名品と呼ばれる時計の、背景にある物語にフォーカスする連載の第2回。今回はロレックスの「オイスター パーペチュアル」に着目してみよう。名品時計に欠かせないのは、実用性・機能性への絶対的な信頼感だ。世代を超えて世界中から支持されるロレックスは、それをどうやって手にいれたのか? きっかけとなったのは、腕時計のすばらしさを世界に広めたいという創立者の熱意と、たゆまぬ技術革新だった。

【ロレックス】の「オイスター パーペチュのタイトルイメージ

【ロレックス】の「オイスター パーペチュアル」。世界一有名な時計のことをもっと知りたい!【名品時計物語】

名品と呼ばれる時計の、背景にある物語にフォーカスする連載の第2回。今回はロレックスの「オイスター パーペチュアル」に着目してみよう。名品時計に欠かせないのは、実用性・機能性への絶対的な信頼感だ。世代を超えて世界中から支持されるロレックスは、それをどうやって手にいれたのか? きっかけとなったのは、腕時計のすばらしさを世界に広めたいという創立者の熱意と、たゆまぬ技術革新だった。

5文字のひらめきから名づけられた「ロレックス」とは

ロレックス創立者ハンス・ウイルスドルフ

ロレックスの創立者ハンス・ウイルスドルフ ©Rolex

1905年、創立者ハンス・ウイルスドルフがロンドンに開いた時計専門商社が、ブランドの基礎となった。彼は先見性に富んだ人物で、懐中時計全盛の時代に、いち早く腕時計の大きな可能性に着目。当時流通していた粗悪な製品とは一線を画し、スイスのビエンヌにある時計メーカーが製造した高精度の小型ムーブメントを搭載した腕時計を製造し、着実に顧客の信頼を得ていった。

【ロレックス】の「オイスター パーペチュの画像_2

©Rolex

この革新的な腕時計を広めるにあたって、ウイルスドルフは世界中どの言語でも発音しやすいブランド名を考えることにした。が、なかなか決まらなかった。のちに彼は、「アルファベットのあらゆる組み合わせを試し、数百の候補があがったが、これぞというものがなかった」と語っている。しかし’08年、その時がきた。「ある朝ロンドンで乗合馬車の2階席に座り、チープサイドを走行している時のこと、天啓のように『Rolex』という名前がひらめいた!」と。その後彼は’19年に本社を時計製造で世界的に有名なスイス・ジュネーブに移し、会社は’20年にモントル・ロレックスSAとして登録された。これがロレックス社のルーツだ。

ロレックス「オイスター パーぺチュアル」はこうして生まれた

ROLEX ロレックス 1910年に獲得したクロノメーターの精度証明書

1910年に獲得したクロノメーターの公式証明書 ©Rolex

ロレックスは、ムーブメントの品質向上に力を注いだ。そして’10年、ビエンヌにあるスイスクロノメーター歩度公認検定局から、腕時計として初めてクロノメーターの公式証明書を獲得した。さらに’14年には、イギリスのキュー天文台より、ロレックスの腕時計にA級証明書が与えられた。この証明書は通常、航海用のクロノメーターのみに与えられるもの。以来ロレックスの腕時計は、精度の代名詞となった。


※クロノメーター 
元々は航海用の精密時計として開発されたもので、現代では公的な機関が行う厳しい精度テストに合格した時計をさす。 
現在ロレックスは、スイス公認クロノメーター検査協会よりも厳しい独自の基準をクリアした時計に、「ロレックス高精度クロノメーター」の称号を与えている。

ROLEX ロレックス イギリスのキュー天文台より与えられたA級証明書

1914年、イギリスのキュー天文台より与えられたA級証明書 ©Rolex

‘26年、ロレックスは防水性と防塵性を備える世界初の腕時計「オイスター」を開発。完全密閉のケースを備えた時計が、ムーブメントの完璧な保護を可能にした。そして’31年、世界初の自動巻きメカニズムを備えた、パーペチュアルローターを開発。ここに2つの優れた機能を併せ持つ、「オイスター パーペチュアル」が誕生した。

