#13 『ジャスト・キッズ』に想いを馳せて、CHROME HEARTS FOR MAPPLETHORPE

クロムハーツといえばクロスにダガー、そして最近は特に女性に、スパイクモチーフが人気です。ですが今回はそれらとはちょっと一味違う、このジュエリーについて。

先日プレスの方とお会いした際、胸元のネックレスの何ともデカダンでアートな佇まいに釘付けになりました。身に着けているのは、ロバート・メイプルソープの作品やスタイルからインスピレーションを得た”CHROME HEARTS FOR MAPPLETHORPE”のひとつ。ロバートが撮影したユリの花をモチーフにしたペンダントです。彼の作品特有の引き込まれるような陰影を忠実に再現しています。他にはクロスやドッグタグも。

↑(右)クロスモチーフのチャーム¥54,000・(中)ユリモチーフのチャーム¥63,000、ネックチェーン¥27,000・(左)ドッグタグタイニーモチーフのチャーム(ボールチェーン付き)¥49,000<すべてシルバー>/クロムハーツトーキョー ☎03-5766-1081

ロバート・メイプルソープと聞いてすぐ脳裏に浮かんだのがこちらでした。彼の生涯のミューズ、パティ・スミスが彼との出会いから別れを綴った自叙伝『ジャスト・キッズ』とジュディ・リン撮影の写真集『PATTI SMITH 1969-1976』。

右は『ジャスト・キッズ』、左は『PATTI SMITH 1969-1976』。

パティ・スミスとロバート・メイプルソープ、『PATTI SMITH 1969-1976』より。

ネックレスを重ねづけるロバート・メイプルソープ、『PATTI SMITH 1969-1976』より。

自叙伝はパティとロバートがまだ何者でもない、それこそジャスト・キッズ(ただの子供たち)だったときを丹念に描いています。お金のない中、ふたりでひとつの食べ物を分け合い、大きなコートに共にくるまって眠り、アーティストになるべく互いを励ましながら鍛錬を続ける日々。いちばんのハイライトは、ウィリアム・バロウズやジャニス・ジョップリンなど20世紀の錚々たるアーティストが入れかわり立ちかわり現れ、ふたりの世界を万華鏡のように彩るホテル・チェルシー滞在時代。その描写に魅せられ、ホテル・チェルシーでのふたりとその周辺を切り取ったジュディ・リンの写真集を買ってしまった私です。

自叙伝と写真集を見返すと、ジュエリーにリンクするストーリーをたくさん見つけることができます。パティとロバートがニューヨークという大都会で再会した際に鍵となった、ペルシャ製のネックレス。黒と銀の糸、それにメタルプレートからなるそれを、ロバートはパープルの薄紙で包み、黒いサテンのリボンで飾ってパティにプレゼントしています。

また、アートでなかなか食べることのできないふたりは、蚤の市や釣具店で買ったオブジェを素敵にアレンジしてジュエリーを作り糧とします。リボンや紐、ビーズ、ロザリオ、羽根つきルアー……。写真集でもふたりはユニークなネックレスやブレスをいくつも重ねた姿を披露しています。それはさながらアートに身を捧げる聖者のためのお守りのよう。

CHROME HEARTS FOR MAPPLETHORPEのライナップは、パティとロバートのように人々にインスピレーションを与えてくれる存在です。クロムハーツのチェーンをつけてもいいですし、ベロアやラメのひも、レザーコードを組み合わせてもいい。自分のお気に入りのネックレスと重ねても、キッズたちのように好きなビーズや羽飾りを足してみても。そもそも『ジャスト・キッズ』によると、ロバートは「ファッションを生活の中のアートとして捉えていた」のです。(出かける際のアクセサリー選びや「ベルト・ループにつける鍵の数を決める」のにおそろしく時間がかかったとか)。生きていたら”ブルー・スター”はこれらのジュエリーを愛し、自由に身にまとうに違いありません。

↑クロスモチーフのチャーム、ユリモチーフのチャーム、ネックチェーンは上に同じ。クロスモチーフのチャームにつけた黒い紐とシャツは私物。

私は古着のシルク・シャツに合わせて”なりきりパティ”を目指そうかと妄想中(妄想するのは自由です……)。アートやカルチャーを”身にまとえる”のも、ジュエリーの愉しみですから。

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エディターNAMIKI

ジュエリー&ウォッチ担当。きらめくモノとフィギュアスケート観戦に元気をもらっています。永遠にミーハーです。

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