シェーヌ・ダンクル、人を幸せにする鎖。【エルメス】のリング #129

1938年、エルメスの4代目社長であるロベール・デュマは、停泊中の船の錨(いかり)につながれた鎖の美しさに魅了され、メゾン初のシルバージュエリーへと昇華させた。「シェーヌ・ダンクル(錨の鎖)」と名付けられたそのブレスレットは、誕生から90年近く経った今も、世界中の人びとを魅了し続けている。正真正銘、世代を超えて愛され続けている名品だ。

エルメス「シェーヌ・ダンクル・アンシェネ」リング¥432,300

ⓒHermès

1938年といえば、世界各地で侵略や戦争が起きていた。「シェーヌ・ダンクル」は、そんな不穏な時代に光明を投じるように発表された。暴力や差別が当たり前に行われていた社会に異を唱えるように、固く結ばれた絆をエレガントに表現した。力強さと気品を備えたシェーヌ・ダンクルを眺めていると、決して忘れてはならない歴史の事実を静かに物語っているようにも思える。

今手もとにほしいのは、シェーヌ・ダンクルのコマをリズミカルに繋ぎ合わせてリングにした、「シェーヌ・ダンクル・アンシェネ」のPM(プチモデル)。シルバーのクリーンな輝きに憧れつつ、人肌恋しい季節も相まって、ゴールドの温もりに無性に惹かれている。

ピンクゴールドのやわらかな艶めきと軽やかな意匠が、控えめながら視線を捉えて離さない。立体的なフォルムは指に心地よくフィットし、実用美を極めている。移りゆくトレンドとは一線を画した、普遍的な魅力を放っている。

エルメス「シェーヌ・ダンクル・アンシェネ」リング¥432,300   ピンクゴールド

リング〈PG〉¥432,300 ⓒHermès

小さなリングで飾ったその手はやさしく、自信に満ちている。それはきっと、何かを引き裂き、破壊する手ではなく、大切なものを生み出し、そして守る手だ。人を愛し、職人の手仕事を何よりも敬うメゾンの矜持が、リングを通じて自分の手にも受け継がれてゆく。身体の一部のように身につけたその手で、愛する人の手を繋ぎたい。何が起こるか想像もつかない人生の旅路を、共に歩んでゆくために。

エルメス|リング「シェーヌ・ダンクル・アンシェネ」


エルメスジャポン
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03-3569-3300

連載「寝ても覚めてもきらめきたいの」:SPURエディターがパーソナルな感情とともに綴るジュエリーエッセイを堪能して。

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