ジュエリーは自分だけのジンクスがあればあるほど愛せる
スタイリスト・清水奈緒美さんが憧れるメゾンの創業者マドモアゼル シャネルが、クリエーションに秘めた想いとは何だったのか? アイコニックなモチーフのジュエリーから考える
シャネル「ココ クラッシュ」
ラッキーチャームである5のモチーフにダイヤモンドをちりばめた魅惑的なリングを主役に。ベージュゴールドもメゾンならではのやわらかなエレガンスを加えてくれる。
清水さんにとっての幸運のお守りはハート。子どもの頃から体にあるハート形のアザを見ていたら、なじみあるものになっていた。
「ラッキーチャームとは、自分にとって何かつながりを感じる象徴だったり、身近な人や環境に紐づき特別な存在になっていくもの。シャネルにおける"5"はマドモアゼル シャネルの星座が5番目の獅子座であることに由来しています。オートクチュール コレクションを5番目の日に発表したり、5番目に気に入った香水にその名前として冠したり、数字を特別なものと捉えています。自立して自由を勝ち得た女性ですが、信心深いところも興味をそそられます。数字は自分の好きな番号でもいいけれど、家族や大切な人とも結びつけて楽しめるのが魅力」
シャネル「コメット コレクション」
ネックレスの両端にあるふたつの星のモチーフがクリップとなっていて、ラリエットのように好きなところで留めることができる。アレンジによって印象が変わる。
女性が活躍することが困難だった時代に自分だけのお守りのモチーフを大切にしていたという、繊細な面にも惹かれるという清水さん。
「シャネルのオフィスにはマドモアゼル シャネルのポートレートが飾られているのですが、凛とした表情でいながら、大きなリボンを髪につけていらしたんです。それを見るたびにマスキュリンで強いだけではない、内に秘めた可愛らしさというか、アンビバレントな面が魅力だと感じました。代表的な"コメット コレクション"も、実は生真面目な星形ではなくてアシンメトリーで有機的なフォルムというのも愛らしいポイントですね」
マドモアゼル シャネルの哲学が余すことなく込められたジュエリーコレクションを清水さんはこう読み解く。
「自分の力で自らの願いと人生を実現していった女性ですが、時には星に願ったり、ラッキーチャームを身につけて人知れず勇気づけられていたのかなという妄想をかきたてられます。現実主義者でありながら、同じくらい大事にしていたロマンティックな部分。ファッションでもジュエリーでもそれを身につけることによって、自分の生きる道筋を形づくっていたのだと思うと、さらに共感できますね」
スタイリスト。ファッション誌の編集者を経て、2010年よりスタイリストとして独立。ものを選ぶ審美眼にファンも多数。モード誌を中心に、広告や俳優のスタイリングも手がける。