父の金貨と娘のコインネックレス【GIGI】 #126

父が還暦を迎えたとき、「見せたいものがある」と言って、押し入れの中の金庫からうやうやしく取り出してきたのが、数枚の金貨だった。ピカピカに輝くそれらは、圧着された透明のケースに丁寧に収められていた。たしか、何かのイベントの記念に作られたものだと言っていたような気がするが、それが何だったかは忘れてしまった。父いわく、たいへんレアなもので、売ればかなり高額になるという。

少々きな臭い話ではあるが、人生の節目のタイミングで娘に披露してくれたわけだ。もしかして譲ってくれようとしているのかと思いきや、決してそういうことではなかった。資産価値があるとはいえ、換金するつもりはさらさらないという。おもちゃのような金貨を目の前に、私はただ「へえ」と、言葉にもならない声を漏らすだけだった。

あれから20年近く経ったが、あのとき以来、父の金貨を見たことは一度もない。当時の私のリアクションが薄すぎて、もう二度と見せるのはやめようと思ったのかもしれない。はたして父の金メダルは、今もまだあの金庫の中に眠ったままになっているのだろうか。暗い押し入れの中には、父にしかわからないロマンが潜んでいるのかもしれない。

古代ローマ建国の物語を描いたコインモチーフ

父の金貨と娘のコインネックレス【GIGIの画像_1

父が宝物にしている金のメダルにはさして興味がないものの、娘の私が今憧れているのは、何を隠そう、金のコインネックレスである。やはり、血は争えないものなのか――。

無性に惹かれたのは、GIGIの「ローマン コイン ネックレス」。そのモチーフは、古代ローマ時代のものとされる実際の出土貨幣をかたどったものだ。表にはローマ神の肖像が、裏側にはローマの建国者と伝えられているロムルス・レムス兄弟と雌オオカミの姿が、それぞれ立体的に表現されている。当時の鋳造技術を再現し、あえていびつな形状に仕上げたリアリティあふれる意匠が、なんとも奥ゆかしい。

K18イエローゴールドが醸し出す上質感、直径約1.5cmの小ぶりで主張しすぎないシェイプ、留め具をずらせば好みの長さに調節できる柔軟でミニマルなチェーン、すべての要素が洗練されていて、今の気分にぴたりとフィットする。歴史の趣を感じさせながらも、不思議と重厚感はなく、どんな服装にもさりげなく寄り添う軽やかさが心地よい。

父の金貨と娘のコインネックレス【GIGIの画像_2

ネックレス〈K18YG〉¥305,800 

大切なものは、父のように押入れの中にずっとしまっておくよりも、肩肘張らず、毎日自然体で身につけていたい。母に言わせると、私は父に性格がよく似ているらしいのだが、昔はそう言われることがすごく嫌だった。じつのところ、いまだに父のことは苦手で、面と向かうと身構えてしまう。それは、そうなるにいたった歴史があるからで、その事実はどうしたって変えられない。けれども時が経つにつれて、苦い記憶は少しずつ過去のものになっていった。あんなにくっきりとしていた輪郭も、この数十年でいい具合にぼやけてきたように思う。

たとえ心を通わせるのが難しくても、生きていれば時間が癒してくれることもある。「ローマは一日にして成らず」なのだと、胸もとのコインネックレスが教えてくれる。


ネックレス|GIGI

ホワイトオフィス
http://store.gigi-jewelry.com/
03-5545-5164

連載「寝ても覚めてもきらめきたいの」:SPURエディターがパーソナルな感情とともに綴るジュエリーエッセイを堪能して。