昆虫好きの息子のおかげで、家でカブトムシを飼うことになった。体長50ミリくらいの、立派なツノを持つオス。間近で見るとけっこうな迫力がある。日中は死んだように動かないが、夜になると「ここから出せ!」といわんばかりに羽をばたつかせ、虫かごの中を元気に暴れまわっている。なにしろ、母親の私にとっても初めての体験だ。エサは食べているか、保湿はちゃんとできているか、のぼり木はこの位置で大丈夫なのか。たかが虫一匹に気もそぞろである。同時に、三十代半ばにして夏の自由研究に取り組んでいるような興奮も密かに味わわせてもらっている。
何十年ぶりにカブトムシをじっくりと観察してみた。重量感のある体はうっすらと光沢があり、そのフォルムはスポーツカーのよう。ぐんと突き出たツノは二つに枝分かれし、そこからさらに二股に分かれ、先端は尖っている。こんな武器ですくい投げされれば、そりゃひとたまりもないだろう。細い六本の脚には小さなトゲと鋭いかぎ爪がある。改めて見ると、実に見事で危険なルックスだ。世の少年たちが夢中になる気持ちもよくわかる。
カブトムシを腕に這わせてみると、くすぐったい一方でトゲや爪が皮膚に刺さり、予想以上にチクリときた。その瞬間に脳裏をよぎったのが、タサキの「デインジャー」ブレスレット。しなやかな曲線を描くイエローゴールドに、トゲつきのパールが大胆にセットされている。「パール=クラシック」という既成のイメージに牙をむく、挑発的でシンプルなデザイン。Tシャツやデニムスタイルにもすんなりマッチし、自由なマインドで身につけられる。
刺々しくもなめらかな弧を描くブレスレットは、おどろおどろしい動植物のようにも見える。その魅力はなんといっても、危うさをはらむ妖艶さ。力強さと華やかさが共存し、装着すると心地いい緊張感が腕にはしる。自然の美にインスピレーションを得た、タクーン・パニクガルの斬新なクリエーション。シリーズ誕生から8年経った今も刺激的な存在であり続けている。人はいくつになっても、美しくて危険なものに心を奪われてしまうのだ。
TASAKI
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illustration:Uca text:Eimi Hayashi