光陰矢の如し。気がついたら、2025年のカレンダーが残りあと1枚しかなくて、目を疑った。街を歩いていると店内からクリスマスソングが流れてきて、今度は耳を疑った。今年もまた、おそるべきスピードで1年が終わろうとしている。働いても働いても仕事量は減らないのに、時は残酷なまでに正確に刻まれてゆく。この調子で5年、いや10年が、あっという間に過ぎてしまいそう。
先日、大きな案件が重なり、ケアレスミスが続いた。幸い深刻な問題にはならなかったが、この歳になってもまだまだかと思い知らされた。家に帰り、リビングのソファにうなだれたまま、「ああ、もうつかれた」と無意識に声を漏らしてしまった。「じゃあ、おしごとやめて、僕と一緒に遊ぼうよ」と5歳の息子に言われて、タガが外れたように泣き出した私は、いったい何のためにそこまでして働いているのかわからなくなった。そのときの鏡に映った自分の顔は、まるで自分じゃないみたいだった。
古くからジュエリーに用いられてきた矢のモチーフには、持ち主を「守る」力があると伝えられてきた。もしも本当にそんなパワーが宝石に秘められているとしたら、私は何から守られたいのだろうか。ふと考えてみたとき、真っ先に頭に浮かんだのは、失敗した自分を責める自分自身の姿だった。ひとりで抱え込んで、自分で自分を追い詰めて、結果押しつぶされるくらいなら、そうなる前に素直に限界だと伝えたい。誰かに「助けて」と上手に言える人間になれたら、どれほど生きやすくなるだろう。失敗を許せない自分。私の敵は、私なのだ。
連載「寝ても覚めてもきらめきたいの」:SPURエディターがパーソナルな感情とともに綴るジュエリーエッセイを堪能して。

