【教養としてのジュエリー学 vol.4】FREDののシャンス アンフィニ

フレンチジュエラーと聞くと厳格なイメージを想起させるが、フレッドはひと味違う。南米の開放的な空気感に、モダニズムの気風を反映した現代のパリジェンヌの息吹が加わったような軽やかなクリエーション。まとうことでセカンドスキンのように溶け合い、スタイルを輝かせてくれる。

「シャンス アンフィニ」リング(右から)〈PG、ダイヤモンド、ルビー〉¥594,000・〈PG、ダイヤモンド〉¥308,000・〈WG、ダイヤモンド〉¥649,000

「シャンス アンフィニ」ネックレス(上から)〈PG、ダイヤモンド〉¥418,000・〈PG、ダイヤモンド、ホワイトマザーオブパール〉¥539,000/フレッド カスタマーサービス(フレッド) シャツ ¥31,900/アングローバル(マーガレット・ハウエル)

幸運を呼び込むフォーチュンモチーフを取り入れたアイコンジュエリー。セーリングで用いられるノットともリンクしたデザインで、絆や結びつきというメッセージも。豊富なバリエーションで、シーンを問わずオールラウンドに取り入れられる。



フレンチジュエラーの伝統と一線を画すモダンジュエラー

岡部(以下O) 今回フィーチャーするのは、フレッド。コンテンポラリーな作品で人気のフレンチジュエラーです。

本間(以下H) 創業者であるフレッド・サミュエルがパリのロワイヤル通りの6番地にブティックを構えたのが1936年。当時のブティックは、伝説のレストラン、マキシム・ド・パリの目の前に構えていたのですが、トレンドセッターたちの間ではフレッドでショッピングをしてからディナーをするのが流行っていたそうです。

O 当時のパリジェンヌに、フレッドのどんな点が新鮮に映ったのでしょう。

H まずは独創的なデザイン。創業当初はフレッド・サミュエルと親交のあったベルナール・ビュッフェやジャン・コクトーにデザインを依頼していたというエピソードも有名です。

O 昨年話題を集めた、日本人デザイナーの小泉智貴によるコレクションも記憶に新しいですよね。一方で、フレッドは数多くのセレブリティとの関係性が深いことでも知られています。グレース・ケリー元公妃は、モナコにあるブティックの常連だったとか。

H 彼女が愛用していた、豹をモチーフにした作品は、今なおフレッドのヘリテージとして大切にされています。ほかにはマレーネ・ディートリッヒやカトリーヌ・ドヌーヴなどの名前がよく挙がりますが、いずれも独自のスタイルを持った女性たち。オーソドックスなデザインをひととおりコンプリートした上で、さらにレベルの高いジュエリーを求める。そんな玄人にふさわしいジュエラーだと言えるでしょう。

O 時に、フレッド・サミュエルは南米、アルゼンチンの出身。そのことが関係してか、フレッドのジュエリーは自然光に映えるものが多い気がします。

H 夜というよりは昼。山というよりはビーチというイメージでしょうか。フレッド・サミュエル自身、マリンスポーツを好んだことで有名です。たとえば、アイコンコレクションである「シャンス アンフィニ」は人気の「フォース10」と同様、セーリングからインスピレーションを得ているそう。ケーブルの結び方をイメージしたとか。

O メゾン創業80周年を記念し、2016年に「8°0」の名で登場したコレクションが、2020年に現在の名前に変わりました。新たなネーミングにはどういった意味があるのでしょう?

H シャンスはフランス語で幸運、アンフィニは無限という意味。デザインに取り入れられた8は、縁起のよい数字としてフランスで親しまれています。

O 日本でも末広がりと言われますが、8の持つポジティブなイメージは万国共通なんですね。

H デザイン面で見ると、コンテンポラリーな中に、どこか繊細さと遊び心が感じられるのも特徴的です。たとえば今回フィーチャーした3つのリングも、フロントのモチーフからシャンクにかけて絶妙に曲線的にデザインするなど、細かな意匠が目を引きます。

O ルビーを配したリングは、地金にブラックのコーティングを施すなど、色合わせの感覚も絶妙。実際につけると、ピタッと肌に寄り添うような心地よい着用感も魅力的でした。

H モダンでありながら使いやすいデザインも豊富。日々身につけることで、エナジャイズしてくれそうです!

※この特集中、以下の表記は略号になります。
PG(ピンクゴールド)、WG(ホワイトゴールド)

本間恵子
時計・ジュエリー専門ジャーナリスト。ジュエリーデザイナーという経歴に基づく鋭い目利きと、圧倒的な知識を武器に、幅広いメディアで活躍する唯一無二のエキスパート。

岡部駿佑
美しいものをこよなく愛するエディター。専門分野はランウェイ分析とジュエリー&ウォッチ。SPUR.JP、さらにYouTubeチャンネル「シュプールTV」のホスト役としても活躍中。

SOURCE:SPUR 2022年7月号「教養としてのジュエリー学」
photography: Masanori Akao 〈whiteSTOUT〉 styling: Lisa Sato 〈BE NATURAL〉 hair & make-up: Ryoki Shimonagata model: Kennedy text: Shunsuke Okabe

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