ルイ・ヴィトン 2026クルーズ・コレクションのショーが、アヴィニョンの世界遺産で開催された。旅を本領とするメゾンが、新たな「冒険」のストーリーを通じ、伝えたメッセージとは――。夢あふれる服が私たちの想像の翼を広げ、「なりたい自分」へと誘う
ルイ・ヴィトン 2026クルーズ・コレクションのショーが、アヴィニョンの世界遺産で開催された。旅を本領とするメゾンが、新たな「冒険」のストーリーを通じ、伝えたメッセージとは――。夢あふれる服が私たちの想像の翼を広げ、「なりたい自分」へと誘う
時空を超えた「自分探し」の旅へ
高くそびえる城壁に四方を囲まれ、圧倒される。会場となるのは、アヴィニョン教皇庁の「名誉の中庭」、クール・ド ノール。14世紀に建てられ、かつて教皇が住んだ宮殿は、1947年以降、演劇祭の開催地に。歴史と文化が薫り立つ会場には赤い座席が設えられ、透過光のランウェイが鮮烈なコントラストを描く。演劇の聖地にインスパイアされたかのように、ゲストで俳優のケイト・ブランシェットとノエミ・メルランが熱烈なおしゃべりを繰り広げている。
鎧を彷彿するメタリックなファーストルックでショーが幕を開けた。フレスコ画やタペストリーのような色彩やパターン、紋章を模したディテールがゴシック様式の空間と呼応する。アワーグラスやテントラインのシルエットが極めてモダン、多くはフレッシュなミニ丈で足もとにはハトメやミラーで飾ったブーツ。ヒストリカルな要素をモードにアップデートするのはウィメンズ アーティスティック・ディレクター、ニコラ・ジェスキエールの真骨頂だ。
中盤には70年代調のドレスやニコラのシグニチャーであるバイカースタイルも登場。ニットのセットアップは愛らしく、華やかなテーラードジャケットは往年のロックアイコンを思わせる。
これらのバリエーション豊かなルックの一つ一つにサヴォアフェールを凝らし、芸術の域にまで高めている。異なるパターンをパッチワークのように融合したジャケット。複数の刺しゅうを重ねた奥行きのあるスパンコール使いに、絢爛なブロケード。歴史的な衣服の質感を再現するため、特別に開発された加工を施したピース。どの服にも主役級の存在感があり、カリスマ的なオーラを放つ。
フィナーレで客席に座ったモデルたちにスポットライトが当たる。と同時に彼らはこちらにまなざしを向け、私たちこそが舞台に立っている、と思わせる。
ニコラ・ジェスキエールは人生を演劇になぞらえ、コスチュームの概念を拡張した。自分らしく生きていくために、社会的な役割から自身を解放するとき、ファッションが私たちをエンパワメントする。生まれ持ったからだは一つであっても、服の力があればいろいろな「わたし」で冒険できるのだ。
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