【SETCHU(セッチュウ)】桑田悟史さんインタビュー。「境界を越えて伝統をつなぐためのチームワーク」

世界で活躍する8人の視点。デザイナーが未来に紡ぐもの

一流のモードの作り手たちは今どんなことを考えて、何を見据えているのか? クリエイティブな才能を発揮し続ける8人に、未来への希望を聞いた。ここではSETCHU(セッチュウ)のデザイナー、桑田悟史さんのインタビューをお届け。

世界で活躍する8人の視点。デザイナーが未来に紡ぐもの

一流のモードの作り手たちは今どんなことを考えて、何を見据えているのか? クリエイティブな才能を発揮し続ける8人に、未来への希望を聞いた。ここではSETCHU(セッチュウ)のデザイナー、桑田悟史さんのインタビューをお届け。

桑田悟史プロフィール画像
SETCHU桑田悟史

京都出身。高校卒業後ビームスに勤め、21歳で渡英。老舗テーラーのハンツマンに勤務しながらセントラル・セント・マーチンズで学ぶ。ガレス・ピュー、ジバンシィ、イードゥンでキャリアを積み、2021年春夏にミラノでSETCHUを開始。

「未来へつないでいきたいものの一つは伝統です。伝統に境界はないと思っています」とSETCHUのデザイナー、桑田悟史は語る。ミラノを拠点にロンドンのサヴィル・ロウで身につけたテーラリングを用いて行うその服作りには、越境しながら技術や伝統に深い関心を示す開かれた目がある。

「いいものを作るとなると、やはり技術が不可欠。でも行きすぎた資本主義社会の中ではそれがどんどん失われています。サヴィル・ロウの技術だって10年後にはなくなっているかもしれない。そうならないよう僕たち作り手が責任を持って技術や品質を守り、作っていくことが必要です。でもそれは僕だけでできることではありません。SETCHUはブランド全体を一人で牽引していくのではなく、チームで運営しています。僕はデザインだけでなく、パターンも製図もやっているから職人に近い。自分や職人を含めてブランド全体で、技術を守りつついいものを作っていきたい」

日本の文化を伝える一人になるために、日本人である自分が架け橋となって、ボーダーレスにさまざまな文化を融合させたもの作りを目指す。だからブランド名はSETCHU(折衷)としているし、その折衷文化を周囲の人々とともに育みたいという。そのために大切にしているのがチームワークだ。

「1+1が100になるのがチームでもの作りをする面白さ。人と人とをつないで巻き込みもの作りを進めるには、はっきりとした軸が必要で、それを作って示すのが僕の役目です。集団の中でビジョンを伝え、それに向かってみんなで知恵を絞り、アイデアを出し合う。最後にいいものができたときの達成感は格別です」

やりたいことが無数にあり、未来を長いスパンで見ている。すでに始めているのが、SETCHUをライフスタイルブランドへと拡張すること。衣だけでなく、食や住の面でも伝統や文化を融合させていきたいという。

「原料からすべてを作りたいという気持ちもあります。広い土地を所有して、糸になる植物を育てたり、動物を飼育したりして、生き物の生死にも寄り添いながら生活し、もの作りをする。その生活空間すべてがSETCHUのもので構成されているというのは理想ではあります。僕は釣りが好きで、よくアフリカなど自然豊かな土地に足を運びますが、奥地に行くほど自然が濃くて、都市部に戻ってくると薄い。その光景を目のあたりにすると、この素晴らしい自然をどう未来へ残せばいいのかと考えてしまいます。SETCHUではすべてをサステイナブルにすることはまだ実現できていませんが、紙の糸やサトウキビの搾りかすでできた糸を使うなど、できる範囲での努力を続けています」

代表的な「折り紙ジャケット」もイメージソースの一つは旅。だからブランドを発展させるためにももっと旅に、できれば局地に行きたいと語る。明日にはガボンや南インドの海で釣り糸を垂らしながら、次世代へつなぐもの作りのヒントを探っているかもしれない。

【SETCHU(セッチュウ)】桑田悟史さの画像_1

コレクションは、銀座・和光 本店地階に今夏できたアーツアンドカルチャースペースに最も揃う。美しく折り畳めるジャケットの生地は、イタリアのフィルクーペジャカード。西陣織よりさらに繊細で世界で数カ所でしか作れない

【SETCHU(セッチュウ)】桑田悟史さの画像_2

職人もチームの一員。今年4月には、ベネチアでのイベントで使用するオリジナルろうそくの作成のため、京都の和ろうそく職人から独特な芯の切り方などのレクチャーを受けた

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