「オイスター パーぺチュアル」伝説の始まり

イギリス海峡を泳いで渡るという挑戦に初めて成功した女性、メルセデス・グライツ ロレックス・オイスターを着用

イギリス海峡を泳いで渡るという挑戦に初めて成功した女性、メルセデス・グライツ ©Rolex

‘27年、イギリス人スイマーのメルセデス・グライツが、ロレックス オイスターを着用して、イギリス海峡を泳いで渡った。時計は10時間以上水中にあったにもかかわらず、完璧に動き続けたことから、時計の防水性能が証明された。この偉業を伝えるべく、ロレックスは英国紙「デイリー・メール」の一面に全面広告を掲載。ロレックス オイスターの名は世界中に広まった。

1933年、飛行機でエベレストを越える探検に、ロレックス・オイスターが携行された

©Rolex/Alfred Gregory/Royal Geographical Society

さらに’33年、飛行機でエベレストを越える探検に、ロレックス オイスターが携行された。複葉機での飛行中、高度や寒さをものともせず正確に動き続ける時計の性能に、隊員たちは大満足だったという。このようにスポーツや航空、モーターレース、探検などの分野で、厳しい条件下にも耐えうる、ロレックス ウォッチの精度や堅牢性が次々と証明されていった。

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1931年に開発された「オイスター パーペチュアル」の初代モデル

‘31年以降、自動巻きメカニズムを備えたオイスター パーペチュアルの登場で、人気はさらに加速した。この時計は現代の腕時計の基本となり、誕生から1世紀近くが経過しても、機能性への信頼が揺らぐことはない。

ロレックスは、限界を押し広げ、卓越性を追求し、ロレックスとビジョンを共有する人々を「ティスティモニー」と称し、パートナーシップを結んでいる。現在では、スポーツ界だけでなく、音楽や映画などの芸術を含む、様々な分野の人々がロレックス ファミリーとして迎えられている。

「オイスター パーペチュアル」のデザインと機能性

ROLEX ロレックス オイスター パーペチュアル 2020年 新世代モデル

オイスター パーペチュアル」は、まさにロレックス ウォッチの原点ともいうべき、普遍的なデザインが特徴。腕時計の基本である時間、分、秒を正確に伝えるシンプルさが、変わらぬ人気をよぶ。2020年に新世代モデルが誕生し、プレイフルな文字盤が加わった。
オイスタースチール製のケースは防塵・防水性に優れ、内側のムーブメントを保護する。「オイスター パーぺチュアル」は、そこにオリジナルの両方向自動巻きパーペチュアルローターを搭載した、機械式ムーブメントを備える。100m防水性能と、約55または70時間のパワーリザーブを備えている点も見逃せない。またすべてのロレックス ウォッチと同様、2015年にロレックスが再定義した「高精度クロノメーター」の称号をもち、平均日差は-2~+2秒以内5年間の国際保証が適用される。機能性と連動する、ミニマルなデザインの醍醐味を味わいたい。

今「オイスター パーペチュアル」に注目が集まる理由

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1926年以来ロレックスの名声を築いてきた初代オイスターの直系にあたる、「オイスター パーペチュアル」。最も純粋な形のクロノメーター時計のタイムレスな存在感は、現在まで色褪せない。このモデルはシンプルなデザインをベースにした、バリエーションの豊富さが特徴。日常生活のどんな場面にも対応できる汎用性が、大きな魅力だ。

さらに現在では、新鮮で遊び心あふれる模様や色使いのダイヤルが話題をよんでいる。元来備えている実用性に、個性と特別感をプラスしたモデルが加わったことで、いっそう人気が高くなった。今年は、コーディネートしやすいパステルカラーのダイヤルが注目のまとに。

