グッチのホースビットに、なぜこうも惹かれるのか。理由については自分でもよくわからなかったし、今さら深掘りするつもりもなかったのだけれど、つい最近になって、はたと気づいたことがある。
ふたつのリングと細いバーを組み合わせた歴史に名を刻む意匠が、馬具に着想を得たものだということは言うまでもない。だが、乗馬の背景をいったん脇に置いてまっさらな気持ちで見つめ直してみると、まるでふたりの人間がまっすぐに手を伸ばし、つながり合っているようなのである。
ある日、私はそのことに気がついて愕然とした。長年ホースビットの靴やバッグを愛用してきた自分としては、あまりにも今さらすぎる発見だったからだ。ホースビットが表現しているのは、じつは大切な人とのつながりなのかもしれない。真偽はさておき、なんて素敵なのだろう。というか、なんで今までこんな素敵なことに気づけなかったのだろう。
連載「寝ても覚めてもきらめきたいの」:SPURエディターがパーソナルな感情とともに綴るジュエリーエッセイを堪能して。