ロンドンを拠点としながら世界中を飛び回り、30年以上にわたってジュエリーをつくり続けている、ピパ・スモール。色石を使った多彩なクリエーションもさることながら、ジュエリー制作を通じた社会貢献にも積極的で、エシカルジュエリーの先駆けとして広く知られている。
彼女が作品に用いるのは、環境に負荷を与えず、産地のコミュニティや鉱山労働者の権利に配慮し、倫理的に調達された素材のみ。先住民や紛争地域の女性たち、スラム街に暮らす人びとなど、取引相手は多岐にわたり、フェアトレードを貫いている。
ピパ・スモールのジュエリーを選んで身につけるということは、すなわち、クリーンで公正な採掘や、紛争地域における雇用の創出、伝統技術の継承を支援することを意味する。遠い国で起きていることに関心を持ち、そこで生きる人びとに、想いを馳せるきっかけにもなる。
「ジュエリーは、身につける人の価値観の延長線上にあるもの」。ピパ・スモールはそう言う。たったひとつのジュエリーに触れることで、国境や言語の壁を越え、遠く離れた作り手と繋がることができる。たったひとつのジュエリーを通じて、言葉にならない“ことば”を交わすことができる。そこには、外国の人に対する差別意識も排斥感情も、ありはしない。あるのは美しいものを讃える、純粋で温かい気持ちだ。
連載「寝ても覚めてもきらめきたいの」:SPURエディターがパーソナルな感情とともに綴るジュエリーエッセイを堪能して。