希望の道しるべ【LiniE】#94

小さな四角い窓の中に広がる、ブルーグリーンの世界。アマゾナイトがクォーツ(水晶)と混ざり合ったその石は、アマゾナイト イン クォーツという。透き通った部分と鮮やかな部分、ほんの少し褐色に濁った部分が混在し、まるで移りゆく心模様を映し出しているかのよう。この混沌とした、されど息をのむほど美しい景色が、18Kゴールドの窓の向こう側にどこまでも続いているんじゃないかと錯覚してしまう。

希望の道しるべ【LiniE】#94の画像_1

波打つようなアームを添えて、海に差し込む光をイメージしたLiniE(リニエ)の「DEEP SEA」リング。幼少期から父に連れられてよく海に行っていたというデザイナーの新美文栄さんが、自身の記憶のかけらにインスピレーションを得て作り出した一点ものだ。世界最大規模の鉱物の展示会開催地として知られるアリゾナ州を定期的に訪れ、自らの審美眼で天然石をセレクト。ひとつとして同じ表情のない石に、新たな命を吹き込んだ。

幼い頃、好きな絵本を開いて、その絵の中に入り込むという妄想遊びをよくやっていた。それは、本には描かれていない先の世界を覗きにいくための秘密の方法であり、母や父に叱られたときに逃げるための特別な抜け道でもあった。中でも海や川などの水中世界を描いた絵本は、妄想遊びにうってつけだった。宮沢賢治の『やまなし』、レオ=レオニの『スイミー』、マリア・テルリコフスカの『しずくのぼうけん』。それぞれのお気に入りのページの中に、自分だけの隠れ家をつくり出していた。いま思えば、子どもなりの方法で知らない世界と繋がろうとしていたのかもしれない。

希望の道しるべ【LiniE】#94の画像_2
DEEP SEA RING〈K18YG、アマゾナイト イン クォーツ〉¥231,000

大人になると、未知の世界と繋がる術は絵本だけではなくなった。例えば、とっておきの色石を身にまとうこともひとつ。内包物を含んだ石から感じ取る大地の不思議。ゴールドの繊細な意匠が伝える手仕事のぬくもり。じっくりと時間をかけて生み出されたリングが手もとを彩るとき、「目には見えなくても、確かな存在」に思いを馳せることができる。小さな窓のずっと向こうに、まだ見ぬ壮大な景色が広がっているように。ジュエリーという存在が、大自然と人、ひいては自分自身を繋ぐ「線」のようなものであってほしい。LiniEというブランド名には、そんな願いが込められている。

 

希望の道しるべ【LiniE】#94の画像_3

ところで、地中奥深くで長い年月をかけて形成されたアマゾナイト イン クォーツは、2019年にブラジルの小さな鉱床で発見された。つまり、つい最近までその存在を知られていなかった鉱物なのだ。そういえば去年の秋頃だろうか、日本でも新鉱物が発見されたという記事を読んだことがあった。地球が誕生してから約46億年を経てもなお、人類が目にしたことのない謎がたくさん残されているのだろう。すべてを破壊し、尊い命を奪い合う戦争を今すぐやめて、そこに使われている時間と技術と資金で、自然の神秘がひとつでも多く、平和的な方法で解き明かされることを切に願う。

ちなみに、アマゾナイト イン クォーツに含まれるアマゾナイトは「希望の石」と呼ばれている。海に差し込むひと筋の光のように、暗闇を照らす光明のように、希望の道しるべになってくれると信じたい。

LiniE
http://www.linie.jp/
03-6434-7700