世界中から魅惑的な秋冬の新作が揃う時期。ファッションのプロたちはどんな視点でウィッシュリストを作るのか? 熱を帯びて語る運命的な出合いやスタイリングの構想、目指す人物像など、ひたむきな思いに迫る

2026.10.13

フィービー ファイロ、オーラリー、ザ・ロウetc. ファッションプロが秋冬に本気で欲しい一着

世界中から魅惑的な秋冬の新作が揃う時期。ファッションのプロたちはどんな視点でウィッシュリストを作るのか? 熱を帯びて語る運命的な出合いやスタイリングの構想、目指す人物像など、ひたむきな思いに迫る

INDEX

PHOEBE PHILOのパンツ

PHOEBE PHILOのパンツ

ブラックウールで仕立てたトラウザー。ミニマルなデザインのフロントに対して、バックスタイルにはサイドに流れるような幅広のトレーンがあしらわれている。端正でありながらドラマティックな表情で、モードなスタイルを生む一着。パンツ¥442,000・トップス¥77,000・靴¥197,000/フィービー ファイロ

栗山愛以さんの欲しいもの

セリーヌを手がけていた頃、フィービー・ファイロは「エフォートレス」ブームを牽引していましたが、時には実用性度外視で攻めたデザインを、肩の力を抜いて提案していたのが印象的でした。強いピースは気合を入れてスタイリングするとくどくなってしまう。彼女のようなバランス感覚で取り入れるのが理想だと思っています。ブランドが打ち出す、媚びない自立した女性像も憧れ。フィービー ファイロの世界の一員になりたくて、新作が発表されるたびに公式オンラインストアをチェックしてはいくつか手に入れてきました。

ベーシックでタイムレスなアイテムも多く展開していますが、私が惹きつけられるのは、ちょっとした違和感やパンチのあるデザイン。このパンツもマスキュリンなのにバックにトレーンがついていて、意外性に満ちています。でもルックブックではTシャツとフラットシューズで、肩肘張らないムードに仕上げている。その姿勢を見習って、私もぜひ自然体で着てみたいです。

Itoi Kuriyamaプロフィール画像
ライターItoi Kuriyama

コム デ ギャルソンで広報を務めたあと、首都大学東京大学院の社会学修士課程を修了。現在モード誌を中心にライターとして活躍中。

AURALEEのカーディガン

AURALEEのカーディガン

超極細の上質なウールを使用したニットシャツカーディガン。美しい光沢感としなやかな肌ざわりを備えながら、ハリのある編み地が立体感のあるフォルムを生み出す。鮮やかなグリーンの色合いがスタイリングのアクセントとなり、装いに軽やかな彩りを添える。カーディガン¥59,400/オーラリー

モハメド・アズハリ・アフメドさんの欲しいもの

ルックブックの撮影でオーラリーの服に袖を通したとき、肩の力が抜け、ただそこにいてもいいんだと思えました。数年間この業界にいますが、撮影でそう思えたのは初めてのことでした。無理に何かを演じたり、格好つけたりする必要がなく、そのままの自分でいられた気がします。仕上がった写真には、そんな自然な表情があふれていました。モデル活動をする中で、服を、そして自分自身をさらに好きになるきっかけをくれたブランドです。オーラリーのアイテムは日常になじみながらも、少し特別な気持ちにさせてくれます。着心地がよく、手に取りやすいのに、何げない日々が少し整うような感覚があるんです。

今季惹かれたのは、グリーンが美しいカーディガン。自然素材でここまで鮮やかな色を表現できることに驚きました。印象的でありながら決して強すぎず、街の風景に溶け込むような色合い。そしてコンパクトな着丈と美しい発色が、スタイリングのイメージを広げてくれます。やわらかな光に包まれる曇天の日の朝、黒のウールギャバジンのロングコートとチャコールのスラックスに、足もとはオレンジのスニーカーを合わせたい。素材や生地、縫製へのこだわりを、時代の空気を捉えながら落とし込む。ミニマルなのに、着こなしがどんどん思い浮かぶ。オーラリーは、毎回僕をワクワクさせてくれる唯一無二のブランドです。

