#6 新しくて懐かしいカメオ【アリータ】

カメオといえば、グラニーなイメージ。祖母が生前に愛用していたネックレスの印象が強いからかもしれない。すみれ色の楕円型に浮かぶ白い女性の横顔を、今でもはっきりと覚えている。そういえば、あの祖母のネックレスはどこにいったのだろう。

ヴィクトリア時代にアクセサリーとして定着したというだけあって、カメオにはどこか重厚な雰囲気がある。そのたたずまいは、宝飾品というよりも芸術品と呼ぶにふさわしい。それゆえ一点もののアンティークで見かけることが多く、ほかのジュエリーに比べると親しみの薄い存在だ。そんな伝統的なカメオを、いともモダンに昇華させたデザイナーがいる。

ミラノ発のジュエリーブランド、アリータを手がける、シンシア・ヴィルチェス・カスティリオーニ。マルニの創設者、コンスエロ・カスティリオーニの義娘としても知られる彼女が生み出すジュエリーは、ミニマルでありながらも遊び心に満ちていて、世界中のファッショニスタを魅了している。

目を奪われたのは、パステルピンクが愛らしい四角いカメオのネックレス。フレームのないシンプルなデザインに、テニスプレーヤーの横顔があしらわれている。クラシックな重々しさはいっさいなく、むしろポップで軽快。こんなにチャーミングなカメオは初めて見た。

貝やメノウを用いて作られるのが一般的なカメオだが、アリータのそれにはセラミックが使われている。そういえば、祖母のネックレスはもっとツルンとしていた気がするが、なるほどこちらはマットな質感。その独特の風合いが絶妙なキッチュさを醸し出す。一方、浮彫り模様は実に繊細で、イタリアの職人によるハンドメイド。わずか小指の先ほどの大きさにひとつひとつ手彫りしていく作業を想像すると、いろんな意味で目頭を押さえたくなる。

このネックレスをどんな着こなしに合わせようかと、思いを巡らせてみる。ヴィンテージライクなボウリングシャツとも相性が良さそうだし、レトロガーリーな花柄ともマッチしそう。冬はノスタルジックなクロシェニットもいい。いずれにしても、グランマのようなスタイルばかりが頭に浮かんでくる。やはり、私の中ではいつまでも「カメオ=祖母」のイメージのままなのかもしれない。

ネックレス〈YG、ポーセリン〉¥75,000
ネックレス〈YG、ポーセリン〉¥75,000


パラグラフ(アリータ)

http://www.aliita.com/
03-5734-1247

illustration:Uca text:Eimi Hayashi

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