先日、友人と食事に出かけたとき、通された席の近くに大人数のグループが座っていた。時節柄、会社か何かの忘年会なのだろう。みんないい具合にできあがり、大いに盛り上がっていた。
陽気な話し声をBGMに、飲み会の理想的な人数は何人かという話をした。6人以上になると話題がバラバラになりがち。かといって5人は中途半端だし、4人でも2:2に分かれてしまう可能性がある。ゆえに3人ぐらいがちょうどいいんじゃないか。カルパッチョをつまみながらそんなことを言い合っていたら、となりの宴は一本締めで締めくくられた。あっという間に年の暮れだ。
思えば、「3人」が好きなのは昔からだった。ふたり姉妹の私はずっと3人きょうだいに憧れていたし、実際にキャッツアイの3姉妹が大好きだったし、中高時代はスリーピースバンドのハイスタ(Hi-STANDARD)にどっぷりだった。もしかしたらTASAKIのこのペンダントが好きなのも、パールのトリオだからなのかもしれない。
イエローゴールドの地金に沿って、3粒のあこや真珠が整然と並ぶ「バランス プラス ネオ」。横並びじゃなくて、縦並びなのが新鮮だ。もしもこれが新幹線の座席だったら、この3人は仲が悪いのかしらと心配になるけれど、大丈夫、これはジュエリーだから。全長約45cmの華奢なチェーンを身につけると、胸もとでパールが浮遊しているかのように見えるプレイフルなデザイン。まさに、絶妙な「バランス」が成立している。
自分自身、年齢を重ねるごとにいろんなバランスを気にしなければならなくなったように思う。ホルモンのバランス、仕事と家庭のバランス、「母」と「女」のバランス。つねに何かと何かを天秤にかけ、釣り合いを取りながら生きている。だが、いつも水平でいようとするのはくたびれる。だったらいっそのこと、垂直にしてしまったらどうか。心のつまみをグイッとひねるように。
建前なんか気にせずに、自分の感情に正直になってもいい。好きなことや、好きな人の前では、「母」であることを忘れて夢中になってもいい。縦並びの真珠は、そんな思いを表象しているかのよう。
2024年の今年の漢字は「金」だった。パリ五輪・パラリンピックで日本の選手が数多くの金メダルを獲得し、佐渡島の金山が世界文化遺産に登録されるなど、輝かしい金(キン)がある一方で、政治の裏金事件や闇バイトの黒い金(カネ)が大きな問題になった。つまり「金」は、光の「金(キン)」と、影の「金(カネ)」をあらわしているという。
世界は「光」と「影」でできている。ある人はそう言った。だが、本当にそれだけだろうか。私たちが生きる世界は、二極で語られるべきなのだろうか。その先の三つめを見据える時がきているのではないか。
谷川俊太郎さんの大好きな詩のひとつに、『こころの色』がある。自分が何を思い、何を考えてきたかが今の自分をつくっているとし、「世界はみんなのこころで決まる/世界はみんなのこころで変わる」と谷川さんは訴える。考えを180度変えなくても、90度縦にひねるだけで、物事はずいぶん違って見えてくる。今を生きる私たちは、何を大切にして歩むべきか。一直線に縦に並んだ三つのパールを胸に置き、新しい年に「三つめ」の希望を託してみる。
TASAKI
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連載「寝ても覚めてもきらめきたいの」:SPURエディターがパーソナルな感情とともに綴るジュエリーエッセイを堪能して。