです。スタイルがあるからこそ、ベーシックなアイテムが輝きますよね。
S デニム、どれも本当に素敵でした! もともと雑誌『PINKY』でモデルを務めていたとき、私は“スウィート派”担当だったんです。でもその後、髪をバッサリ切ったことをきっかけに、テイストが変わりました。変遷があって、自分もいまのボーイッシュ・カジュアルなスタイルがしっくりきます。
N 栞里さんの伸びやかさを何かで固めることがないように意識していました。身に纏うものだから、最終的にはその人がリラックスできて快適で、楽しいことが大事です。
S モードは遠いものだと感じていたけれど、すべてが日常で着たい、欲しいという気持ちになったことも新鮮でした。
N 「これからの服」というキーワードと、心地よさ、それをモードでどう表現するかを突き詰めましたね。あと、打ち合わせのときにとても印象的だったのが「落ち込むことがあっても、なりたい自分を想像したらすぐに乗り越えられる」という栞里さんの言葉。
S わあ、ありがとうございます!
N なりたい自分を考えたら進める、ってとても素敵ですよね。若いときってそうだったなと。理想とする夢があって、そこにたどり着くために頑張っていました。ファッションにもそんな力があると思うんです。
S まさに、モードを纏う機会をつくっていただいて「私でも、ちょっと触れてもいいのかな?」と欲が出てきたんです。
N たとえばエルメスのコートは無理だなあ、と感じる20歳がいても、思い描く姿があれば少しずつ近づいていくものなのだと。栞里さんは本当に謙虚だけど輝いていて、もっと貪欲な姿も見てみたい、と思ってしまいました。
S うれしいです。遠く感じるコレクションやパリに行く、ということも心のどこかで願ってみてもいいのかも……。お客さんとしてショーを見るだけではない関わり方の模索にも興味が出てきました。
N ぜひ、ハングリー精神を世界に向けてほしいです。ファッションは「You can wear anything you like」! 突き放しているわけではなく、自分の個性ととことん向き合いながら、「好き」という気持ちを何より大事に。それを抜きにしては成り立ちませんから。
S 今回、知らなかった自分の魅力や、新たな道筋を示していただいた感じがします!