1858年、パリで創業されたブシュロン。この由緒正しいこのメゾンの創作部門を統括するのが、美しきクリエイションディレクター、クレール・ショワンヌだ。
「自然光が差し込むスタジオが、パリで一番のお気に入りの場所」。クレールがそう語るのは、ヴァンドーム広場の26番地に構えるアトリエ。最新ハイジュエリーコレクション “Paris, Vu Du 26” の制作秘話、メゾンのヘリテージを紐解くべく、重厚な扉の向こう側を覗いてみよう。
text:Shunsuke Okabe

夢のアドレス、ヴァンドーム広場26番地
「子供の頃は、建築家、もしくはジュエリーデザイナーになるのが夢だった」というクレール。名門エコール・ドゥ・ラ・リュ・デュ・ルーブルを修了した後、1998年にパリのジュエラー、ロワゾー・ケバジャンでキャリアをスタートさせた彼女は、瞬く間にその才能を開花させ、1999年には自身のブランドをローンチ。2001年にはヴァンドーム広場にブティックを構えるロレンツ・バウマーのクリエイティブスタジオマネージャーに就任している。
同じくヴァンドーム広場の26番地の扉を開いたのが2011年9月のこと。ブシュロンからのオファーは、まさにドリームキャリアだったと言う。
「ジュエリーの世界に飛び込んだ瞬間から、ブシュロンは私にとって永遠の憧れ。クリエイションディレクターとして声がかかった時には、思わず夢じゃないかと耳を疑いました」。

ジュエリーはモードの一部
伝統と格式を重んじるジュエリーの世界において、常に革新的なクリエイションで驚きを与えてきたブシュロン。その創造性の源は、創業者フレデリック・ブシュロンのルーツにあるとクレールは語る。
「幼い頃からオートクチュールの世界を見てきた彼にとって、ジュエリーはモードの一部でした。“クエスチョンマークネックレス” をはじめ、数々のクリエイティブなジュエリーを生み出して来たブシュロンにとって、前衛的であることはメゾンコードのひとつ。偉大なヘリテージを大切にしながら、それをさらに発展させることが私の使命です」。

最新ハイジュエリーコレクション “Paris, Vu Du 26” 制作秘話
ブシュロンの最新ハイジュエリーコレクション “Paris, Vu Du 26” の着想源はヴァンドーム広場26番地のブティック、そしてパリの伝統的な建造物。幾何学的に並ぶパリの石畳や、ネオ・バロック様式を採用したオペラ・ガルニエの外観、そしてグラン・パレといった象徴的な建物をモチーフに、3つのチャプターを通して表現している。
「建築に着想を得た作品は、ブシュロンの歴史の中で数多く見られます。今回のコレクションで最も革新的な作品、“26V”ではオニキスとカショロン、ロッククリスタルをマルケトリー技法を用いて立体的に組み合わせた、全く新しいプレシャスストーンを取り入れました」。

ファッションから着想を得た制作プロセス
ハイジュエリーは身につけてこそ輝く、と断言するクレール。そのフィロソフィーは、ファッション性の高いビジュアルのみならず、独特の制作プロセスからも見て取れる。
「ハイジュエリー制作は通常、素材、特にプレシャスストーンの選定から始まります。私の場合、まず最初に思い描くのは実際に身につけたイメージ。雑誌の切り抜きをスクラップボードのように組み合わせながら、ファッションやヘアメイクを含む人物像を組み立てます」。


フランス出身。エコール・ドゥ・ラ・リュ・デュ・ルーブル卒。1998年にロワゾー・ケバジャンでキャリアをスタートさせ、1999年に自身のブランドをスタート。2001年にはロレンツ・バウマーのクリエイティブスタジオマネージャーに就任。2011年9月にブシュロンのクリエイションディレクターに就任。