【3.1 Phillip Lim】フィリップ・リムにインタビュー。「コミュニティを築き、喜びの瞬間を見つけること」

世界で活躍する8人の視点。デザイナーが未来に紡ぐもの

一流のモードの作り手たちは今どんなことを考えて、何を見据えているのか?クリエイティブな才能を発揮し続ける8人に、未来への希望を聞いた

世界で活躍する8人の視点。デザイナーが未来に紡ぐもの

一流のモードの作り手たちは今どんなことを考えて、何を見据えているのか?クリエイティブな才能を発揮し続ける8人に、未来への希望を聞いた

フィリップ・リムプロフィール画像
3.1 Phillip Limフィリップ・リム

1973年タイ生まれ、カリフォルニア州育ち。両親とカンボジアから移住した中国系アメリカ人。2005年にNYファッションウィークでブランドをスタートし、以後"グローバルシチズン"のための持続可能なファッションを提案している。

取材時は、ブランド設立20周年のランウェイショーの準備中だったフィリップ・リム。そのヒントに「JOY」というキーワードを教えてくれた。

「今シーズン、自分のシンプルな願いに立ち返ります。喜びこそがすべての原点。それを感じるために心をオープンにしていれば、いつでも誰にでも、あらゆるところに喜びはあるんです。永遠のミューズであり、グローバル都市であるニューヨークにインスパイアされた、特別で親密なショーを計画しています」

過去を懐かしむのではなく、前を見据えながら進化し続けてきたが、この20年間は「信じられないほど素晴らしい道のりで、一瞬一瞬が美しい経験として鮮明に浮かび上がる」と振り返る。
「特に忘れられないのは、アーティストのマヤ・リンとコラボレーションした10周年記念ショーや、バーニーズのウィンドウに私たちの最初のコレクションが並んだとき。いつまでも忘れられませんね」

服作りをする上で「誠実さ」「使命」「クラフツマンシップ」が欠かせないと話すフィリップ。自身の価値観を守りながら、現代女性に日常の喜びをもたらすものとしてブランドを続けている。そのプラットフォームと名声を使って取り組んでいるのが、AAPI(アジア・太平洋諸島系アメリカ人)コミュニティの強化だ。パンデミックで直面したアジアン・ヘイトをきっかけにその信念は深まり、SNSを通してメッセージを積極的に発信し、必要な人に食料を届けるためのプロジェクトに参加。現在は「Creating Space」と協働し、コミュニティ間のメンタルヘルスに尽力している。加えて、アジア系のコラボレーターやショーのスタッフ、モデルを多く起用するなどで、自身のクリエーション内外でコミュニティの輪を広げている。

「ファッションの未来がいつまでも活気にあふれ、新進気鋭の才能が育つような土壌作りが私のデザイナーとしての課題だと考えています。これまでの経験を活かして、じっくりと時間をかけたい。自分の直感を信じてコミュニティを築くこと、何よりも喜びの瞬間を見つけて大切にすることを学びました」

現在、プライベートライフに喜びをもたらしているのはインテリアデザイン。これまでSPURでも、マンハッタンやハンプトンの自宅を訪問し、日常の暮らしに対する彼の愛情をシェアしてきた。
「アートやインテリアがずっと好きでしたが、今度は自宅をリノベーション中です。ウッドパネルや再利用されたドアノブの一つひとつにストーリーがあるんですよ。私のハッピープレイス改修の旅は、Instagram(@therealphilliplim)でぜひチェックを!」

最後に今後ファッションデザイナーを目指す人へ、 力強いメッセージを送る。
「決して焦らず、時間をかけて腕を磨き、周囲の雑音をかき消すことが大事です。目標は長期的なものであるべきで、新しさを求めることや、トレンドを追うことではありません」

【3.1 Phillip Lim】フィリの画像_1

1948年に建てられた家を、自身のハッピープレイスへと改装中

【3.1 Phillip Lim】フィリの画像_2

今年3月、LAで開催された「Creating Space」のイベントに登壇。AAPIコミュニティ間でメンタルヘルスのオープンな対話を促す重要性を伝えた

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