
ドレス¥275,000・パンツ¥71,500・ブーツ¥132,000/コム デ ギャルソン(ジュンヤ ワタナベ) (左)シルクタフタのラグジュアリーなドレスと小花柄のグラデーションにロマンティックなストーリーを感じさせて。ドレス¥877,800・ブレスレット¥129,800・靴¥159,500/ジルサンダージャパン(ジル サンダー)
モード好きの鼎談(p.52〜p.55)で話題に上がった2着のドレスに着目。ブランドのフィロソフィーが込められたデザインはコミュニケーションツールとしても優秀だ。(モデル右)レースの襟とベルベットのワンピースというクラシカルなアイテム。ワイヤー使いが躍動感あるフォルムを描く。
ワクワクさせてくれるモノづくりはどこにある!?
――2026年春夏シーズンから多くのクリエイティブ・ディレクターが交代することがアナウンスされています。それを踏まえて今、服好きの人たちはどんなムードに?
浜田 メンズの春夏コレクションはすでに発表されましたし、早くも気持ちは次へ。アメリカとヨーロッパが融合したニュー・プレッピーの風が吹いている気がしています。
佐藤 待って待って(笑)。その前に大好きなジル サンダーのルーシー&ルーク・メイヤー夫妻に「さよなら」させてください。このドレス(上)は記念買いを検討中。闇のような黒の中にボタニカル柄が浮かび上がり、自然との対話を重視していた彼ららしいデザイン。すぐに次のブランドに移らないで少しキャリアをお休みするという噂もあって、そのマイペースさにも憧れます。
栗山 オンラインでショーが即時に見られる時代だからシーズン関係なく、次は何を買おうかと考えますよね。
浜田 私はセリーヌの新しいクリエイティブ・ディレクター、マイケル・ライダーがオートクチュール期間に発表した、’26 年春夏のデビューコレクションに夢中。仕事中、夜10時にオンラインでショーを目にしたんです。活を入れられたような気分になり、「こうしてはいられない!」と目が覚めました。
佐藤 あのコーディネート術は見れば見るほど秀逸で、うなりました。
栗山 個人的には相変わらずフィービー・ファイロは大好き。デザイナー自身のファンになって追いかけたほうが心穏やかでいられるというもの。今季はネックラインにひとくせあるニット(3)が狙い目。パンチのきいたデュラン・ランティンク(4)も個性があるのでチェックしています。いつだって〝変わったかたち〟の服が好き。
フィービー ファイロのニット

ニット¥293,000/フィービー ファイロ
3 セリーヌ退任後のフィービーの動向を追う栗山さん。ファーストコレクションから継続して購入する筋金入りのフィービーマニアだという。ニットの名手であった彼女が手がける新作は美しくユニークな形が目を引く。
デュラン ランティンクのドレス

ドレス¥492,250/ドーバー ストリート マーケット ギンザ(デュラン ランティンク)
4 ジャンポール・ゴルチエの新クリエイティブ・ディレクターに任命されたデュラン・ランティンク。体の一部を誇張する"バブルルック"など、独特の造形美を堪能できる。
新しい空気を連れてくるひとくせある作り手が魅力的
佐藤 こんな激動の時代にファッションの仕事に携われるのは、本当に面白いです。新生ドリス ヴァン ノッテンのランウェイから感じたのは、エレガンスと強さが共存した新しい女性像。ジャケット(1)からレースをのぞかせて着てみたい。韓国にルーツのあるデザイナーが手がけるオロヒー(5)もオーバーサイズのシャツの中にプリーツやリボンが重ねてあって、まさにニュー・エレガンスを感じました。
ドリス ヴァン ノッテンのジャケット

ジャケット¥409,200/ドリス ヴァン ノッテン
1 新クリエイティブ・ディレクターのジュリアン・クロスナーは今回の鼎談でも好評。「ブランドのレガシーをきちんと残し、そこに新しいデザイナーのエッセンスが加わって、新鮮でした」(佐藤さん)。
オロヒーのシャツ

シャツ¥49,500/オン・トーキョー ショールーム(オロヒー)
5 秋冬シーズンにデビューしたばかりの新進気鋭ブランド。佐藤さんは美術館で偶然にデザイナーと出会ったという私的な思い出も込みで、パーソナルな魅力を感じているのだそう。
栗山 バレンシアガはピエールパオロ・ピッチョーリの新時代を楽しみにしつつ、デムナ期の服も買い納めしたい。少し肩のあるジャケット(6)はやっぱり仕立てが美しくて素敵。ほかのランウェイでも、肩に主張のあるアイテムをちょこちょこ見かけます。ジュンヤ ワタナベのややパワーショルダーかつ、ワイヤー入りで面白い形で着られるドレス(上)もいい。ゴスっぽさも好みです。
バレンシアガのジャケット

ジャケット¥506,000(予定価格)/バレンシアガ クライアントサービス(バレンシアガ)
6 「ベーシックなジャケットも気になる」という栗山さんはバレンシアガの端正な一着をチョイス。
浜田 二人とも好きがブレない! 私は何とかして次のムードを取り入れたいと考えているので、プレッピーなサンローランのハリントンジャケット(2)は狙っている。ランウェイからの影響なのか、赤も最近気になる色。エルメスのバレエシューズ(7)に靴下を合わせて履きたいかも。
サンローランのジャケット

ジャケット¥481,800/サンローラン クライアントサービス(サンローラン バイ アンソニー・ヴァカレロ)
2 50年代のハリウッド映画に登場し、人気を博したハリントンジャケットを思わせる。コットンキャンバスのしっかりとした生地感も頼もしい。
エルメスのバレエシューズ