パステルカラーの新ダイヤルが登場

「オイスター パーペチュアル 28」

ROLEX ロレックス オイスター パーペチュアル 28

時計「オイスター パーペチュアル 28」〈28mm径/オイスタースチール、マットラッカー仕上げラベンダーダイアル、自動巻き、100m防水、パワーリザーブ約55時間、オイスターブレスレット〉¥855,800

「オイスター パーペチュアル 36」

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時計「オイスター パーペチュアル 36」〈36mm径/オイスタースチール、マットラッカー仕上げベージュダイアル、自動巻き、100m防水、パワーリザーブ約70時間、オイスターブレスレット〉¥932,800

「オイスター パーペチュアル 41」

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時計「オイスター パーペチュアル 41」〈41mm径/オイスタースチール、マットラッカー仕上げピスタチオダイアル、自動巻き、100m防水、パワーリザーブ約70時間、オイスターブレスレット〉¥980,100

大人にも似合うパステルカラーのダイヤルが採用された新作が話題だ。ジェンダーレスなデザインだから、それぞれの好みにあわせて、自分にフィットするモデルを選びたい。

初期の「オイスター パーペチュアル」にオマージュを捧げるモデルの新作も必見

「パーペチュアル 1908」

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時計「パーペチュアル 1908」〈39mm径/K18YG、マット仕上げホワイトインテンスダイアル、自動巻き、50m防水、パワーリザーブ約66時間、セッティモブレスレット〉¥5,273,400

ソリッドゴールドなのに軽やかな装着感を実現した、「パーペチュアル 1908」のブレスレットモデル。しなやかに腕に沿う。

ロレックスと「持続可能性」の素敵な関係

ROLEX ロレックス 持続可能性

Rolex/Francois Lacour

創立時から「持続可能性」を大原則としてきたロレックス。パーペチュアル(永続的)な哲学の核をなすのは、耐久性に優れ、時代を超越する製品だ。高い品質を誇る時計は、長期に渡って機能を発揮し、次世代へ受け継がれることを前提として設計されている。製品に本来備わっている耐久性を保証する、独自のプログラムも充実している。

ROLEX ロレックス ゴールド 独自基準 サステナビリティ 持続可能性

©Rolex/JVA Studios

 ロレックスは、素材にもこだわりをもっている。たとえばゴールド。他のウォッチメーカーやジュエラーに先駆けて、いち早くゴールドに関する独自の基準を定めるなど、積極的な行動が際立つ。ロレックスで現在使われているゴールドのうち、新たに採掘されたものはわずか9%。残る91%はリサイクルゴールドだ。しかもそれらの99%の原産地をトレースできる体制が整っている。また貴金属合金は、自社鋳造所で製造する。貴金属(金・銀・プラチナ・パラジウム)を分析するための独立した研究所を設立し、社内に認定鑑定士のチームを結成。独自の供給と管理モデルにより、ゴールド製部品の製造における損失率は、ほぼゼロに。2027年からは、ゴールドのトレーサビリティモデルが、プラチナにも完全に適用される予定だ。この取り組みはほんの一例にすぎないが、そこからも「持続可能性」に対するロレックスの本気度が伝わってくる。

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©Rolex/Pascal Debrunner

さらに、製品の循環性への取り組みも行っている。ロレックスの時計は時を経てもその価値を維持し、本来の状態で安心して再販売できることからRCPO(ロレックス認定中古時計)プログラムが立ち上げられた。ロレックスの厳格な品質基準と要件を満たしたRCPOウォッチは正規販売店ネットワークで扱われ、購入時点から2年間の国際保証が適用される。日本では、2024年11月より、表参道ブティックで取扱いが開始されている。

創立者ハンス・ウイルスドルフがめざした高品質への、あくなきチャレンジ。そこから生まれた名品時計とそれを支える信頼性が、今もなおロレックスと私たちを固い絆でつないでいる。