2020年の逝去からまもなく4年。夢を追い続け、モードの聖地パリでその才能を花開かせた髙田賢三の没後初の大規模な展覧会『髙田賢三 夢をかける』がこの夏開催される。彼が残したもの、そして自身のドラマティックな人生とは
TOPIC1 時代がひと巡りした今こそ 賢三の夢見る力が必要だ
アーカイブス作品、当時撮影されたビジュアルなどと併せタイムラインにそってその人物像にも迫る回顧展『夢をかける』。タイトルに込められた想いや展示の見どころについて、本展に携わった二人のキーパーソンに話を聞いた
TOPIC2 賢三が開いた初めての扉
髙田賢三は、日本人のファッションデザイナーとして初めてパリモード界に認められた存在と言っても過言ではない。常識を打ち破る、斬新なアイデアによって、革新をもたらした数々の偉業に迫る
TOPIC3 賢三が愛した色の原点
80年代初頭に起きた「黒の衝撃」にも惑うことなく、カラフルなクリエーションを貫いた「色彩の魔術師」。その呼び名のゆえんである、3つのキーワードにフォーカス
花柄
髙田がこよなく愛した花柄。シーズンテーマによって採用される花の種類や配色は変わり、またコレクションのムードを決定づける役割も果たした
コーディネート
「原色どうしの配色は僕のモードのポイント」と生前髙田は語っている。色や柄を縦横無尽に組み合わせレイヤードをきかせたコーディネートによって完成するのが「KENZO」スタイル
フォークロア
パリへ渡る船旅で寄港した街で目にしたものは、若き日の髙田に多くのインスピレーションを与えた。やがて代名詞となる「フォークロア」として花開く
TOPIC4 同時代を生きた人に聞く賢三の魅力
さまざまな立場で髙田賢三の業績を見てきた人物から、そのクリエーションと人柄の魅力を聞いた
荒波を笑顔で 乗り切る、 夢をかなえた 魔法使い
髙田賢三のアシスタントとして、約10年「KENZO」で働いたのち、パリにて独立。昨年フランスの芸術文化勲章を受章。
記憶の中の彼の一番の印象は「いつもスマイル」。少しシャイでどんなときもほほえんでいる人。その一方で、今は普通になっていることを、当時世界に先駆けて着手したチャレンジャーでもありました。難しいアイデアソースをデイリーウェアに昇華させたり、ランウェイを有名人が歩いたり、アトリエやテントでなくカフェや証券取引所でショーを行うというような取り組みは、それまでにはなかったことだと思います。クリエイターはみんなそうだと思いますが、ショーの2日前にアイデアが降ってきて急にルックが増えることになるなどワイルドなところがあり、周りはハラハラさせられたものです(笑)。ですが、当の本人は楽しんでいて大体がうまくいくんですよね。日々波瀾万丈なのに、全然そうは見えない。いつも恋をしていて、エネルギーにあふれていた人でした。彼自身は夢という言葉を大事にしていると言っていたけれど、僕は彼こそが夢を現実化した魔法使いだと思います。
日本とフランスのよいところを組み合わせ世界を魅了した
京都服飾文化研究財団理事、チーフキュレーターとして数多くの研究、展覧会企画を手がける。ファッションにおけるジャポニスム研究の第一人者。
1971年春、偶然KENZOのショーを見ました。初めて私がパリに行ったときのことです。シャンゼリゼ通りのドラッグストアが会場。中央のエスカレーターで、モデルが2階から降りてきました。そして、上りエスカレーターで消えていきます。ゆるーい、自由に服を重ねる自然体の着こなし方が、めちゃくちゃ新鮮でした。大きな衝撃を受けました。今、世界中の人が、みんなそのように服を着ています。 生まれた国・日本の伝統とパリのエスプリを巧みに交ぜ合わせた色と柄の使い方で、誰をも魅了。"ケンゾー"という日本人デザイナーは、70年代に世界で最もコピーされるスター・デザイナーでした。
反骨精神ではなくハッピーの力で革命を起こしたチャーミングな人
文化服装学院卒業後、フリーのデザイナーを経て「KEITA MARUYAMA」をスタート。ブランドは今年30周年を迎える。
僕が初めてKENZOを認識したのは、当時テレビのワイドショーで放映されていたお城でのファッションショー。お祭りみたいに踊りながらモデルが登場する楽しげな世界観に夢中になり、賢三さんに憧れてファッションデザイナーを目指しました。パリのKENZOに分厚いポートフォリオを持っていったこともあるほど、賢三さんからたくさんの影響を受けました。
ご本人はとても「今っぽい」人。多様性が叫ばれるずっと前から、ボーダーレスな感覚を持っていました。当時のファッション界はまだまだブルジョア主義。でも、モードでありながらもカジュアルで一般の人に着やすい、開かれた服を数多く作りました。服の構造もすごく特別。シンプルなパターンに見えて、誰もが似合うようにデザインされています。当時からフラットな視点を持っていて、それをラブリーに世界へ広めていった人だと思っています。
『髙田賢三 夢をかける』
会場/東京オペラシティ アートギャラリー
☎050−5541−8600(ハローダイヤル)
会期/7月6日(土)〜9月16日(月・祝)
◯開11時〜19時(最終入場時間18時30分)
㊡月曜(祝日の場合は翌火曜)、8月4日(全館休館日)