バレエシューズ¥226,600/エルメスジャポン(エルメス)
7 浜田さんが展示会でひと目惚れした新作。上質な素材感とセンシュアルな赤色が決め手。
タイムレスなものこそ視点を変えればツイストになる
佐藤 カラーシューズにソックス、その気分わかります!
――移り変わりの激しいモード界ですが、こんなときこそ信頼できるものは?
浜田 エルメスのスカーフ(8)は一枚ずつ買い足していますよ。縁取りのある柄って首もとに巻くと引き締まるんですよ。ドリス ヴァン ノッテンのメンズでも、ケーブルニットにこういうスカーフを合わせていた。タイムレスなものこそエッジのきいたスタイルのカギになりそう。
エルメスのスカーフ

スカーフ¥64,900/エルメスジャポン(エルメス)
8 「写真は70×70ですが、90×90もアレンジしやすいので好き。カレ70は首もとにタイトに巻くときに重宝します」(浜田さん)。上品なオフホワイトにブラックの図版がシックな趣。
佐藤 確かに。パリでランウェイも見たのですが、オーラリーのジャケット(9)は一見普通だけど、ドレスと重ねてミックス&マッチで遊べそう。
オーラリーのジャケット

ジャケット¥83,600/オーラリー
9 カシミヤをミックスして、一枚でもコンフォートなぬくもりを感じられる。コンパクトなサイズ感で、アウターとの合わせも楽しめる。
浜田 オーラリーはTシャツを毎シーズン買っていますが、ちょっとしたところに気が利いています。
栗山 信頼できるものというよりも、最近は信頼できる人が手がけているかどうかのほうが大事な気がしますね。
浜田 大好きなデザイナー、ドリス・ ヴァン・ノッテンへのリスペクトは変わりませんが、マイケル・ライダーの動向から目が離せません。
佐藤 私は6年ぶりにクリエイティブ・ディレクターが代わったカルバン・クライン(10)に注目しています。ヴェロニカ・レオーニもフィービーのところにいただけあって、クリーンで今の時代にアップデートされた服を作っているので好き。
カルバン・クラインのセットアップ

ジャケット¥453,200・パンツ¥326,700/カルバン・クライン カスタマーサービス(カルバン・クライン コレクション)
10 心地よさと緊張感を両立させたランウェイに期待感が高まる。なめらかで艶のあるセットアップは洗練の極み。
浜田 トーテム(13)にもフィービー的な感性があると思うのですが、NYの元エディターが手がけていて、ボリューム感なんかがいいんですよ。
トーテムのドレス

ドレス¥185,900/トーテム クライアントサービス(トーテム)
13 オーガニックコットンをたっぷりと使用したパラシュートドレス。フロントのスナップを開けてコートのようにスタイリングできる優れもの。ユーティリティも浜田さんは重視。
栗山 なるほど。
浜田 スタイリストとしてみると、マイケル・ライダーってポロ ラルフ ローレンでの実績があるからこそ、アメリカン・カジュアルを熟知している小物使いにしびれるんですよね。
佐藤 ベルトにチェーンやチャームをつけたり、ソックスの合わせなんかも面白いですよね。
次の気分を先取りしたい! どこから手をつけるか問題
浜田 すぐに買えるセリーヌのフィールドジャケット(11)は端正なブラウスやスカーフを重ねて、アメリカン・カジュアルのミックスを楽しみます。あと、2026年春夏のドリスのメンズもいい。特にジャケットをスウェットパンツにインしたスタイル(16)は足もとのビビッドな色も含めて秀逸。結局、私は抜け感になる日常着が好きみたい。
セリーヌのジャケット

ジャケット¥324,500 (予定価格)/セリーヌ ジャパン(セリーヌ)
11 クラシカルなフィールドジャケットはコットン素材で軽やか。
16 浜田さんはスウェットパンツの粋なスタイリング術に注目。リラクシングなパンツは上質な光沢感を持つジャケットと。相反するものを掛け合わせて、着こなしを格上げする
佐藤 なるほど。
浜田 ジョナサン・アンダーソン率いるディオールのデビューとなったメンズコレクションでもそうだったけど、ラインソックス(14)は必須かも。
フルーツオブザルームのソックス

ソックス(3点セット)¥1,320/ギャレット(フルーツオブザルーム)
14 ソックスに一家言ある浜田さんが選んだのは「フルーツオブザルーム」。リブの強弱やラインのカラーなどがポイント。
栗山 小物といえばミュウミュウのブラ(15)がすごく可愛い。エッジがきいていて、これこそ代えがきかない絶妙なセンスを感じます。
ミュウミュウのブラ

ブラ¥152,900(予定価格)/ミュウミュウ クライアントサービス(ミュウミュウ)
15 80年代のパワフルなムードをまとうエッジのきいたサテンブラ。肩肘張らず、カットソーの下などにノンシャランに身につけるのが令和のムード。
浜田 古着にもありそうだけど確かにこれは独自のこだわりがありますね。
佐藤 ダブルリングも流行りそうな兆しがありますが、シャルロット・シェネ(12)のデザインは建築みたいで面白いですよ。シャツの袖からこんなに構築的な指先が出ているといいなと思って。
シャルロット シェネのリング

リング¥126,500/エドストローム オフィス(シャルロット シェネ)
12 佐藤さんがパリのショールームで出合った運命のダブルリング。2本の指を包み込むような構築的なフォルムが目を引く。
栗山 小物一つとっても、その人の個性が出て面白いですね。
佐藤 語り合うことで自分の気になる服がクリアになりました!