Mohamed Azhari Ahmedプロフィール画像
DISSONANCEオーナー、フォトグラファー 、モデルMohamed Azhari Ahmed

中目黒に店舗を構えるヴィンテージショップ「DISSONANCE」のオーナー。モデルやフォトグラファーの顔も持ち、多方面で活躍中。

DRIES VAN NOTENのケープコート

DRIES VAN NOTENのケープコート

煉瓦色のノスタルジックなウール素材に、ライナーとして英国調のクラシックなチェックを合わせた。襟もとをボタンで留めてラフに着こなせるので、インに合わせるアイテムとの化学反応を楽しめる。ケープコート(メンズ)¥460,900/ドリス ヴァン ノッテン

菅野麻子さんの欲しいもの

メンズのケープが欲しいと思っています。ケープは私のワードローブの中に結構あるアイテムなんです。子どもの頃から大好きなんですが、どうしてなのかと考えたときに、佇まいのミステリアスさだなと。この人はケープの下に何を着ているのだろう?と思わせる魅力がありますよね。中には何を着てもいい。脱ぐと意外性のあるスタイルをしてもいい、何通りもの私を想像できるのが楽しいですね。

クリエイティブ・ディレクターのジュリアン・クロスナーとは来日の際に話したことがありますが、ポジティブでおおらかで、現代っぽい軽やかさを持っている人という印象。彼はまずメンズからコンセプトを作って、ウィメンズと呼応させています。彼の物語の作り方が大好きで、この秋冬の、若者が成長して大人になっていく心の動きや揺らぎを表現したルックの数々は素敵でした。昔の紳士物を思わせるクラシックなテキスタイルなので、きれいな色を合わせて着たいです。

Asako Kannoプロフィール画像
エディター Asako Kanno

ファッションエディター。20代の大半をイタリアとイギリスで過ごす。帰国後、数誌でディレクターを務め独立。モード誌やカタログなど幅広く活躍する。

YOKO SAKAMOTOのデニム

YOKO SAKAMOTOのデニム

東京を拠点とするブランド。バギーシルエットのデニムパンツは、クラシックな5ポケットスタイル。タックボタンは鉄製、リベットは鉄製の銅メッキを採用している。天然染めだからこその色の変化を楽しめるので、はき込んでマイ・ヴィンテージに育てたい。パンツ¥50,600/ヨーコサカモト

池田尚輝さんの欲しいもの

ブラウンが人気カラーとなって久しいですが、トレンドの"内"にあるときも、"外"になったときにも愛し続けたい色みには、なかなか出合えません。まず、このデニムの深い茶が柿渋染めで繰り返し色を入れたものであることに驚きつつ、パンツとしてごく自然に成立していることで、はいてみたいと思いました。

YOKO SAKAMOTOは、東上野にあるセレクトショップ「in part」で偶然知ったブランド。素材へのこだわりを極める一方で、さりげない服に着地させているところに興味を覚えました。伝統技法や素材に注力したプロダクトは、得てして仕上がりに蘊蓄が反映されすぎて、普段使いするのはちょっと……というものも多い中、このブランドの服は説明をされないとそんな技法が使われているとわからないほど、そぎ落とされた表現になっていると思います。シンプルなスウェットやニット、ウールシャツと合わせたり、足もとをスニーカーにして、いつもの装いとして楽しみたいです。

Naoki Ikedaプロフィール画像
スタイリスト Naoki Ikeda

スタイリスト。2000年に独立。NY留学を経て、メンズファッションを中心に雑誌や広告で活躍。キュレーターとして展示も企画する。

Max Maraのテディベア コート

Max Maraのテディベア コート

アイコンとして親しまれている「テディベア コート」に高品質なカシミヤ、シルクを使用したタイプが登場。ぬいぐるみを抱いているようなコージーさとラグジュアリーな表情の両方を兼ね備えた。サンドベージュはどんなアイテムにも合わせやすい色。コート¥1,403,600/マックスマーラ ジャパン(マックスマーラ)

中馬あかねさんの欲しいもの

マックスマーラのテディベア コートが大好きで、キャメル、ピンク、ターコイズなど、色違いで愛用しています。季節を問わず、私のスタイルの基軸はドレス。ワードローブが大きく変わらないので、寒くなってきたらドレスにテディベア コートを羽織れば、たちまち冬の仕様に。仕事から息子の野球部のお当番、ロケ撮影の現場まで。軽くて暖かい上に、さりげなく装いを格上げしてくれる頼もしい相棒です。特にピンクのロングコートは、着ると「ああ、今年も冬がきたね」とみんなに言われるくらい、季節の風物詩になっています。野球引率時には子どもたちの目印になる、というメリットも。

