スクエア型のシルバーリングの台座にセットされたのは、雪山か、岩石か、はたまた懐かしのたんきり飴か。いや、ちがう。というか、ちがうに決まってる。天然石でもパールでもないそれは、真珠の母貝、マザーオブパール。
ブランド名は、KOHKOH(コウコウ)。金属部品の加工や真珠の養殖などを行う企業を母体とし、ジュエリー作家の小嶋崇嗣さんのディレクションのもと、2023年にスタートした。新しい技法に挑戦し、「煌々」と輝くジュエリーを作りたい。作品を通じて、社会を照らす「光」について「考」えていきたい。そんな思いが込められている。
真珠を主な題材としながら、母貝にも光を当てるのには理由がある。通常、真珠を取り出した後の母貝は、副産物としてジュエリーや装飾、彫刻などに利用されるが、大半は使われることなくそのまま廃棄されている。「母貝は、部位によって厚みや表情がまったく異なります。手に取ると、生命力が伝わってくるんです。命を無駄にしないためにも、できる限り余すところなく使って、母貝の魅力を表現したい」と小嶋さん。真珠養殖に携わったからこそ、クリエーションにおける視座が高まった。
連載「寝ても覚めてもきらめきたいの」:SPURエディターがパーソナルな感情とともに綴るジュエリーエッセイを堪能して。