肩の力が抜けた可愛らしさと色気を持ち合わせる人、永作博美。いくつになっても自然体な魅力で周囲を魅きつけてやまない彼女こそ、SPURが考える「いい大人」。素肌に心地よい上質な一着をまとって豊かな気持ちで時間を過ごす、そんな女性の物語を紡ぐ
肩の力が抜けた可愛らしさと色気を持ち合わせる人、永作博美。いくつになっても自然体な魅力で周囲を魅きつけてやまない彼女こそ、SPURが考える「いい大人」。素肌に心地よい上質な一着をまとって豊かな気持ちで時間を過ごす、そんな女性の物語を紡ぐ
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1994年ドラマ「陽のあたる場所」で俳優デビュー。映画『八日目の蟬』(’11)で日本アカデミー賞最優秀助演女優賞を受賞した。近年の出演作に映画『朝が来る』(’20)、連続テレビ小説「舞いあがれ!」、舞台「月とシネマ2023」など。NHKの「バニラな毎日」(月曜日から木曜日、22時45分より放映)に出演中。
【インタビュー】情熱を絶やさず、他者の声にも耳を傾ける
「今日の撮影は、自由なムードの服が多くて、すごく楽しかったです。着こなし方が決まっていないから、個性をいくらでも出せる。なるほど、〝大人っぽい〟とはこういうことかな、と思いながら着ていました」。撮影を終えた永作博美さんは、リラックスした私服のスウェットに着替えてそう語った。
「最初にスタッフの皆さんから今日の撮影のイメージを伝えられたとき、『あとは私がどうやって遊べるかだな』と。みんなで試行錯誤して、提案し合って、どんどん変化していったのが面白かった」
撮影中、素肌や体の見せ方についてスタッフ同士が突き詰めていき、袋小路に入ったように先に進まない時間が生まれた。そのとき永作さんがふとしてみせたポーズが、現場に風を起こした。「空気が止まってしまうことがいちばんつまらない。そんなときは自分から小石を投げ込むようにして、場を動かしたくなります」といたずらっぽく笑う。
「素肌はスタイルを絵としてとらえたときの〝白地〟の部分だと考えています。空間の余白であり、ブランクの部分。息苦しさを感じたとき、ちょっと抜けをつくってくれる。多い少ない、どちらかがいい、ではなくて、全体としての美しいバランスを探した上での〝肌見せ〟なのだと思います。上質なものこそ、近寄りすぎては魅力がわからなくなるところがある。少し引いた視点は、間違いなく年を重ねることで手に入れたものの一つでしょうね」。視点の自在さが、心の自由さが、永作さんを常にみずみずしい表現へと向かわせる。「私にとって、変化は喜びです」と、きっぱりと言った。
「若い頃のほうが着こなしの幅は狭かったように思います。まだ心から自由であることを楽しめなかったというか。たとえば、好きな格好をしていて男の人から『変だ』と言われたこともありますよ。私は昔からユニセックスなスタイルのほうが気分がいいし、自分の内面が自由な感じがする。けれど多分、他人——特に異性は、私のこの風貌を生かして〝女性らしく、可愛く〟あってほしかったみたい。今はもう着たいものを着るようになりました。否定の言葉に寂しい気持ちになったとしても『私はこれが好きだし』と、相手とは戦わず自分への愛に変えて(笑)。向かい風は軽やかに、シュシュッて避けながら自分を守る。これも大人になって身につけた術。曲げたくないことはもちろん曲げないほうがいい。でも、自分が貫く部分をきちんと人に伝えられた上で、人のやりたいことの意味もくめる人でありたい。大人とは、人の話を正しく聞けるっていうことかもしれません 」。今回のシューティングの最中、スタッフたちの声に誰よりも耳を澄ませ、柔軟に対応していたのも永作さんだった。
これまで「大人可愛い」「可愛い大人」と、数えきれないほど言われてきた永作さん。彼女が考える大人の可愛さについて聞くと、こんな答えが返ってきた。
「がむしゃらさ、情熱だと思います。本気な大人って最高に可愛い。その場を真剣に楽しもうとする姿が愛しい。年を重ねて、私はより純粋に物事を見るようになった気がします。背伸びした見方をしたいときもあったけれど、あの頃はまだまだ若かった(笑)。言いたいことを言えるようになってきて、仲間もできて。そうなって再び純粋に向き合うことの喜びに気づく。それが楽しいんです。『大人こそ、改めて純粋であれ』と思いますよ」
そう言って、花が咲くように笑った。