エルメスの歴史の転換期に現れた、影の立役者。レザーグローブの誕生秘話【エルメスを巡る冒険vol.6】

1837年の創業以来、卓越した職人技とユーモアあふれる創造性で世界中の女性たちを魅了してきたエルメス。連載「エルメスを巡る冒険」では、その歴史をたどりながら新たな名品を紹介していく。

1837年の創業以来、卓越した職人技とユーモアあふれる創造性で世界中の女性たちを魅了してきたエルメス。連載「エルメスを巡る冒険」では、その歴史をたどりながら新たな名品を紹介していく。

INDEX

エルメスの世界を形作る16のメチエのなかでも、今回フォーカスするのは、レザーグローブ「オマージュ」。メゾンの歴史と職人の手仕事を現代へと継承するアイテムの物語を読み解く。

手のひらに宿る、エルメスのクラフツマンシップ

エルメスが生み出すプロダクトの中でも、グローブはターニングポイントとなった存在だ。その製作が始まったのは、3代目エミール・エルメスがメゾンを率いた1920年代。当時、エルメスはすでに最高峰の馬具工房として名をとどろかせていた。その技術を活かしながら、時代の変化や当時の女性たちのライフスタイルに合わせて、バッグや財布など、さまざまな皮革製品の製作に着手し、モータースポーツやゴルフといったスポーツのアクセサリーとして初のグローブが誕生。1926年には現在も広く親しまれる日常使いできるアイテムが初めて制作され、これがエルメスにおけるファッショングローブの歴史の起点となった。

もう一つ、エルメスのグローブを語るうえで忘れてはならないのが、アニー・ボーメルという女性の存在だ。1920年代、フォーブル・サントノーレ通り24番地のエルメス第一号店で販売員を務めていた彼女は、ある日、ショーウィンドウの責任者が病欠したことから、急きょ装飾を任されることに。そのとき即興で生み出したのが、馬の鞍を逆さに吊るし、手袋をアーティスティックに配した演出だった。その革新的なアイデアに感銘を受けたエミール・エルメスは、1930年代から同部門の責任者に抜擢。以来、1978年まで独創的なディスプレイを通じてエルメスの世界観を表現し続けた。さらに1961年には、後に「ウィンドウの魔術師」として知られるレイラ・マンシャリを弟子に迎え入れ、その才能を開花させた。現在も本店を彩る、独創的なショーウィンドウの伝統。その礎を築いたのが、ほかならぬグローブ売り場出身のボーメルだったのだ。

指先の仕草まで優美に彩る、第二の皮膚「オマージュ」グローブ

サン゠ジュニアンの伝統を受け継ぎ、今なお息づく職人の遺産

エルメス「オマージュ」グローブの全体像

「オマージュ」グローブ ¥226,600

エルメスのグローブが生まれるのは、フランス中西部、リムーザン地方のサン゠ジュニアン。中世から革産業で栄えてきたこの街は、周辺の牧畜地帯から良質な原皮を調達できたことに加え、街を流れるヴィエンヌ川とグラーヌ川がなめし加工に適していたことから、17世紀末にはグローブ製造が主要産業の一つへと発展した。エルメスがこの地で1919年創業の老舗工房を傘下に収めたのは、1998年のこと。2017年には、ヴィエンヌ川のほとりにたたずむ旧羊毛加工工場を改修した新たなアトリエへと拠点を移し、伝統的な製作技術を次世代へと受け継いでいる。

一流の技術と審美眼によって生み出される逸品

エルメス「オマージュ」グローブのクローズアップ

一双のグローブが完成するまでには、実に22もの工程を要する。目利きの職人による最高級レザーの選定に始まり、レザーを一方向に伸ばす作業、裁断、細かなパーツを立体的に縫い合わせる縫製、そして仕上げまで。熟練の技が生かされることで、まるで第二の皮膚のようになじみ、手もとを優美に彩るグローブが生まれる。

上質なレザーに「ケリー」が輝きを添える

エルメス 「オマージュ」グローブの全体像

しなやかなラムスキンを用いたグローブは、内側にシルクのライニングを施し、表も裏も極上の肌ざわりに。手首部分にあしらわれたゴールドカラーのトゥレ(ターンロック)が、さりげなく品格を添えている。肌寒いこれからの季節、かじかむ手を優しく包み込みながら、冬の装いをエレガントなムードへと導く。

エルメスの世界を形作る、16のメチエ

エルメスの壮大なストーリーの語り部となるのは、16のメチエ(製品部門)を支える職人たち。メゾンのルーツである馬具をはじめ、レザー製品、ウィメンズとメンズのプレタポルテ、ホームコレクション、2020年にローンチしたビューティ、そしてパスカル・ミュサールが考案し、2010年より始動した余剰素材に新たな価値を付与するpetit h(プティ アッシュ)。

エルメスのアーティスティック・ディレクターであるピエール=アレクシィ・デュマの指揮のもと、毎年発表される年間テーマに基づき、それぞれが独立した部門としてクリエーションに磨きをかけている。一方で、ときには互いにインスピレーションを共有しながらその世界観を発展させてきた。

16のメチエ

  1. レザー製品&乗馬
  2. レディスシルク
  3. メンズシルク
  4. レディスプレタポルテ
  5. メンズプレタポルテ
  6. シューズ
  7. ベルト
  8. ハット
  9. 手袋
  10. ジュエリー
  11. ウォッチ
  12. フレグランス
  13. ビューティ
  14. 家具&アート・オブ・リビング
  15. テーブルウェア
  16. petit h(プティ アッシュ)

エルメスジャポン
http://www.hermes.com/
03-3569-3300