進化し続けるセルペンティ【ブルガリ】#109

2024年が終わろうとしているのに、ぜんぜん終われやしない。幻の13月よ、何処へ。まだまだ昇り竜でいたいのに、ガラガラヘビがやってくる。「締め切りだ、締め切りだ」とけたたましい音をたてながら、もうすぐそばまできている。

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子どもの頃、夜に笛を吹いて遊んでいたら「ヘビが出てくるよ。寝ている間に噛まれて毒がまわるんだよ」と母に言われた。それからは、布団の中に大きな蛇がニョロニョロと入り込んできて全身をぐるぐる巻きにされる夢を何度も見た。『星の王子さま』の冒頭に出てくる、象を丸呑みした大蛇ボアの絵も忘れられない。あの絵をはじめて見たときは、絵のタッチこそ可愛いけれど、ちょっとしたトラウマになった。

ヘビってこわい。長らくそう思っていたが(今も思っていないわけではない)、大人になってから、じつは神聖な生き物だと知った。仏教では七福神の一柱である弁財天の使いとされ、財をもたらすといわれている。西洋では、古代ギリシャ・ローマ時代から医療や生命のシンボルとして伝えられてきた。そういえばパンデミック期間中の報道でしょっちゅう目にしたWHOのロゴにも、杖に巻き付いたヘビが描かれている。また、脱皮を繰り返して成長することから「再生」を意味する吉兆であるともいわれる。とにかく、ヘビってすごいのだ。そうとわかれば深夜であろうが早朝であろうが、今すぐプーンギでも吹いて呼び寄せたいくらいである。

さて、ジュエリー界のヘビの話をしよう。もちろんそれはローマのヘビ、つまり「セルペンティ」のことだ。柔軟性に富んだブレスレットウォッチとして発表されたのが1948年。以来75年以上の時を経てもなお、褪せるどころか輝きを増し続けている、いわずと知れたブルガリのアイコンモチーフだ。

ローマの職人の手仕事により、セルペンティは時代とともに姿形を柔軟に変えてきた。それこそ、ヘビが脱皮するように。近年モダンに再解釈され、誕生したのが「セルペンティ ヴァイパー」。装飾を削ぎ落としたミニマルで抽象的な佇まいは、現代を生きる私たちに軽やかに寄り添う。

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セルペンティ ヴァイパー〈YG〉¥368,500

シンプルに見えて、作りは緻密だ。リングの中軸となるコイルに、18Kゴールドの艶めくうろこを手作業で一つひとつ固定していく。熟練のクラフツマンが丁寧に、そして着実に、リングの曲線に命を吹き込んでゆく。そしてそのグラフィカルなシェイプが、まるで第二の皮膚のように指に絡み付くとき、はっとするほど官能的な表情が生まれる。

しなやかな「セルペンティ ヴァイパー」リングは、スタイルを確立した人にこそふさわしい。毎日のラフな装いにも、うんとドレスアップする日にも、「私の身体の一部ですが何か?」といわんばかりに気負わずつけるのが格好よい。「この人、絶対センスある」と感じさせる何かが手もとに宿る。相手がおしゃれ玄人なら、きっと一目瞭然だろう。蛇の道は蛇なのだ。



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連載「寝ても覚めてもきらめきたいの」:SPURエディターがパーソナルな感情とともに綴るジュエリーエッセイを堪能して。

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