ジュエリー選びの極意を清水奈緒美さんと考察する新連載がスタート。第1回は、個人的な記憶をたどって、エルメスの奥深さに触れる。
安全ピンを模したモチーフを大小さまざまなチェーンとミックス。パンクマインドを根底にもちつつも、上品に身につけられるバランス感覚も体感して。ミラーポリッシュ仕上げの輝きも贅沢。
ファッションやジュエリーのビジュアルワークを多く手がけるスタイリストの清水奈緒美さん。撮影のためのアイテムを選ぶ際もどんな人が身につけるのかというプロファイリングを怠らない。
「ファッションを愛する女性たちの中には、服を着飾る分、ジュエリーはあえてつけない、という方もいらっしゃいます。でもそんな方々にもエルメスのシルバーは選ばれている。なぜならライフスタイルとの親和性があるからです。あらゆる世代に向けた小物、洋服や家具などがメゾンの世界観を体現しており、ジュエリーもそのひとつ。"スタイルがある"という一言ではくくれない、その人の豊かな人生がジュエリーのチョイスから垣間見えるような気がします」
ロープから着想を得たチェーンは太さと立体感があり、パンチのあるルックス。首まわりにフィットするチョーカータイプはジャケットに合わせてマチュアにスタイリングする。つけ心地が軽いというのもうれしい。
今回の撮影で選んだのは「トルサード」と「シェーヌ・ダンクル・パンク」の2種のネックレス。シルバーを選んだのには意図があるという。
「私が初めて買ったエルメスのジュエリーはりんごの形をした銀製のリングでした。もう20年ほど前になるのでしょうか。手にしたときの心地よい重みはまだ覚えています。自分のワードローブや肌の色を考えて、ゴールドを身につけることが多いのですが、エルメスのシルバーは特別。スカーフと同じように、一度手にしてしまうとほかには目が行かなくなる感覚があります。今回選んだ2種のネックレスもしみじみ美しいと思わせる造形。使っていくうちにシルバーの色が変わっていく様子さえ、きっと愛おしくなります」
ふたつのネックレスに共通するのはその"強さ"と語る清水さん。
「ネックレスはジュエリーの中で自分の肌に直接触れる分量の多いアイテム。この地金の量をゴールドで作ると重すぎてしまうし、実用的でないのでシルバーで作る意義も感じます。単色のひとつの素材で、これだけの存在感を出せるのもエルメスのなせる業。"主役になるシルバー"と呼びたい。それでいて、職人の手が入ったぬくもりがあり、素肌にまとうと身近に感じられる。エクストリームなのに温かい、そんなブランドはほかにはないですよね」
ファッション誌の編集者を経て、2010年よりスタイリストとして独立。その審美眼にファンも多数。モード誌を中心に、広告や俳優のスタイリングも手がける。