そんなテディベア コートにカシミヤバージョンが出ると聞いたら、もうこれは買わずにはいられません。マックスマーラのカシミヤコートはすでに持っていますが、テディベア コートのフラッフィーさとカシミヤのなめらかな高級感が加わって、最強のアウターになる予感。私には珍しいニュートラルカラーなので、カラフルなドレスに合わせて、自分らしく着こなしたい。足もとはソックス×パンプスの気分です。

Akane Chumaプロフィール画像
エディターAkane Chuma

フリーランスのファッションエディター。モード誌や広告を中心に幅広く活躍。ファッションへの深い造詣と独自の審美眼で、企画やディレクションを手がける。

THE ROWのコーデュロイパンツ

THE ROWのコーデュロイパンツ

端正なストレートシルエットと清廉なホワイトカラーが掛け合わさり、カジュアルなコーデュロイパンツがクリーンな印象に。驚くほどしなやかな生地は、美しい落ち感を生む。シンプルにコーディネートするだけで、こなれた佇まいへと導く。パンツ¥215,600/ザ・ロウ・ジャパン(ザ・ロウ)

森田華代さんの欲しいもの

ファッションウィークは、情報収集のため定期的に足を運ぶようにしています。2026-'27年秋冬のパリコレクションは、ザ・ロウのショーを取材することができました。会場では写真撮影がNGだったため、目を皿のようにして一体一体のルックを必死で見ることに。

いくつものアイテムが印象に残ったのですが、中でも気になっているのがこの白いパンツ。一般的なコーデュロイに比べて、畝が太いところが新鮮です。ランウェイではメンズサイズをはいていて、ショートブーツにインすることでジョッパーズのようなシルエットになっていたのがとても素敵でした。ただ自分がはくとなると、正直なところルックと同じようなスタイリングではちょっと難しい……。適度にゆるいシルエットを目指しながら、ネイビーのピーコートやローゲージのタートルネックニットと合わせて、気負いすぎないムードで着こなしたいです。

Kayori Moritaプロフィール画像
ライター Kayori Morita

ファッションエディター。数多くのモード誌で活躍。普段の装いはマニッシュで、ほどよく抜け感のあるスタイリングを好む。

SAINT LAURENTのセットアップ

SAINT LAURENTのセットアップ

90年代のパワフルなテーラリングから着想を得たセットアップ。クラシックなピンストライプとシャープなシルエットの組み合わせが、洗練された現代の女性の佇まいを表現する。ジャケット¥679,800・パンツ¥330,000・靴(参考色)¥539,000/サンローラン Nライアントサービス(サンローラン バイ アンソニー・ヴァカレロ)

五十嵐真奈の欲しいもの

『急に具合が悪くなる』のレッドカーペットでヴィルジニー・エフィラさんが着こなす姿が目を引きました。パワーショルダーで強さを感じさせながらも、ボディラインを緩やかに包み込むーー人を導く立場でありながら、強引ではなく周りを尊重する、映画での役柄とも重なって見えました。

サンローランのテーラリングの魅力は強さを演出することではなく、着る人の本質を引き出すことにあると感じます。ステレオタイプの「強い女性像」に閉じ込めない、多面的な美しさが魅力です。スーツを選ぶ際に大切にしているのは、「自分らしい表情が損なわれないか」。体を固めて権威を示す服よりも、呼吸や動作を受け止め、寄り添ってくれる服に惹かれます。

このルックは意思の強さを表しながらも、自然体でいられるバランスが絶妙。ピンストライプで厳格さを保ちつつ、ブラウンという肌になじむ色みがブラックとは異なるぬくもりを醸し出します。着たいのは、むしろドレスコードのない「なんでもない日」。映画や美術館に一人で行くような、自分の気持ちを整える存在として、ワードローブに迎えたい一着です。

Mana Igarashiプロフィール画像
SPURブランド統括編集長 Mana Igarashi

SPURブランド統括編集長。ファッションを軸にSDGsなど多彩なテーマを扱い、社会課題をモードの視点から発信する。