心のボタンと【ポメラート】のリング #118

子どもの頃からずっと大切にしているものがある。木製のオルゴールの箱で、当時西ドイツに住んでいた親戚が帰省時にくれたものだ。蓋にはウメバチソウのような花の模様が象嵌され、底のネジを回すと、モーツァルトの『アイネ・クライネ・ナハトムジーク』の第1楽章を奏でる。「これね、私の宝物なんだけど、あげるわね」。ラッカー塗装されて、つやつやに輝くその箱を手渡されたときの胸の高鳴りは、昨日のことのように思い出せる。

宝箱を手に入れたはいいが、中に入れるべき宝物がなかった。ほんとうは母の宝石箱みたいにキラキラしたものを入れたかったのだが、ジュエリーなどひとつも持っていなかったその頃の私は、ボタンやビーズや川原で拾った石なんかを集めて、宝箱の中にしまっておくことにした。一つひとつは何でもないものだったが、たくさんあるとそれはそれできれいだった。淡い水色のベルベットで内張りされた箱の中では、とりわけ本物の宝石のように見えた。

ポメラートの「ポムポムドット」リングは、リバーシブル。深緑のマラカイトと純白のマザーオブパールの2種楽しめる。

かつて宝石のようなボタンを集めていた私は、うん十年の月日を経て、今度は“ボタンのような宝石”に出合った。ポメラートの「ポムポムドット」リングである。18Kローズゴールドの丸い地金の中におさまっているのは、二つ穴のボタンのような深緑のマラカイト。中央でやわらかなカーブを描くゴールドの“糸”には、10石のダイヤモンドがセットされている。

しかも、そのボタンはくるりと回転する仕掛け。裏返すと純白のマザーオブパールのボタンに切り替わる。ひとつでふたつの顔をもつリングなのだ。知的に引き締めたいときはマラカイトを、やさしい表情を添えたいならマザーオブパールを。その日の気分に合わせて、軽やかに印象を変えられる。肩肘張らないムードがじつにポメラートらしい。1967年の創業当初から、特別なオケージョンだけではなく日常のあらゆるシーンで身につけられるジュエリーを作り続けてきた、メゾンならではのエスプリが効いている。

「ポムポムドット」リバーシブルリング〈K18RG、ダイヤモンド、マラカイト、マザーオブパール〉¥627,000
「ポムポムドット」リバーシブルリング〈K18RG、ダイヤモンド、マラカイト、マザーオブパール〉¥627,000

ボタンは本来、衣服を留めるためのものだが、人の心にもボタンは存在するように思う。それは、誰かと誰かの心をつなぐもの。ひとりの人間の心の中に、色とりどりのボタンが留まっているところを想像する。ときにほつれたり、うっかりはずれたりすることもあるのだろう。あるいは、くるりと回転して色が変わるものもあるかもしれない。心に留まったさまざまなボタンは、きっとその人の人生を豊かに彩るにちがいない。そう、このポメラートのリングのように。

子どもの頃に集めたボタンはとっくの昔になくしてしまったけれど、それなりに生きてきた分だけ、いろんな色や形の心のボタンがついたようにも思う。色を変えてみたくなったら、「ポムポムドット」というおまじないをかけるのだ。ポメラートの陽気なリングが、そう教えてくれている。そして今この原稿を書きながら、小さなボタンのついたシャツがよく似合う、あの人の帰りを待っている。


ポメラート クライアントサービス
https://www.pomellato.com/ja_jp/
0120-926-035

連載「寝ても覚めてもきらめきたいの」:SPURエディターがパーソナルな感情とともに綴るジュエリーエッセイを堪能して。

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