トレンド性の高いジュエリーから、レッドカーペットを彩るきらびやかなハイジュエリーまで幅広いクリエーションを手がけ、世界中のファンを魅了してきたティファニー。アメリカのスピリットを体現するブランドの魅力を、その歴史と最新コレクションの2つの視点から探究する
※この特集中、以下の表記は略号になります。YG(イエローゴールド)、RG(ローズゴールド)、WG(ホワイトゴールド)
モダンなエレガントさと、エッジィなムードを融合する。ティファニーならではのデザイン美学が凝縮された「ティファニー ロック」。スリークな鏡面仕上げのゴールドが美しいバングルは性別、世代を問わず取り入れられるオールラウンドな佇まいが魅力。シンプルな地金のタイプ、ダイヤモンドをあしらったもの、2色のゴールドの組み合わせなど豊富なバリエーションから選べるのもうれしい。
フロンティアスピリットを体現する名門のデザイン哲学
岡部(以下O) ティファニーといえば昨年LVMH傘下に入ったこと、そして今年は日本上陸50周年と、話題に事欠きません。本間さんはどんなイメージをお持ちですか?
本間(以下H) 一言で表すのは難しいですが、他のジュエラーと明らかに異なるのは、数多くのスターデザイナーを輩出してきたという点です。昨年他界したエルサ・ペレッティは、日本で80年代にブームになり、今なお根強い人気を誇る「オープン ハート」や、モード界隈で愛用者の多い「ボーン カフ」などを生み出しました。
O ファインジュエラーでシルバーを用いるというのも珍しいですよね。
H もともと銀細工で定評があったブランドですからね。創業者のチャールズ・ルイス・ティファニーは、スターリングシルバーの基準を設けてその価値を確立させたことでも知られています。
O ハイエンドなクリエーションから、比較的手に取りやすいシルバージュエリーまで揃うのは幅広い世代でティファニーが愛される理由のひとつ。歴代デザイナーの中でも、個人的には19世紀後半に活躍したポールディング・ファーンハムの作品に惹かれます。
H マニアックですね(笑)。私が好きなのは、1960年代に活躍したアンジェラ・カミングス。フランク・ゲーリーの作品も好きでした。デザイナーによって作風がガラッと変わるのも面白い。ちなみに岡部さんが考える、ティファニーのイメージは?
O 一言で表すとしたら、アメリカ。近代的なデザインというだけでなく、ブランドのあり方そのものがアメリカの文化を体現していると思います。
H いい視点ですね。創業者の時代にティファニー社の鉱物学者として手腕を発揮したジョージ・F・クンツは、アメリカ原産の石に強いこだわりを持っていました。先ほど岡部さんが挙げたポールディング・ファーンハムの代表作に蘭をモチーフにしたブローチがあるのですが、これはアメリカ原産の品種をモチーフにしているんですよ。
O パリ万国博覧会で金賞を受賞した作品ですね。ヨーロッパ優勢のジュエリー界において、アメリカならではのデザインやものづくりを追求し、揺るぎない地位を得た。そんなティファニーの最新ジュエリーが、今回フォーカスする「ティファニー ロック」です。
H ジェンダーニュートラルなデザインを強く意識したコレクション。初めて見たとき、大胆に削ぎ落とされたシンプリシティに見惚れました。
O モチーフは南京錠。シンプルな地金のもの、パヴェダイヤモンドをあしらったバリエーションが揃います。
H 一般的にはあまり知られていないですがティファニーではデザイン過程で、デジタルテクノロジーを積極的に取り入れています。そこで緻密な計算がなされているので、このブレスレットも360度どこから見ても美しい。さらに地金の磨きや石のセッティング、留め金の精巧な仕組みからは、職人の高い技術が見て取れます。
O 色違いのゴールドの組み合わせも個性的で好みです。ミニマルなデザインなので、手持ちのジュエリーとの相性もよさそう。ちょうど手もとのジュエリーに何か足したいと思っていたので、お店にトライしに行こうかな!
本間恵子
時計・ジュエリー専門ジャーナリスト。ジュエリーデザイナーという経歴に基づく鋭い目利きと、圧倒的な知識を武器に、雑誌をはじめ幅広いメディアで活躍する唯一無二のエキスパート。
岡部駿佑
美しいものをこよなく愛するエディター。専門分野はランウェイ分析とジュエリー&ウォッチ。YouTubeチャンネル「シュプールTV」のナビゲーターも務めるなど、多方面で活躍中。
SOURCE:SPUR 2022年11月号「教養としてのジュエリー学」
photography: Masanori Akao 〈whiteSTOUT〉 styling: Lisa Sato 〈BE NATURAL〉 hair & make-up: Ryoki Shimonagata model: Monika, Iohanny text: Shunsuke Okabe